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Suhr Classic S Antique 2016

毎月数本は新しいギターを仕入れて手放している友人の「今までで一番よかったギターはSuhr」という発言に影響を受け、Suhrを試してみたいと考えることになった。本当はいわゆるディンキータイプのStandardモデルにしようと思い、二ヶ月弱色々な楽器屋に通って試奏をしてみたが、流通量が少なくなかなか良い個体が見つからず、最終的にトラディショナルなストラトタイプのClassic S Antiqueを購入した。

Classic S Antiqueというモデルについて

2020年現在、Suhrでカスタムオーダー以外で販売中のギターにはディンキータイプ(スーパーストラト)のStandard / トラディショナルなデザインのClassic / より現代的なデザインのModernというシリーズがラインアップされている。Classicには、ストラトキャスタータイプ(S)、テレキャスタータイプ(T)、ジャズマスタータイプ(JM)があり、今回購入したSはストラトキャスタータイプとなる。

Classic Sの中にも、SSS / SSH / HHなど様々なピックアップレイアウトのモデルが用意されている。国内で発売されているJ Selectシリーズには、ローステッドメイプルネックのモデルや、スリムなネックプロファイルを採用したモデルなどが用意されており、国内に流通しているモデルでもかなり仕様には差異がある。

Antiqueでは、ボディにレリック加工が施されている。レリック加工の程度には個体差があるようで、今回購入した個体はラッカー塗装の割れや小さな剥がれを再現した程度のライトエイジング加工が施されている。当然ながら演奏には全く支障がない。

ネック: Even C Medium

Suhrを選ぶ上で、一番悩んだ点がネックだった。近年のSuhrのレギュラーモデルにはEven C Medium、Even C Slim、Modern Elliptical、60’s C Vintage Standard…という様々なネックプロファイルが存在する。最も薄いModern Ellipticalは、基本的にはModernシリーズに使われているもので、Standard / Classicシリーズで採用されているモデルは調べた限りでは見つからなかった。

今まで薄いネックを好んできたこともあり、試奏をした限りではEven C MediumよりもEven C Slimの方が弾きやすく感じていたのだが、このギターのプロファイルはEven C Medium。悩んだ挙句、どうしても慣れなかったら買い換えるつもりで購入。最初は違和感があって弾きにくかったが、幸い2〜3日で違和感はなくなり、その後急激に手に馴染み始めた。今ではビブラートであったり、親指を使ったプレイ/ミュートに関してはどのギターよりもやりやすいと感じており、このギターの気に入っている箇所の一つとなった。

フレット: ステンレスフレット

Suhrといえばステンレスフレットのイメージだったが、実際に流通しているギターを見てみると、意外にもニッケルフレットの個体も多い。ニッケルフレット搭載モデルの方が値段も手が届きやすかったりするのだが、ステンレスフレットが気になっていたので、今回はステンレスフレット搭載モデルに絞って探した。

サウンドは、やはり音の立ち上がりがとても速い。そのせいか、アンプを通さない生音も非常にクリアに響く。

ニッケルフレットと違って、弾いていてもあまり擦り減らず、また磨かなくても常に綺麗でスムーズな状態が維持されるのは嬉しい。ただ、弦よりも硬い分、弦が切れやすくなるらしい。ステンレスフレットのせいだったかは不明だが、実際調整の際にまだそこまで傷んでいない一弦が切れるということがあった。そして、心なしか他のギターに比べるとポジション移動の時に指の皮膚が若干痛い様な気もしている。プレイに支障が出るほどではないが。

ピックアップ: ML(シングル) x 3

ピックアップレイアウトはシングルコイルPUのMLが3基、トラディショナルなストラトキャスターのレイアウトで搭載されている。

MLはシングルコイルでありながら、非常にノイズが少ない。ギター本体に埋め込まれたノイズリダクションシステムSSC IIの効果かもしれないが、自宅で弾いている分には、ほとんどノイズが気にならない。出力は若干弱めでセンシティブで、ニュアンスがはっきりと出やすい分丁寧に弾かないと粗も目立ちやすい。今まで使ってきたピックアップの中でも、最も綺麗に弾くのが難しく、同時に表現力の幅が広いピックアップだと思う。

フロントピックアップの音が素晴らしく、芯があって透明感のある音が出る。クリーンの音が透き通っていて素晴らしいのは勿論だが、多少歪ませて、潰れるか潰れないかという辺りの音もとても良い。

ブリッジ: Gotoh 510

ブリッジはゴトー製の2点支持タイプのシンクロナイズドトレモロ。アーミングはスムーズで良いのだが、アームバーの着脱に毎回レンチが必要なのが若干面倒臭い。ケースにしまう際にアームを取り外す必要があることから、今ではほとんど使うことがなくなってしまった。IbanezのEdgeのように押し込むだけで簡単に取り外しできる構造になって欲しいものだ。

総評

トラディショナルなデザインのボディにエイジング加工が施されており、見た目はヴィンテージのオールドストラトのようだが、ステンレスフレット / SSC-IIの搭載によって音やプレイアビリティは極めてモダンであるというのが面白い。シングルコイルピックアップでありながらノイズがかなり少なく、チョーキングがしやすくすり減らないフレット、アーミングをしても安定するチューニングはハイエンドギターならではで、Suhrに対する世の中の評価にも納得がいく。不満点らしい不満点や不安になる点もなく、信頼して自信を持って演奏することができる。

安いギターではないが、友人が「今まで弾いた中で一番良いギター」と評するのはとても理解できた。

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