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【運用部コメント】新興国通貨の状況につきまして

2020年、今年に入ってから新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に伴い、コロナショックとも呼ばれる急激な市場変動が起こっています。そこで今回は、当社ファンドでも取扱いのある新興国通貨に焦点を当てて、足元の状況と今後の展望を考察していきます。

足元の新興国市場は軟調さが目立つ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う世界景気の後退懸念や原油価格の急落などを背景にリスク回避姿勢を強めたことなどから、新興国の株価や通貨は軟調さが目立ちます(図1、図2)。

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世界経済の見通し:2021年はV字回復か、それとも・・・

2020年4月14日、国際通貨基金(IMF)は世界経済見通し(WEO)を新たに発表しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって、2020年の経済成長率が著しく減速、過去数十年で最も早いペースで各国の経済が縮小しており、1930年代の世界恐慌以来の景気後退に直面するとの内容でした。

IMFは今回の見通しのテーマを「The Great Lockdown」としており、パンデミックはすべての国の経済活動に影響を及ぼし、2020年1-3月期に大きな影響が生じた中国を除いて、2020年4-6月期に被害が集中すると想定しています。

また、IMFは、2020年の世界のGDP成長率を前年比3%減と予測。1月予想の3.3%増からの大幅な見直しとなりました。2009年リーマンショック時の0.1%減という僅かなマイナス成長と比較すると、今後の世界経済の成長率の落ち込みは、リーマンショックを遥かに上回ることが予想されます(図3)。上記ベースラインのシナリオでは、2020年後半に収束に向かったのち2021年にかけてV字回復という見方を示していますが、悲観的なシナリオでは

① パンデミックが長期化(基本シナリオ対比で約50%伸びる)
② 2021年にやや軽度な第二波の流行が起きる
③ 2020年の感染抑制策に時間がかかり、かつ2021年に感染拡大の第二波が来る

といった3つの代替シナリオも提示されています。

シナリオの方向性に応じて大きく異なる新興国経済の見通し

IMFによるこれらの悲観シナリオの試算結果についてはベースラインと比較した場合、

① 2020年-3%の下振れ
② 2021年-5%の下振れ
③ 2021年-8%の下振れ

といった試算が出ており、シナリオの方向性によっては感染拡大が長期化すれば新興国などの財政の乏しい国々は下支え策に限界が生じ、傷跡は相応に深くなるということが予想されます。

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また、国際金融協会(IIF)が発表する主要新興国・地域の週間証券投資の推移によると、2020年2月より、新興国から急激な資金流出が発生し、その規模は2009年のリーマンショック、2015年8月の人民元ショックを大きく上回るものとなっています。このような足元の資金流出の背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるリスクオフの拡がりで、一部新興国が高リスクだと見なされ海外への資金逃避に見舞われたと考えられます。

予断を許さないが、回復傾向に向かう可能性も

ここで、上記ベースラインのシナリオからアジア諸国、主にASEANに焦点を当てて見ていきましょう(図4)。ASEANでは2020年4月28日現在、すべての国で入国規制、国境封鎖や外出規制など移動の制限、首都のサービス業の規制などを実施しています。そのため、観光客の激減、中国とのサプライチェーンの分断、飲食小売りの急減などが起きています。緊急経済対策が実施されているものの、経済に与える影響は甚大であると考えられます。

ASEANの主要貿易相手国は、ASEAN域内(約23%)、中国(約14%)、EU(約11%)、米国(約11%)、日本(約8%)となっています。中国は感染拡大が終息しつつあり、経済活動が再開されつつあるものの、その他の国・地域では未だ見通しは立っていません。経済活動の停止により、輸出入は大幅な減少が続くことになると考えられます。足元1か月の合計で 2,000 万人を超える米国の新規失業保険申請件数など、現在の局面の経済悪化ペースは、市場予想を遥かに超えることが多く、同じことが新興国の貿易データにも反映されれば、新興国に対する市場の見方は再び厳しいものになることでしょう。

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2020年4月28日現在、感染者数の伸び率が若干の落ち着きを見せており、それに伴い新興国株式および通貨は足元回復傾向を見せています。経済活動が停止している現在の状況が長期化すれば観光やサービス、輸出依存度の高い新興国は苦しい状況が続くと見られ未だ予断を許さない状況とはいえます。しかし、感染拡大防止に向け各国が実施している外出禁止令などの強力な措置が功を奏し、今後感染の拡がりが収束する傾向が見られれば、世界経済は徐々に回復傾向に向かうのではないでしょうか。

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