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[ジャンクギター再生]Greco EG-360の修理
会社の同僚から、また新しい(?)ジャンクギターを預かった。今回はGrecoのLes Paulタイプ。
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Grecoのロゴは年代によっていくつかのバリエーションが存在するが、今回のギターについているロゴは初めて目にするタイプのものだった。rがnのように見えるいわゆる「グネコ」ロゴだが、よく見るグネコロゴとは若干字体が違う。ネット上の情報によると、どうやら69年〜72年の間に採用されていたもののようだ。
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独特なブリッジの形状やネックエンドの丸み具合などをみても、70〜71年頃に販売されていたEG-360である可能性が高そうだ。
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ざっとコンディションについて確認してみると下記のような状態だった。
PUセレクターをどのポジションにしても音が出ない。ボリュームやトーンを回しても一切反応なし。おそらくジャックかスイッチに不具合がありそう。
PUセレクターはなぜかフロント/リアのポジションで固定することができず、勝手にセンターに戻ってしまう。
ブリッジはサドルが一つ欠損している。
テイルピースはメッキが錆びて剥がれ、腐食が進んでいる。
ネックは順反り。
フレットは錆びている。
ペグはやたら綺麗なので交換されている可能性がありそう。
テイルピースの腐食はかなり進んでいるが、ピックアップカバーやピックガードのステーなどは良い感じに年季が入ってきている。汚れは落としつつ、必要以上に綺麗になりすぎないようにメンテナンスをしていきたい。
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まずは音が出ない問題の修理から。色々調べてみた結果、やはり問題はジャックにあるようだった。ジャックの端子が金属疲労で柔らかくなっており、接触不良を起こしていた。ペンチで端子を曲げると通電するのだが、すぐに曲がってもとに戻ってしまうので新しいジャックに交換することにした。
直し甲斐のある、少し頭を悩ませるような修理をしてみたかったのだが、今回も電装系は簡単なハンダ付だけで終わってしまった。エレキギターの電装系のトラブルは、こんなものばかりだ。
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PUセレクターがセンターに戻ってしまうのは、キャップが筐体に干渉しているからだった。キャップを外すとフロント/リアのポジションに切り替えることができた。若干動きが悪く、また目視でも錆びが確認できるような状態だったので接点洗浄剤で洗浄しておくことにした。
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キャップの方は穴にパテを詰めて高さを調整して干渉しないようにした。
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表面的にはそこまで汚れたり錆びているように見えなかったが、ノブを外してみるとポット類はかなりひどく錆びていた。
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そして、エスカッションなどの各パーツを取り外すとその下から赤い塗装が現れた。どうやら一度ゴールドの上から赤く塗装されたことがあったようだ。この塗装については目に見えない部分だし、特に音や弾きやすさに影響はないので、このギターの歴史としてそのまま残しておくことにした。
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パーツ類はいつも通り超音波洗浄で洗った上で、金属パーツの錆がひどいものはコンパウンドで磨くことにした。最近、細かいパーツの研磨の際にペンチなどでパーツを固定すると作業がしやすいということを学んだ。
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ネックはそこそこ反っていたが、トラスロッドはまだ回す余地があった。古いギターで回しすぎると指板にダメージが行く恐れがあったので、回しすぎないように注意しつつ、ある程度は妥協して弦高を上げて対処することにした。
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フレットは錆が酷かったのでコンパウンドで磨くことにした。多少摩耗はあるが、あまり高さに余裕がないのですり合わせは行わないことにした。
ボディのクリーニングを済ませて、一度組んでみる。ブリッジは交換用のサドルを入手することが難しそうだったので、ブリッジごと交換した。
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一度組み立てて弦を張ってみたところ、ブリッジを交換したせいか弦高があまりに高くなりすぎてしまったので、シムを挟んで調整することにした。デタッチャブルネックでよかった。
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全ての弦を張り、ブリッジの調整などを済ませてチェックをしていたところピックアップマウントで共振が起きてしまっていることに気がついた。おそらくスプリングが原因の可能性が高いが、組み立ての段階でエスカッションを固定するネジも若干緩くて気になっていたので、ここも直すことにした。
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爪楊枝でエスカッションを固定する穴を埋める。実はこのギター、ボディトップはベニアを曲げたような形のホロウ構造になっている。そのため爪楊枝を挿すと細い部分が変に下の方に突き出てしまうので先端を切った上で穴に詰めるという細かい調整が必要だった。
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ボディを傷つけないようにマスキングした上でヤスリで楊枝が飛び出ている部分を削る。
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エスカッションを当てて位置を確認しながら新しい穴を掘る。
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新しいスプリングでピックアップを固定してピックアップマウントの修理は完成。
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ジャックの取り付け穴も若干ゆるかったので、ついでに同様の方法で修正。
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弦を張って再度ブリッジなどを調整して完成。ネックに多少の反りがあるのでどうしても弦高は若干高めにせざるを得なかったが、一応音が出て弾ける状態には直すことができた。
いつも通り、動画の最後に簡単な試奏を載せてみた。
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