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迷惑な反復コーキョー曲「ベートーヴェン250」(2020) 野村誠

断っておくが、ぼくはベートーヴェンのファンではない。
交響曲第7番のファンでもない。運命の巡り合わせで、ベートーヴェンの交響曲第7番のレクチャーをすることになり、レクチャーに加えて、ベートーヴェンに関連する新曲の委嘱がついてきたから作曲したのだった。

日本センチュリー交響楽団の豊中名曲シリーズで恒例のプレパフォーマンス&トークの第8回のこと。ちょうど、ベートーヴェンの生誕250年に当たる2020年だったので、Beethoven 250と名づけた。

作曲+解説するために、自分なりにベートーヴェンを分析する。どうしてベートーヴェンは、こんなに執拗に繰り返すのだろう?そう考えている頃に、たまたま宮崎県都城市の福祉施設でワークショップをすることになった。自閉症の方が、執拗に同じリズムを繰り返す。木琴の鍵盤を左から右に順番に鳴らし続ける。ベートーヴェンとそっくりだと思い、ベートーヴェンを引用しながら、即興セッションをしてみると、ベートーヴェンの単純さは、連帯を呼びかける声と感じた。「友よ!市民が参加して世界を変えていくのだ!」と。

作曲していると、新型コロナウイルスの影響で次々に催し物が中止になり、外出が困難になり、初演は無観客コンサートでだった。単純なフレーズを執拗に反復するベートーヴェンの音楽に、民衆との連帯を呼びかける精神を感じる中、人々と触れ合うことが迷惑となり、各自の世界に隔離されていく時代で、公共性と個人主義や、連帯と隔離について思い悩む中、自分なりに最大限にベートーヴェンと連帯して作曲した音楽。

野村誠

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