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ポケットに6100万画素。SIGMA fp L レビュー|最高に癖のあるカメラだが、確実にこれを求めていた。

本記事は、以下の記事をnoteにて公開したものです。
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SIGMAと聞いて、レンズを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
SonyやNikonなどのサードパーティー(他社)レンズメーカーというイメージが強いかもしれません。
ですがSIGMAはとてもユニークなカメラを今までに多く発売しています。

今回はそんなSIGMAのカメラ、SIGMA fp Lについて紹介・レビューしていきます。
※この記事では、SIGMA fp Lの購入経緯や使用感レビューなどをまとめています。細かな仕様や性能は、他の方のレビューや公式HPなどをご覧ください。



レビューの前に

購入に至るまで

SIGMA fp Lの購入に至るまでは、相当様々な経緯を経てきました。
ということで、レビューだけを見たい方はこの章を飛ばしてご覧ください。

SIGMA fpシリーズとの出会い
1年以上前、筆者は写真を長くやってきましたが、映像を本格的にやっていきたいと思い、映像に強いカメラの購入を検討していました。
そこで、Sony α7III・SIGMA fpシリーズ・BMPCC4Kが候補にあがり、最終的にSony α7IIIを購入しました。
その後、NikonからSonyへ完全にマウント替えをし、Sony FX30を導入したのちに、今に至ります。
その際、SIGMA fpシリーズをパスした理由として、動画機としての汎用性・性能に欠けるように思ったためです。
そして筆者はこの頃から、映像は本格的に・写真は趣味として考え生活していきます。

日常に生まれた課題
筆者は日々カメラを持ち歩く生活をしています。
ほぼ毎日カメラを持っていると言っても過言ではないほどです。
そんな中、Sony α7III+Sony FE 24-70mm F2.8 GM IIを日々持ち歩くことに相当な課題を抱えていました。
それは重量とサイズです。
日々持ち歩く機材にしては、大きすぎる上に、重すぎるのです。
依頼された撮影や、作品撮りの際には、何も思わず持っていくセットですが、日常となると苦しいものです。
そして、環境も多少影響していると考えられます。
京都に住んでいる筆者は毎日のようにバスに乗りますが、京都のバスは混んでいることが多いです。
何よりそもそもバスは狭く、大きな荷物を持っていると、迷惑かつ億劫になります。
日常の荷物は小さく軽いことに越したことはないです。
(もちろん持ち物はカメラだけではないですし。)

写真へのモチベーションが機材によって減った
ということで、機材から来る課題によって、モチベーションが減り、写真を撮らなくなるという負のループに陥ってしまいました。
本末転倒です。
ここで以下のようなことを考え始めました。

・軽いレンズを購入する。
→Sony α7IIIを中心に考えるとこの時点で目標を達成できないと判断

・コンデジを購入する。
→コンデジで満足できるのか?という疑問が生まれる

・写真はスマホでいいと割り切る。
→それだけはない

・軽いカメラ、レンズを購入する。
→費用は相当かかるが、課題解決には的確と判断→どのセットが良い?

最終的にSIGMA fp Lに
最終的には、SIGMA fpシリーズのカメラを導入することに方向性を定めました。
ポケッタブルフルフレームなどのコンセプトが求めていることにピッタリだったからです。
実は、Sony FX30を用いて簡易的に実験をしていました笑(詳しくは以下の記事へ)

ということで、SIGMA fpを購入しようと考えていましたが、購入に踏み出す寸前にあるモノが過ります。
SIGMA fp Lの存在です。
SIGMA fp Lは、SIGMA fpの高画素版ですが、それ以外にも様々な点でブラッシュアップされた機種です。
そうか…SIGMA fp Lか…、SIGMA fp Lにしておくか…。
ということで長くなりましたが、レビューに行きましょう!!


