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【特別鼎談】奪い合うのではなく「育つのを待つ」長期グローバル運用

2019年11月29日、当社は新たな資産運用の形を発信する「アクティブ投資ナイト(※1)」を開催します。本イベント当日は資産形成、資産運用および投資ブロガーやメディア関係者の方々のみにご参加いただく形式を採らせていただいておりますが、折角の機会ですので本イベントのご登壇者への事前インタビューをご紹介していきます。
※1 本イベントの詳細はこちら(https://crowdcredit.jp/info/detail/341)をご覧ください。

今回は本イベントの「第2部:グローバル運用と積立投資」にご登壇いただくセゾン投信株式会社(以下「セゾン投信」)代表取締役社長・中野晴啓氏(以下「中野氏」)へのインタビューの模様をご紹介します。

なお、このインタビューは本イベントでモデレーターを務めていただくロボット投信株式会社(以下「ロボット投信」)代表取締役社長・野口哲氏(以下「野口氏」)と当社代表取締役社長・杉山智行(以下「杉山」)がセゾン投信本社へお伺いし、鼎談の形で収録いたしました。

アクティブ運用は資産運用の王道であり原点

野口氏:アクティブ運用には企業との対話やシステマチックな手法など色々な手法がありますね。アクティブ運用の定義とは何でしょうか。

中野氏:アクティブ運用とは個性の競争、これが原理原則です。ステレオタイプの解はありません。各運用会社の各ファンドマネージャーが、その人その人で自信を持って、その人なりのバックグラウンド、知識や見識、経験に裏打ちされたやり方でプロ意識を持って運用しています。これは世界的にいえることです。

「アクティブ運用とは何か?」について、多くの人が勘違いされている面があります。インデックス運用とは、要は目安となる指数に連動させる手法です。これと同様にアクティブ運用も一つの確立されたデジタルな手法だという誤解です。その結果、「インデックス運用とアクティブ運用のどちらが良いのか?」という発想、質問に繋がっていきます。

しかし、話はそこまで単純ではありません。資産運用の手法には、インデックス運用という一つの手法の他に、いくつものアクティブ運用の手法が存在します。本来はそういう考え方をすべきです。

資産運用の王道、資産運用業を成立させる原点がアクティブ運用。実体経済の成長を導くために産業資本を供給するのが資産運用の役割であり、その手法において解は沢山あって当然です。

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セゾン投信代表取締役社長・中野氏

セゾン投信がグローバル運用を選択している理由

杉山:アクティブ運用には解が沢山あるという前提を踏まえた上で、セゾン投信さんがグローバル運用を行っている背景を教えていただけますでしょうか。

中野氏:僕らは投資家の皆さんが合理的にリターンを得られる資金の投資先を選定しています。長期的に新たなキャッシュフローを生み出す場所等、いわゆる成長を見出せるという仮説を合理的に立てられる所にお金を投じるということです。

その前提において、経済全体が成長を維持継続するという見立てであればインデックス運用という手法もありだと考えています。最終的に全体としてはリターンが返ってきて、皆でそれを分配するという手法も資産形成の一助になることでしょう。

さらに、そこからより成長できる先を厳選してピックアップするのがアクティブ運用です。長期的なリターンが導き出されるよう死力を尽くすという当たり前の考え方に基づいて運営するのが運用業者の仕事。したがって、セゾン投信のアクティブ運用は資産運用本来の王道だと自負しております。

「グローバル運用」という色付けをしていただいても構いませんが、あくまでも最も合理的な投資対象を選んだ結果です。「世界全体の中で成長軌道を描く場所が、投資家の皆さんにとっての投資対象として最も合理的!」と考えています。

もちろん、日本株の銘柄ピックアップを行うファンドであっても、それを実現できなくはないと思っています。その一方で、世界に分散すればもっと負けない確率を高くできるのではないかと考えてもいます。それがグローバルに分散投資を行う意味です。

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運用会社の思想が反映されたものはすべてアクティブ運用

杉山:アセットアロケーション(資産配分)はどのように決めているのでしょうか。各国、地域ごとに時価総額ベースで割合を決めているイメージ、または伸びが期待できる地域はウエイトを少し多めにするなど、いかがでしょう。

中野氏:僕らなりに世界経済全体を体現する為に、適切なアロケーション(配分)を設定しています。単純化して説明すると、一番のベースとなる基準は時価総額、マーケット規模で決めています。それに厳格に従って運用しているのがグローバルバランス(※2)です。
※2 「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」のことを指します。

どういう状況であっても最初に作った設計図通り株式と債券の割合は50:50を守っています。同時に地域配分については、マーケットキャップ(時価総額)を前提に常時それに合わせた資産管理を行っています。設計図ありきなので、ポートフォリオマネージャーは設計図通りになるよう調整しています。

これは純粋なインデックス運用とは異なります。なぜなら、特定のインデックスに全体のポートフォリオを連動させるわけではないからです。あくまでもアクティブ運用の手法として、インデックスファンドという部品をポートフォリオ構成のために使っている、そういう考え方ですね。

「グローバルバランスがなぜアクティブファンドに分類されているのですか?」と問い合わせをいただくこともございますが、ベンチマークがあるわけではないのでアクティブファンドに分類しています。ベンチマークに連動することを目的としていないものはインデックス運用ではありませんから。「パッシブ型アクティブ」とでも呼んだら良いのでしょうか。

杉山:私は実はあまりこの分野に詳しくないのですが、リスクパリティもまた違うものなのでしょうか。

中野氏:リスクパリティともまた違います。シンプルに言うと、リスクパリティは長期にわたるリスクとリターンのデータを前提にして常にポートフォリオに占める各資産のリスクの割合が均等になるように資産計算をするというリスク低減のための仕組みです。

