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#65 懐かしさで胸がギュッとなった話/くろさわかな

【往復書簡 #65 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈おばあちゃぁぁあぁぁあんん…!!!〉
水曜日:泖〈どうかしていた〉
金曜日:くろさわかな〈あの狂った熱意はなんだったんだろう〉

あの狂った熱意はなんだったんだろ

メルカリを見ていると、ときどき「うわーこれ懐かしい!」という出会いがあります。

先日出会ってちょっとジーンとしたのが、「ブコマッチ」のぬいぐるみでした。(残念ながらもう売り切れでしたが)

お二人は「ブコマッチ」をご存知でしょうか。
ブコマッチは、「あっ!これチャレンジでやったところだ!」の漫画でおなじみ、進研ゼミ小学講座「チャレンジ」に出ていたキャラクターです。
いまやすっかりしまじろうのイメージが強いチャレンジですが、わたしが小学生の頃はまだしまじろうはいなくって、代わりにブコマッチが活躍していました。

ここで少しチャレンジのシステムを説明しますね。
チャレンジを受講すると、毎月問題集が送られてきます。
それには、きちんと理解できたかどうかのまとめテストもついています。
まとめテストを郵送で送ると「赤ペン先生」が採点してくれて、数日後に答案が戻ってくる、という流れになっています。

このテストの採点結果に応じて、金シール・銀シール・銅シールがもらえるのですが、このシール、集めると必ずもらえる景品が用意されているのです。景品が選べる春のパン祭りをイメージしてもらうといいかもしれません。シール16枚コースは醤油皿、120枚コースはランチプレート4枚、のような。

そう、冒頭のブコマッチのぬいぐるみは、このシールと交換できる景品でした。
ラインナップに登場したとき、ビビビッ!と衝撃を受けました。そこまでブコマッチが好きだったわけではないし、ぬいぐるみも特別好きだったわけではないのに、何故かこのブコマッチのぬいぐるみはゲットしなければいけないという使命感に駆られたのです。

確かそのぬいぐるみは72枚コースだったと思います。
答案1枚につき、最高でももらえるシールは2枚。4教科全部合わせると1ヶ月8枚です。少なくとも9ヶ月かけないと72枚は達成できません。

景品はときどき入れ替わりが発生するので、早くしないと手に入れる前になくなってしまうかもしれない。そう思ったら焦りました。少しでも早く手に入れなければ。わたしは、チャレンジが届くと真っ先にテストをやって提出する、というグレーな行為に手を染めるまでに至っていました。問題集は真っ白だし、紙面で楽しそうに笑っているブコマッチたちも完全スルーです。とはいえ、テストの点数が悪いともらえるシールの枚数が減ってしまうので、そこだけは十分に気をつけて。ぬいぐるみのためにテストを頑張っているのか、シールのためにテストを頑張っているのか、意味なんて全然わかりませんでしたが、とにかく72枚溜めなければいけませんでした。

そんなでしたので、72枚溜まったときの達成感ったらありませんでした。
これでテストの輪廻から開放されるという気持ちも相まって、景品をもらったときよりも72枚のシールを台紙に貼り終えたときが一番テンションがあがっていたと思います。

念願のブコマッチのぬいぐるみを手に入れたわたしは、そっと客間のトロフィーコーナーに飾りました。今思えば、チャレンジの景品としてあったものって意外と実用的なものが多い(文房具とか時計とか)中、ぬいぐるみは明確な役割がないものだったからよかったのかもしれません。「自分の頑張りを象徴するもの」という役割を自然に付与できるから。だから自分の部屋には持っていかずに、客間に飾ったのかもなあ。
それか、単純に手に入れるまでが楽しかっただけか。

燃え尽きたわたしはその後すっかりチャレンジをしなくなってしまったし、ブコマッチのぬいぐるみもどこかにいってしまいました。
ただ、あの72枚のシールを狂ったように集めた記憶は全然消えなくて、あのときのような熱意ってどうしたら湧いてくるのかなあと、さみしくも羨ましくもなるのです。

・・・

余談ですが、うちは母親が赤ペン先生で、昔は算数(かに丸)担当でした。
赤い万年筆でかに丸をすらすらとかく様子、ちょっと憧れました。
当時は全部手書きで、答案によっては赤ペン先生の個性がにじみ出すぎているイラストもあったり。好きだったなあ。

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わたしがかくとあまりかわいくないかに丸…。


くろさわかな

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