レビュー|メリット

軽量・コンパクト

まずはここから行きましょう。
軽量コンパクト、そしてフルサイズセンサー搭載のSIGMA fp Lは唯一無二です。

重さがボディー単体で375gと、缶ジュース1本分くらいの重さとなっています。
そこに小さなレンズであれば、約700gほどに収まります。
最近だとSonyがVLOGCAMとして、コンパクトなフルサイズ機が登場しましたが、あくまで動画機です。
考えられる中では、Leica(ライカ)のQシリーズ[レンズ一体型フルサイズ機]や、SonyのRX1シリーズ[レンズ一体型フルサイズ機]が考えられますが、いずれもレンズ一体型です。
コンパクトカメラとまでは言わなくとも、レンズは交換できません。
それに比べてSIGMA fp Lは、レンズ交換式のフルサイズ機であり、Lマウントレンズが使えるカメラです。

SIGMAがfpシリーズに掲げている「ポケッタブルフルフレーム」がここまでコンセプト通りに仕上がっているのかと、正直驚きです。
そして必要なカメラとは何なのかを追求した結果完成したSIGMA fp Lは、今までのカメラの固定概念を打ち破るような性能やデザインをしています。

性能(フルサイズ・高画素)

このカメラはとにかく異常だと思います。(褒め)
このコンパクトなボディーにフルサイズ・6100万画素の高画素センサーを搭載し、電子シャッターのみという割り切り方をしているためです。

シャッター幕がないということはローリングシャッター歪みを起こしやすくなるということです。
そうです、想像以上に歪みます。
それでもこのコンパクトなボディーを追求するためには、シャッター幕を無くすという決断を下したのでしょう。

それでもフルサイズセンサーから生み出させる画は、本当に美しく、空気感まで伝わってきます。
また6100万画素という高画素にも関わらず、ノイズ耐性は高く、個人的にはノイズが気になるということはありません。
そして6100万画素による繊細な描写によって、立体感がより際立つように感じます。
本当に驚き以外の何者でもないです。
コンパクトなボディーから、カメラを持っているというより「え、高画素フルサイズセンサーを手で握ってるのか??」というレベルに感じます笑

そして、SIGMA fp LはRaw現像しているとあることに気づきます。
驚くほど暗部に強く、少し暗部を持ち上げても(明るくしても)全く問題ないように感じるということです。
今までの使用してきたカメラでは感じたことのない感覚です。
逆に、ハイライトはそこまで強くないように感じるため、アンダー(暗め)に撮影することをオススメします。

デザイン性

デザインは、この上なく最高です。
完全に四角のボディーに、ボタン・モニターなどが取り付けられたデザインは唯一無二です。

少なくともこのデザインは、こだわりを持って設計しないと生まれないモノだということが伝わってきます。
とはいえ、デザインとコンセプトによって失ったモノも大きいようです。(続きはデメリットで)

一体感を感じる

SIGMA fp Lには何か不思議な一体感を感じます。
これはデザインと性能のバランスから生まれるものだと思います。

例えば、完全に固定されたモニターや、ホットシューがないなど、あらゆる要素がSIGMA fp Lに纏わりついて、そこに一体感を感じます。
この感覚は本当に不思議なものです。
ボディーの素材が良いのも一体感に繋がっているのかもしれません。


レビュー|デメリット

正直、このSIGMA fp Lにはデメリットが多いです。
ですが、そのデメリットでさえも許容して使いたいという良さがあることは確かです。
以下のデメリットがどうしても許容できない方は購入を控えた方が良いと思います。

動作が遅い

高画素機ということもあり、動作がワンテンポ遅いです。
写真を確認するためにプレビューを押しても、撮影後すぐであれば、しばらくプレビューに切り替わりません。
また、プレビューが表示されてもまだ画像は粗く、読み込んでいない状態が1秒程度あります。
そこから拡大をするにもまた数秒かかり、全体的に動作が遅いなぁと感じます。

起動時にもこの遅さは感じられ、起動して「fp L」のロゴが表示されるまでに多少の時間がかかることも多いです。
起動時間を紛らわすためのロゴの表示か?と思ってしまうほどです笑(ロゴの表示はとてもカッコいいです)
これが、高画素機だからなのか、SIGMA fp(2400万画素)でも遅いのかは不明です。

