見出し画像

AmpliTube TONEXファーストインプレッション

兼ねてからアナウンスされていたIK Multimediaの新しいAIマシンモデリングソフトTONEXのMac / Windows版がリリースされた。

IK Multimediaが出している従来のAmpliTubeシリーズとの違いは、自身でアンプやエフェクターのモデリングをし、それを他ユーザーと共有できる点にある。要はKemperみたいなことをプラグインで手軽に安価で行うことができるのだ。

TONEXには手持ちの機材のモデリングを行うモデラー機能と、作成されたモデルを使って録音・演奏をするプレイヤー機能の二つから構成されている。今回はまずプレイヤー機能の方を一週間使ってみてのファーストインプレッションをお届けしたい。

使い方の把握に苦戦

まず、自分自身は今までAmpliTubeシリーズに馴染んできたこともあり、今回TONEXもすぐに使えるようになるだろうと思っていた。しかし、今回は使い方に慣れるまで少し時間がかかった。

苦戦した大きな理由の一つは、TONEXというアプリ/プラグインの立ち位置の理解の不足だった。AmpliTubeとTONEXとの関係は、BIASで言うところのBIAS FXとBIAS AMPの関係に似ている。TONEXは個別のアンプやエフェクターのモデリング/シミュレーションに特化したシステムで、TONEXの中では基本的に一つのリグモデルに対するシミュレーションを実行できる。TONEX単体で実現できるのは雑にいうと、例えば「Dual RectifierをTreble 7 / Mid 5 / Bass 3で鳴らした時のサウンドの再現 + イコライジングなどの多少の調整」というところまでになる。複数のアンプやエフェクターを組み合わせて使用する、というような複雑な処理は基本的にはTONEXの中では実現できない。

AmpliTube上でTONEXのモデリングアンプを読み込む

TONEXのモデルはAmpliTube上で読み込めるようになっているので、AmpliTubeを使えば「Dual RectifierをTreble 7 / Mid 5 / Bass 3で鳴らした時のモデル」の前段にコンプとオーバードライブを設置し、後段にラックのイコライザーとコンプを追加する、といったような使い方ができるようになっている。最初この部分をよく理解せず、TONEXだけでそのようなことができるのだろうという勘違いをしていたため、無駄に機能を探して時間を浪費してしまった。

少しややこしいのはTONEXのモデリングは「アンプ単体」の他にも「アンプとエフェクターの組み合わせ」「エフェクター単体」といったようなパターンがあることだ。具体的には「VemuramのJan RayをFenderのTwin Reverbで鳴らした時のサウンド」というようなモデルがあるのだが、このようなアンプとエフェクターの組み合わせから作られたモデルでは、その組み合わせ自体が一つのサウンドとしてモデリングされているため、「Jan RayをOFFにする」「Jan RayのGainを下げる」といったようなことはできず、
AmpliTube上でも「一つのアンプのモデル」として扱われる点に注意する必要がある。ちなみに現状ではエフェクター単体モデルも、AmpliTube上では「アンプのモデル」として読み込む必要があるようだ。

もう一つややこしいのが、TONEXの方にあるアンプの各種つまみである。TONEXのUIにもアンプのGAINやイコライザーなどのノブがあるが、これはそのアンプモデルの各つまみの値を再現しているわけではない。これらのつまみは、そのモデルが生成するサウンドの入力レベルの補正やイコライジングをするためのつまみである。そこを勘違いしていたため、「明らかにハイゲインなサウンドなのにGAINが5になっているのはなぜなのか。不具合なのではないか?」という点で頭を悩ませることになった。なお、モデル/リグを切り替えた時にGAINやイコライザーのつまみの状態が引き継がれるという挙動があるのだが、これは意図されたものなのか、不具合なのか、判断が難しいところだ。

AmpliTubeとのサウンドの違い

さて、肝心のサウンドについてだが、正直に言うと今時点ではまだ特別凄いと感じるところには至っていない。自分自身が、再現度を評価できるほど本物のアンプの音を知り尽くせていないのか、あるいは今までのAmpliTubeのサウンドに慣れ親しんできたからか、サウンドを比較した際に「TONEXの方が良い」と言い切ることができない、と言うのが正直な今時点での感想である。

Rockmanのモデリングサウンド

ユーザが作ったモデルを試すのが楽しい

ユーザが作ったモデルが共有されているToneNETは非常に楽しい。RockmanやJan Rayなど、今までのAmpliTubeシリーズのモデルに比べると少しマイナーなアンプやエフェクターのモデルがすでに多数アップロードされており、それらを自由に試せるというのは非常に楽しい。この点については今後さらに多くのモデルが作成され共有されていくはずなので、ますます楽しみである。

まとめ

リリースされて一週間での感想は、やはりサウンド・機能以前に「使い方を理解するのが難しかった」というのが大きかった。ToneNETで様々なアンプ・エフェクターのモデリングを試せるのは非常に楽しく、またしばらく使ってみて真価がわかってきた頃に次のレビューをお届けしたい。

そして、ようやくPLAYERの使い方を理解できたので次はMODELERの方を試してみようと思う。

2022.10.29 追記: MODELERを試した

2022.11.19 追記: iOSアプリを試した


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?