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#94 禁断のレシピ

【往復書簡 #94 のやりとり】
①(8/5):くろさわかな〈なんでもいけると思うなかれ〉
②(8/8):及川恵子
③(8/10):泖

なんでもいけると思うなかれ

これは、旦那と同棲していた頃の話です。
わたしはまだ人生経験20年とちょっとで、料理は今よりさらに不得意。料理の本を買ってみてもうまく作れず、週1回はカレーでした。

カレーってすごい。とりあえず野菜を切って煮てルーを入れれば出来上がってくれる。あまり美味しくできなかった鍋とかおでんが残っちゃっても、カレーのルーを入れれば途端にカレーになってくれる。白菜も大根ももやしもこんにゃくも、カレーの中では大人しく(若干の渋々感を醸し出すものもありましたが)カレーに染まってくれました。

冷蔵庫に残ってしまったくたびれた野菜を一掃するのにも、カレーは役立ってくれました。しわしわになっていても多少色が悪くなってしまっても、カレーに入れば気にならなくなります。もうなんだっていける気がしました。
「カレーがあれば、食材を使い切れなくて腐らせてしまうこともないな」
そんなふうに、カレーのことをとにかく信頼していました。

そんなある日のこと。
わたしはバナナを買いすぎてしまったのです。

今だったら「皮をむいてラップして冷凍庫に入れちゃえばバナナアイスになるよ!」って言えるんですが、当時はそんな知恵はありません。日に日に黒くなっていくバナナ。熟しすぎたバナナは好きじゃないのに、残っているバナナはどれもこれもぐちゅっとした部分がある程度には熟してしまっていました。コバエも寄ってくるし最悪です。タイムリミットが迫っていました。

カレーに入れるしか無い、と思いました。

りんごとはちみつ♪ とバーモントカレーのCMで言っているし、カレーに果物や甘いものが入ってもおかしくはないはずです。カレーならなんとかしてくれると信じ、バナナを輪切りにしてカレーに投入しました。バナナを全部使いたかったのですが、さすがに全部は無理そうだなと2本で我慢しました。

2本が多すぎたのかもしれません。溶けてしまうかなとルーを入れてからバナナを入れたので、もしかしたらこれもよくなかったのかもしれません。
とにかくこのとき食べたカレーは、カレーってこんなに不味くなるんだ、と感心してしまうほどの不味さでした。バナナの香りがするカレーは違和感たっぷり。バナナはバナナでしかなく、熟しているのも相まってどろっというかでろっというか。そもそもバナナを白いご飯と一緒に食べる文化がない自分は、「バナナが白いご飯に乗っている」というイメージだけでだいぶ抵抗があることに、なぜ思い至らなかったのでしょうか。仕方なくバナナを避けても、その香りはどこまでも主張してきます。カレーはバナナに負けるということを初めて知りました。

まあ、未だに旦那と「バナナカレー」の話で盛り上がれるので、よい失敗だったと思います。二度と作ることはない禁断のレシピです。
おふたりにも「二度と作るまい」「二度と作らないでほしい」といった禁断のレシピはありますか? もしくはカレーに入れたことがある意外な具材があれば教えてください。

偶然にも今日はカレーでした。

くろさわかな


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