杉山:なるほど。最近ですとまさにロボアドバイザーと呼ばれるサービスが行っている手法の一つですね。ロボアドバイザーの場合はインデックスとかアクティブとかいう軸だと、どう捉えると良いのでしょうか。

中野氏:おっしゃる通り、まさにロボアドバイザーです。アセットアロケーション(資産配分)型の運用ですね。その運用の根底には、有効フロンティア(※3)に沿った運用という考え方があります。これに対して僕たちはまず設計図を作って、それに基づいたアロケーション(配分)で長期的に世界経済の成長軌道を捉えている、という違いがあります。
※3 リスクリターンの組み合わせを考えるにあたって、投資家が選択可能な組み合わせの中で、最も有利な選択肢を繋ぎ合わせた境界線のことです。

運用会社の思想が反映されたものがアクティブ運用、一切の能動的な判断がなく、ただ市場平均といった特定の指数に沿って機械的に運用するのがインデックス運用です。ロボアドバイザーのリスクパリティだってアクティブ運用です。アクティブ運用というと銘柄選択をするイメージが固定化しており、たしかにそれは分かりやすいのですがそうではありません。実は厳格な分類はできていないのです。

将来予測は運用判断に反映させない

その点、達人ファンド(※4)は基本的に銘柄選択をするので分かりやすいアクティブ運用ですね。それがグローバルなだけで。
※4 「セゾン資産形成の達人ファンド」のことを指します。

このファンドはファンドオブファンズ(※5)形式で地域配分しています。この地域配分の考え方も基本的には時価総額です。
※5 複数の投資信託を投資対象とする投資信託のことです。

セゾン投信は、短期的な相場の値動きの予測、あるいはマーケット環境の影響というのは、当然予測するけれども、それを運用判断には反映させません。

野口氏:今おっしゃっていただいた将来予測はどのように行っていますか。教科書的には過去40年間程度を見て、今年分の期待リターンは予測だと思いますが。

中野氏:そういったマーケットのボラティリティに基づいた配分はしません。ただ、結果として生じている、どのマーケットが割安でどのマーケットが割高かという比較を行っています。そのうえで、最も割安なマーケットにオーバーウェイトで配分しています。

基本的な時間軸は5年程度です。これは珍しい考え方かもしれません。将来価値の算定には1~3年程度の時間軸を用いる運用業者が多いので。企業価値の算定に5年という物差しを使い、その5年という軸を運用の価値観として一緒に共有してくれる、そういう運用者とポートフォリオで繋がっています。

野口氏:設計図に対する変更はどういうタイミングで行うのでしょうか。

中野氏:設計図があるのはグローバルバランスですね。これは設計図を未来永劫守る、崩さないように運用しています。僕らの相場観や経済予測を一切排除してやってみよう、おそらく長期的な合理性があるから、長期でこれを続けると世界経済の成長に沿った期待リターンが出るという仮説への挑戦です。それなりに深く考えて作っています。

もう一つの達人ファンドは分かりやすいアクティブ運用なので、相場観は入れないけれども、現状目に見えているマーケット自体の割高割安は定量的に計算し、最も割安なところに重点的にオーバーウェイトしています。

ただし、そんなにオーバーウェイトの幅があるわけでもない。新興国が伸びているからといって資産配分を極端に傾けるわけではありません。例えばニュートラルが12%なら15%にする程度。その分割高なところを減らします。

マイルドな配分調整ですが、明らかに他所と比べて割安な状況はやがて平均回帰します。歴史はそれを繰り返してきました。地域は分散されていて、一定の場所が突然砂漠になるということはありませんから。誰かが生活している限り平均回帰の傾向は存在します。ただし、平均回帰にいたる時間軸は誰も分かりません。ですから長期保有に向いているのです。

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ロボット投信代表取締役社長・野口氏(写真左)

奪い合うのではなく、育つのを待つ!

野口氏:お孫さんに資産を引き継ぐ方法に興味があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。自分自身の老後はもちろんですが、引き継ぐための方法として投資信託は面白い選択肢ではないでしょうか。

歴史は繰り返すという話と関連しますが、世界が長期的に3%でも成長し続けていくのであれば、設計図の概念があってやめないことが一番大事だと思いました。やめないためには何が必要なのでしょうか。

中野氏:全くその通りです。ずっと続けている人が歴史上でも勝者になっています。これは実証されている事実です。なぜなら世界経済は今が一番大きいからです。直近でもNYダウ等は最高値を更新していますよね。結局持ち続けている人が勝ちます。世界経済が成長することを否定しない人にとっては売る合理的理由がありません。「買ったら持ち続ける」、これが重要です。

野口氏:日本国内で投資信託がさらに普及するためには何が必要なのでしょうか。

中野氏:世間では、投資と投機、この似て非なる行動への根本的な誤解があります。投資を始めたのに投機をしてしまう人がいかに多いか。ちょっと上がったら売るとその瞬間にマーケットで勝負していることになるので、投資が投機に変わってしまいます。投資でしか合理的な資産形成はできません。原理原則を守れる人があまりいないのは大きな課題だと思います。

野口氏:ずっと私も投資と投機の違いを考えていたのですが、ギャンブルとの対比が分かりやすいと感じています。投機の場合は皆、マイナスの期待リターンにベットしているのではないでしょうか。一方で、世界の経済成長は3%を見込まれており、期待リターンがプラスです。つまり、投機ではなく投資といえるのではないでしょうか。

中野氏:おっしゃる通りです。3%、4%と成長して増えた分を応分に分けあうのが投資、奪い合うのが投機です。「増えるものを分け合って、増やすためにみんなで同じ行動を取って育つのを待ちましょう」とお伝えしたいです。

杉山:中野社長、本日はありがとうございました!

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