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ブタとの音楽 for accordion solo より (2007) 野村誠

コンサートシリーズCROSSAir 2024 にて演奏される楽曲のプログラムノートを、順にご紹介してまいります。

ブタとの音楽 (2007)

この作品は、ドキュメンタリーである。経緯を知らなくても音楽を楽しむことはできるが、経緯は以下の通り。

2004年にイギリスBirminghamのIkon Galleryで、ぼくはペットを連れて来て良い音楽会を実施した。観客は犬、亀、鳥などを連れて現れ、野村の音楽に合わせて動物たちが反応し、それにぼくも即興で反応した。その企画趣旨を観客に伝えるための準備として、岐阜で映像作家の野村幸弘による撮影で、《ブタとの音楽》を撮影した。ぼくの鍵盤ハーモニカの即興演奏に応じ、養豚場のブタが様々な反応を見せた。その映像は、Ikon Galleryで何度も上映し、イギリスの観客たちの笑いを誘ったのだった。

その数ヶ月後、タイのマヒドン大学大学院でレクチャーをした時、この映像を見せた。すると大学院生から面白い指摘があった。動物との交流を撮影した映像は、映像作家の野村幸弘さんにより名場面を編集して構成されていた。作曲とは英語でcomposition(=構成)と言うが、この映像は映像の論理で構成されていて、音楽家の論理でcomposeされていない、との指摘だった。それ以降、ぼくは、編集された映像作品は、時系列だがダイジェストで間をカットしながら構成する。ぼくは、ドキュメンタリー映像の構成をそのまま生かしたコンサートピースを作曲するシリーズを開始し、大田智美委嘱の《ウマとの音楽》(2005)、山下残演出のダンス作品《動物の演劇》(2006)などを作曲し、新境地を切り開いた。

《ブタとの音楽》は、その第3弾。2007年、当時、ウイーン私立音楽大学のアコーディオン科教授だったGrzegorz Stopaの委嘱で作曲。5つのシーンから成る映像に基づくので、5つの小品(①ブタの集会, ②ブタのラブソング, ③ブタの間奏曲, ④ブタのダンス, ⑤ブタの秘密の言葉)から構成される。本日は、その中の②~④の3曲が演奏される。

野村誠

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