ローリングシャッター歪み

小型で強固なボディーにするため、シャッター幕が搭載されていないことに関しては、この上なく賛成です。
ですが、6100万画素ということもあり、センサーの読み出し速度(光をセンサーが読み込む時間)が遅く、その間にカメラを横に動かす、または被写体が移動すると盛大にローリングシャッター歪みが発生します。
SIGMA fp Lで発生した歪みは、大半が使い物にならないレベル歪みとなっているので、流し撮り等は確実に不可能です。
流し撮りどころか、電車や車の車内から風景を撮影しようとすると、世界が45度くらい斜めに歪みます笑
Sony FX30やSony α7IIIの電子シャッター(サイレントシャッター)で撮影することもありますが、ここまで顕著なローリングシャッター歪みは個人的に初めてのことで、びっくりしました。
そして、このローリングシャッター歪みと共に、電子シャッターのみによる弊害がもう一つあります。

フリッカー

電気は、一秒間に人間に見えない速さで点滅しています。
日本の場合、東日本で50Hz・西日本で60Hzということは有名な話だと思います。
このHz数と同じ数だけ、一秒間に電気は点滅しています。
ということは筆者の住んでいる西日本では一秒間に60回点滅していることになります。
電子シャッターではこのHzから生まれる点滅=フリッカーを感じ取ってしまうのです。
そのため、以下のような縞々の写真が生成されます。

もちろん解決方法もあります。
60Hzなら1/60のシャッタースピードで撮影することで、フリッカーは写真に影響しません。
ということは、シャッタースピード1/60で撮影すれば全ては解決…のように思えますが、実際には簡単な話ではありません。
写真には手ブレというものがあります。
写真をやっている方ならご存知かもしれませんが、レンズの焦点距離によって手ブレする最低シャッタースピード(以下 SS)がある程度あります。
50mmならSS 1/50、600mmであればSS 1/600と言われています。(焦点距離の数値分の1のSSで撮影すると手ブレの発生を防ぎやすい)
ということで、フリッカーを抑えるためのSS 1/60で撮影する場合は、60mm以下の焦点距離のレンズを使うことが、オススメといえます。
とはいえ筆者は中望遠のレンズが好きということで、SIGMA fp LにはSIGMA 90mm F2.8 DG DN|Contemporaryを組み合わせて使用しています。

90mmなので、SS 1/60では手ブレしてしまう可能性が高いということです。
まあ手ぶれ補正を適用して、SS 1/60で頑張ることで対応できます……と言いたいところですが、このカメラには手ぶれ補正がありません。

手ぶれ補正がない

ということで、最後の落とし所は、「ローリングシャッター歪み」からの「フリッカー」からの「手ぶれ補正がない」です。
このカメラ、手ぶれ補正が搭載せれていないため(電子補正はある)、少しでも揺れると即手ブレします。
そして6100万画素ともなると、手ブレがとても目立ちやすくなります。
「SIGMA fp Lを使用する=手ブレとの戦い」となるわけです笑
結果、このカメラには比較的広角のレンズがオススメということです。
6100万画素の画素数を使ったクロップ機能もあるため、広角単焦点レンズ1本という選択肢もアリかもしれません。

バッテリー持ちが悪い

バッテリー持ちに関しては、これもボディーサイズが小さい=バッテリーサイズが小さくなってしまうため、このカメラでは解決できない問題のように思います。
どれくらいバッテリー持ちが悪いかというと、バッテリー1つで写真150枚程度撮影できるといった程度でしょうか。
とにかく「あれ、もう半分?」と感じるほどです。

半日スナップ撮影でも、バッテリー1つは心許ない気がします。
モバイルバッテリーでの給電には対応しているため、モバイルバッテリーは必須だと思います。
もしくは、単純に予備バッテリーを必要数購入することをオススメします。
筆者はとりあえず予備バッテリーを1つ追加で購入しました。

その他のデメリット

端子カバーの耐久性
端子カバー(蓋)の耐久性は正直あまり強くはないと思います。
というのも、しっかりとしたカバーではなく、ゴム素材のカバーが付いているだけのように感じるためです。
特にUSB-C端子のカバーとマイク端子のカバーに関しては、開くときにゴム素材を少し力を入れて、曲げるようにして開くことになります。
そしてケーブルを刺すと、ずっと無理やり開いたような状態で固定することになってしまいます。
この状態で毎日のように充電していると、ゴム素材のカバーが切れてしまいそうでとても怖いです。

耐久性の面はまだわかりませんが、少なくとも嫌な予感はするので、あまり使いたくはないです笑
ということで、バッテリーはバッテリーチャージャーで別に充電した方が良さそうです。
(ちなみにバッテリーチャージャーは付属していない)

