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【運用部コメント】「風の時代」における世界に貢献する投資

これまでに積み重ねられた歴史のなかで、振り返って時代の節目といわれる時期があります。今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックも、後にそのような語られ方をされる日が来るかもしれません。ここでは現在が時代の節目にあることを仮定して、最近目にすることの多くなった「風の時代」をキーワードに、これからの時代における投資の在り方について考えていきます。

注:本レポートにおける時代に関連したキーワードは、あくまでも便宜上の時代の区分けを行うために使用しています。時代の区分けの根拠を必ずしも支持するものではない旨予めご留意ください。

1. 「風の時代」の到来

昨年(2020年)末から、「風の時代」という言葉を様々なメディアを通して見聞きする機会が増えました。この「風の時代」とは、実は西洋占星術から生まれた言葉です。占星術というとやや怪しく感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでは物事の傾向を捉えるための統計的な見方の一つ程度に考えていただければと思います。

約20年に一度起きる木星と土星の大接近をグレート・コンジャンクションといいます。この現象はこれまでの約200年間、土の星座である牡牛座や乙女座、山羊座で起きており、土の時代と呼ばれてきました。今般、2020年12月22日のグレート・コンジャンクションを経て、以後の約200年間はずっと風の星座である双子座や天秤座、水瓶座で続いて起こることから、2021年以降は「風の時代」の始まりといわれています。

では、これまでの土の時代はどのような時代だったのでしょうか。今から約200年前の18世紀半ばから19世紀にかけて起きた産業革命をきっかけに、私たち人類は大量にモノを生産し消費することが可能となりました。その結果として、お金、土地、不動産などの目に見えるモノを所有し、それらを獲得するためには欠かせない権力や組織、縦割り社会と強く紐づいていました。そういった資本主義は土の時代の象徴のひとつであり、その資本主義の発展は世界的な貧富の差を広げた一因であるともいえます。

一方で、これからの「風の時代」は、人類がそれらの目に見えるモノから解き放たれ、モノを所有することに固執しない傾向となります。たとえば、マイカーやマイホームを所有するのが人々のあこがれだった時代から、カーシェアやサブスクリプション、ミニマリスト、といった新しく生まれた言葉に聞きなじみがあるように、モノを所有しないという考えが広く定着しつつあります。また政府によるデジタル化に向けた取組みの一環である「脱ハンコ」の動きもまた、印鑑というモノからの解放への追い風となりそうです。

2. 「風の時代」と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

さらに追い打ちをかけるように、奇しくも「目に見えない」ウイルス、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、多くの方たちが外出自粛や在宅勤務を余儀なくされた結果、働く場所や住む場所、つまり土地に縛られずに日常生活を送れるようになりました。他人との物理的な距離が隔たれたことにより、オンライン会議やオンライン飲み会など、ネット上や精神的なつながりが重要視されるようになり、広い世界に目を向けた考え方や生き方を持つことが重要となりました。自分だけが裕福になるため、資本主義社会の荒波をくぐりぬけるような競争の時代から、モノだけでなく考えや気持ちを共有し、地球規模の広い視野を持つような協調の時代へと変遷を遂げているといえるでしょう。

そういったコロナ禍における地球規模での俯瞰的なマインドは、ここ数年で存在感を増してきた国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)との親和性も高いと考えられます。日本国内においても、電通の実施した「第3回 SDGsに関する生活者調査」によると、2019年に16%程しかなかったSDGsの認知度は、2020年には約30%にまで上昇し、とくに若者を中心に認知度が高まりつつあります。

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3. 「風の時代」が金融業界に与える影響

そんな「風の時代」と金融業界にはどのような関係性を見出せるでしょうか。2020年に経済産業省によって発表されたデータによると、日本国内におけるキャッシュレスによる支払い率は、2008年から2018年にかけて11.9%から24.1%と2倍ほど増加したものの、主要各国の40%~60%には及ばない状況にありました。これを受け同省は、2025年までに4割程度まで上昇させることを目指し、「キャッシュレス・ポイント還元事業」の施策を打ち出しました。

さらに、2010年代後半にかけて登場し決済業界に風穴をあけたQRコード決済の利用率は、(株)インフキュリオン「決済動向2020年12月調査」によると、2018年の12%から2020年12月には50%にまで上昇しました。コロナ禍において衛生面の観点からQRコード決済のような「非接触型決済」という言葉が広く使われるようになり、自粛生活における消費行動の変化によるオンラインショッピングの利用率の増加もまた、キャッシュレス決済の普及に拍車をかけました。私たちは土の時代の象徴のひとつであった現金から解放され、様々な決済手段を得ることができるようになったともいえるでしょう。

4. 「風の時代」における投資の在り方

では、投資についてはどのような変化が見られるでしょうか。SDGsへの注目が高まっているのはすでに前述のとおりですが、それと同じように注目の高まりを見せているのが、ESG投資です。このESG投資は、2006年に国連のアナン事務総長(当時)が機関投資家に対し、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI、Principles for Responsible Investment)を提唱したことが端緒とされています。

さらに2008年のリーマン・ショック後に資本市場で短期的な利益追求に対する批判が高まったことは見逃せません。これをきっかけとして、環境問題の悪化や企業統治の問題を解消し、短期利益ではなく持続可能な経済を実現させるためには、ESG(環境・社会・統治)を重視する必要があると世界的に認知されるようになりました。これにより、2019年3月末時点で2,400近い年金基金や運用会社などがPRIに署名しています。このうち年金基金などアセットオーナーの署名は432にのぼり、その運用資産残高の合計は20兆ドル以上(約2,200兆円)に達しました。

こうした動きは、機関投資家だけではなく、個人投資家の間でも顕著に見られます。日本経済新聞が2021年1月14日に報じた記事によると、国内公募の追加型株式投資信託(上場投資信託=ETF、ラップ・SMA専用を除く)を対象に2020年の資金流入額を同年12月25日時点でランキングしたところ、資金流入超過額(推計値)が最も大きかったのは、アセットマネジメントOneの「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)<愛称:未来の世界(ESG)>」で、その資金流入額は7,773億円に上りました。

また、バイデン政権下で気候変動対策の強化などが見込まれる米国内においても、ESGに照準を合わせた上場投資信託(ETF)に対する資金流入が急増しており、さらに米調査会社ファクトセット・リサーチ・システムズによると、米市場で取引されるESGのETFへの資金流入額は今年、2021年に入って、過去最高の274億ドルに達したとのことです。

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5. 結びとして

いま、私たちは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威にさらされ、不自由な生活を余儀なくされる一方で、「ニューノーマル」という言葉がそれを象徴するように、今までとは違った常識や生き方、そして考え方に気づき、取り入れ、まさに今この瞬間に時代の節目を迎えています。短期的、かつ自分だけの利益追求に奔走するのではなく、持続可能な経済、そして社会貢献も視野に入れた投資手法、つまり世界的なSDGs、ESG投資への関心の高まりはそうした既成概念を覆す動きにぴったりと調和し、大きな相乗効果をもたらすでしょう。こうした「風の時代」のなかで、当社としましては「世界に貢献する投資」をより一層推し進めてまいります。投資家の皆様におかれましては、引き続きご愛顧いただけますと幸いです。

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