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エッセイ

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#毎日note

「今ここスイッチ」を押してみる

2021年を振り返ると、改めて楽しかったなあと思う。 海外で働いている友人を交え、オンラインで数年振りに会話ができたこと。実家に顔を出して、家族と食卓を囲んだこと。おばあちゃんの家に行けたこと。イベント仲間や、大学の友人と対面で会えたことなど。 自分の大切な人たちと同じ時間を過ごせたことで、だいぶリラックスができた。でも不思議なことに、彼らと同じ時間を過ごしている最中は、どこかソワソワして、その瞬間を楽しめてなかったことに気づく。 例えば、「明日はこの予定があるのか」、

「怖い」という感情に対する処方箋

怖い。 と漠然に感じる時がある。水槽の中で快適に泳いでいたのに、いきなり砂の上に打ち上げられるような。じわじわとゆっくり水分が減りながら露頭に迷うような感覚。 最近だと、4月に入ってきた新卒の自己紹介を聞いた時に感じた。 学生時代のきらきらした経験を自信満々に語りつつ、初々しく緊張しながら話す姿が、とても儚くきれいに見えた。 周りの社員は、自分の昔の姿を重ねながら、これから増える仲間への期待を胸に、熱心に一人ひとりの自己紹介を聞いていた。 その脇で私は、怖いという気

立ち止まり、振り返ること-瞬間の価値観たちと向き合う- #自分にとって大切なこと

 昔から気が向いた時に日記を書いている。正直にいうと毎日ではないので「日記」という言葉が正しいか自信はないが、もう10年くらい日記を書き溜めている。 うちに秘めた、内面の事情をたくさん書いているので、本音を言うと人に見られたくない。けれど、さらに本音を言うと「そんな自分を知ってほしい」という気持ちもある。この気持ち同士が対立し、どうやって日記を書こうか葛藤したのを今でも覚えている。 最終的にブログに書くのは気が引けると思い、悩んだ末の妥協点としてmixiに今でも日記を書い

シチューを作ると「ガラスの天井」が崩れる音が聞こえた

「これは食べ物じゃないから捨てるね」 大学2年生の秋。この言葉を聞いて以来、私は料理を辞めた。当時付き合っていた彼女に言われた言葉だ。 大学の近くに一人暮らしをしていた私には、半同棲をしていた彼女がいた。正確にいうと、門限が厳しく、夕方になると実家に帰るような人であった。 そんな人が、今日は両親が旅行で出かけているから...という漫画でしか聞いたことがないセリフを言って泊まりに来た。 普段なら絶対起きていない時間帯まで、映画を観たり、夜通し話をした。電気を消して天井を