シングルカードスロット
シングルカードスロット(SD)に関しては、そこまで気にする必要はないように思いますが、個人的にシングルカードスロットのカメラは、しっかりとした撮影というのは心許ないので使いたくない機材と言えます…
筆者はSIGMA fp Lを趣味用のカメラとして購入しているため特に問題はありませんが、少なくともしっかりとした撮影の際は、Sony α7IIIやSony FX30などのダブルカードスロットでバックアップが取れる機材を持っていくことになりそうです。

三脚プレートがバッテリー蓋と干渉
小型のカメラということでこれに関しても仕方がないように思いますが、一応デメリットとして挙げておきます。
三脚プレートが比較的大きいプレートのものであれば、バッテリーの蓋と干渉してしまい、バッテリーが交換できません。

アルカスイスのような小さなプレートであれば、問題ないと思います。(相性問題は確実にあると思います)
三脚などをよく使う人にとっては煩わしい点だと思うので、ご注意ください。

いつの間にかカバーが開いている
SIGMA fp Lはデザインは良いですが、ユーザーインターフェースはまだまだだと感じます。
もちろんここまでのコンパクトさの中にどこまで求めるかという点については難しいものがあると思います。
その中でもSIGMA fpから改善された点も多く、SIGMA fp Lはブラッシュアップされたカメラであることは確かです。
ですが、それでもやはり問題点が…
マイク端子のカバーがいつの間にか開いてしまうことがあります。

マイク端子のカバーは角にあり、服や手に当たりやすい位置にあります。
ストラップが当たっているのかもしれません。
何かがカバーに当たり、いつの間にか開いてしまっているということが何度かありました。

設定が変わってしまう
そしてもう1つ、ユーザーインターフェースで問題点として挙げられるのが、ボタンがすぐに押されてしまい、いつの間にか設定が変わってしまうという点です。
コンパクトなボディーかつ、画面の下にボタン類を配置するというユニークなデザインですが、ボタンが下にあるため服などに当たってしまい、いつの間にか設定が変わってたり、設定画面が開いていたりします。

正直撮影中にこのようなことがあると、何かが変わってしまったのではないかと確認する必要があるという手間が発生してしまい、使いやすいとは言えません。
(とはいえ、SIGMA fpより改善されています)

アンカーリンクスとの相性が悪い
最後に、アンカーリンクスとの相性が悪いという点についてですが、これに関しては他社製品との相性問題なので、詳しくは触れません。
ですが、この相性問題はSIGMA fp Lのストラップホール側に問題があるため発生するものです。

それは、ストラップホールを後付けで装着するため、装着部分が無限回転するという特殊な形状によるものです。
装着部分が回転するため、ストラップがいつの間にかねじれてしまい、とても使い勝手が悪いと感じます。
この問題が顕著に現れるのが、アンカーリンクスを使用したときで、アンカーリンクスの紐の部分がすぐにねじれてしまいます。
どうすれば少しでも解決できるのでしょうか…


まとめ

SIGMA fpシリーズは、SIGMA fpシリーズにしかない とてもメリットな特徴 が多いからこそ、その分のデメリットも出てくるというとても面白いカメラです。

この記事としては、デメリットが占める内容がとても多くなってしまいましたが、筆者はSIGMA fp Lから感じる不思議な魅力に取り憑かれてしまったので、SIGMA fp Lは本当に愛用していきたいと思います。
この感覚は、SIGMA fp Lでしか味わうことのできないものだと思います。
筆者自身、カメラを10年ほど使ってきて初めて感じる感覚だからです。

軽量・コンパクト、ポケッタブルフルフレーム(フルサイズセンサー)、6100万画素…
普通に考えてどこまでも異常なカメラ(褒め)ですが、不思議な感覚を得られることは保証します笑

最後に一言。
少なくとも個人的には初めてのカメラにはオススメしませんが、カメラに慣れている皆さんには最高にオススメできるカメラです。
すでにメイン機をお持ちの方なら尚更オススメです笑
ということでSIGMA fp L、是非。


使用機材

カメラ|SIGMA fp L

レンズ|SIGMA 90mm F2.8 DG DN|Contemporary


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