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エッセイ

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2020年9月の記事一覧

「壁際」から向き合う世界

壁際が好きな人は世界中にいる。それが、国際交流の経験から得た学びの一つだ。   大学生の時にフィリピン人の女性と付き合っていたことがある。国際交流プログラムで知り合い、意気投合。総勢で300人近い青年たちが集まる企画であったが、立食パーティや文化交流のタイミングで輪の中心にいることが苦手だった私は、常に人の輪から離れ、壁際にいた。隣を向けば、毎回同じメンツが揃っていた。言語や文化が異なるにも関わらず、集団が苦手な人は苦手なのだと、かなり感動した。その中の一人に彼女がいた。一目

堕ちて出逢えた「無色」の自分

中学校の終わりくらいの歳になってからだっただろうか。誰かの目に映ることを極端に恐れるようになった。一方で、「何者か」にはなりたかった。自己表現したいけれどうまくできない、そんな曖昧な思春期を送っていた。 そんな中、自分を表現する唯一の手段があった。それはバドミントンだった。 暑さ40度を超える体育館の中、乾いた床にシューズが甲高く擦れる音。わずか8センチにも満たないシャトルを打つ音。ぶっ倒れる寸前まで走り込み、コートの傍で汗を拭いながらキンキンに冷やしたポカリスエットを飲

ダニに教わった、熱中する趣味の見つけ方

「ちょっと布団で寝られそうにないから、部屋がきれいになったらまたくるね」 彼女と半同棲生活をはじめて8ヶ月、今まで何不自由なく過ごしてきた。このままなんとなく過ごしていれば、ずっと一緒に過ごすことになるのだろうと思っていた。その矢先、事件が起きた。この話は、目に見えない不安との戦いを通して得た「熱中」に関する人生訓である。 きっかけは、彼女が家に泊まった時、足が痒くて寝られないと言われた時である。 とても嫌な予感がした。家の掃除は割と丁寧にしている。6畳一間の部屋には、

ボディソープの切れ端を捨てたとき -日々の積み重ねと向き合う-

毎朝、シャワーを浴びてから仕事に行く支度を始める。その日、ボディソープに手を伸ばすと、ちょうどあと2〜3回使うと無くなってしまう程度の量しかないことに気づいた。詰め替え用パックを買っていたので、お風呂場で先端を切って開ける。切った先端のゴミを洗面台に置き、ボトルに詰め替えて一安心をする。さあ、仕事に行こう。 仕事から帰ってくる。夕飯を作らなきゃと思いつつ、結構疲れたのでまずはお風呂に入ることにする。シャワーをひねると、朝に詰め替えたパックの先端の切れ端が洗面台に置きっぱなし