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Yamaha HPH-MT8 ファーストインプレッション

4年程使っているオーディオテクニカのモニターヘッドホンの音が、最近少し変化してきたような気がしている。購入当初に比べると高音域のシャキシャキ感が減ったし、遮音性が少し低下して外部の音が聞こえやすくなったような気がする。コロナ禍になってから、音楽制作時以外にオンラインミーティングでも使用したりして、かなり稼働時間が長くなっていたので当然かもしれない。そこで新しいモニターヘッドホンを買うことにした。

本当はこれを機にSONYの定番モニターヘッドホンMDR-CD900STを買おうと思っていた。ただ、機材に詳しい会社の友人の話では最近はYamahaのHPH-MT8の評判がとても良いとのことで、確かに色々な方のレビューを読んでもとても良さそうだったので、今回はYamahaのHPH-MT8を試してみることにした。

装着感

このHPH-MT8は重量が350gほどあり、ヘッドホンの中では割と重い部類に入る。SONYのMDR-CD900STが200g、自分が今まで使ってきたAudio TechincaのATH-M20xは190gなので約1.5倍ほどの重量があり、実際手に持ってみるとその重さがよくわかる。ただ、イヤーパッド部分の回転とアーム部分のスライドとたわみ具合によって、頭と耳にかなりしっかりとフィットするように調整することができるため、実際に装着をすると実際の重量ほど重いとは感じない。一方でフィットして安定感があるのに締め付け感がないため装着感はとても良い。とはいえ、このヘッドホンを使った後に190gのATH-M20xをつけると妙に軽いなと感じるのは事実だ。

ケーブルは着脱式で、ストレートケーブルとカールケーブルの2種類が付属している。自分の使い方では、Macに繋いで作業するときはカールケーブルの方が快適だが、アンプに繋いでギターを弾くときはストレートケーブルのほうが快適なので付け替えて使用している。もう少しカールコードが長ければ付け替えなくても両方一本で使えそうなので、少し残念だ。

サウンド

そこそこ高い買い物になるが、自分の聞き分け能力に自信があるわけでもないので、違いを感じることができなかったら嫌だなと思っていたのだが、杞憂だった。自信のない自分の耳でも、最初の音を出して数秒程で今までのヘッドホンとの明らかな音の違いがわかった。

プロのミックスを聴いて

まず、プロのミックスのリスニングでは各パートの音がかなりはっきりと聴こえる。特に、今までのヘッドホンやスピーカーに比べて名前のないシンセサウンドのような装飾的な使われ方のパートとベースの音がとてもくっきりと聴こえてくる。そして、音の広がりがわかりやすく感じられる。新しい発見があって楽しく、時間が許せばいつまでも色々な曲を聴いて過ごしたくなる。

なお、まだ使い始めて時間が経っていないからか女性ボーカルの発声が若干ブチブチ耳に痛いように感じる時がある。また、曲によっては音のリリース(ゲートをかけたような急な減衰)が妙に気になってしまう時がある。これは使っていくうちにエイジングで変化していくのだろうか。

各パートの音がクリアに聴こえることと、音の広がり具合によって新たな感動がある曲がある一方で、普段別のヘッドホンやスピーカーで聴いていると格好よく聴こえていた曲が、このヘッドホンでは逆に意外と物足りない感じに聴こえてしまうケースもあり、なかなか面白かった。また、普段iTunesで曲を連続再生している際には、自動音量調整の効果もあって楽曲間の音量差はほとんど気にならないのだが、このヘッドホンで聴いていると音量差の違いが気になる。

自分のミックスを聴いて

自分の過去のミックスも一通り聴いてみた。思ったよりも違和感や作っていた時との印象の違いはなかったのだが、最近作ったミックスほど中低音部分の処理に物足りなさを感じた。自分ではミックスのスキルは少しずつ改善していると思っていたので、意外だった。「大胆にローカットをするほどミックスがすっきりする」ということを学んでからローカットを多用していたが、必要な音域までローカットしてしまっていたようだ。おそらく今までのヘッドホンではその部分があまり聴き取れていなかったために、必要な音域が削れていることに気が付かなかったのだと思う。このところ「低音なんていくらでも削っちゃって大丈夫だろう」などと考え始めていたところだったので、この点に気がつけたのは良かった。

まとめ

近年買った機材の中でも、1〜2を争う程度にすぐに価値を実感できる機材だった。モニター用ヘッドホンは自分がミックスや録音をする際に使うための機材だと思っていたが、このヘッドホンは他の人のミックスを聴いているときにこそその価値を感じる。今まで聞こえていなかった部分が鮮明に鮮明に聴こえてくることで、プロがどのようなテクニックを使っているのか(例えば、今まで気が付かなかったシンセサイザーのシーケンスフレーズが使われていることを発見したり)が見えてくるのがとても楽しく、勉強になる。多少重いが、しっかり頭にフィットして数時間使っていてもあまり疲れが感じられないのも良い。

少し前にこのような投稿を書いた。今でもこの考えは基本的に変わっていないが、一方で解像度が高いモニター用ヘッドホンがあることで気づける内容が増えるということも改めて実感した。

これからエイジングで音や印象がまた少し変化していくはずだが、少なくとも今のところ十分に値段以上の価値を感じ、このヘッドホンの評判が良いことに対して納得がいった。ギターアンプのTHRシリーズも、ギターのPacificaシリーズもそうだったが、やはりYamahaという会社は安定して良い製品を作っている。

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