新麻聡「オトシモノ ~地図と手袋~」
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改札を抜けると、あたりの様子が一変していた。
目を疑った。記憶にある風景と、まるで違う。
わたしの前には、頭上の高架線とクロスするように、一本の広い道路が走っていた。片側二車線の双方向道路で、中央には芝を敷いた分離帯がある。そういう時間帯なのか、多くの車が左右に疾駆している。道路沿いにあるのは、マンションやオフィスビル風の建物ばかりで、あの駅前の賑やかな商店街など影もない。
そもそも、プラットホームの端寄りにある階段を下りて、自動改札口を出たところは、まだ駅の構