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毒を食らわば皿まで?

10年前、「美味しんぼ」というマンガで、
福島の原発事故について書かれていて、
マスコミで割と話題になったのだが、
その時に書いた文章

ちょっと混乱しています 前篇

ふと「毒を食らわば皿まで」って、
どういう意味なんだろうかと思った。
もちろん、なんとなくどういう意味かは知っていたが、
正確に人に説明できるほどには知らなかった。

調べたら、
「どうせ毒入りの物を食べるなら、皿まで舐めろ」
という意味の言葉、つまり、
「いったん悪に手を染めたからには、最後まで悪に徹しよう」
という意味らしい。

ある人から聞いた話なのだが、
彼が大学時代に銀座の飲み屋でバイトしていた時、
明け方に仕事が終わって、先輩から、
「ラーメン食って帰ろう」と誘われ、
築地にあるラーメン屋まで食べに行った。

彼が麺を食べ終わって、スープを飲もうと、
どんぶりに手をかけて持ち上げようとしたところ、
「スープは飲むな!!」と、先輩から、
強い口調で怒られたそうである。

帰り道「なんでスープは飲んじゃだめなんですか?」
と聞くと「あのラーメン屋は、
スープに大量の味の素を入れているから」
と言ったらしい。

先輩は味の素が身体に悪いと思っていたらしかった。
スープは飲んではいけないのに、
そのスープがからんだ麺は食べてもいい、
というのはどういうことなんだろうか?
まあ、それは先輩の考え方なので、
別にそれを批判するつもりはないが、
こういう時に「先輩、
毒を食らわば皿までって言うじゃないですか」
と切り返したりできたらカッコイイよね、と思った。

ちょっと混乱しています 中篇

福島には、「計画的非難区域」とか、
「警戒区域」とかが設定されているのに、
「美味しんぼ」の鼻血描写に関しては、
「そんな人は福島にはいません」
と言ったりするのは、
ちょっと矛盾しているんじゃないか、と思う。

ドイツ制作のドキュメンタリー番組に、
福島の閉鎖区域で畜産業をしている方が出てくるが、
この方は350頭の牛を放牧していて、
牛たちは放射能にさらされているうえに、
放射能で汚染された草も食べているので、
外部被曝も内部被曝もしており、
その影響かどうかはわからないが、
身体に謎の白い斑点ができはじめている、と語っている。

40年間牛を飼っているが、こういうことは初めてだという。
獣医にも皮膚病ではないと言われたそうだ。
行政からも検査チームが派遣され、
結果、牛を殺処分しろと言われたらしいが、
「でも私は殺しません」とその方は言っていた。

もし同じように福島に住んでいる人を検査したとして、
何かの反応が出たから「殺処分せよ」、
と命令が下されたとしたら、
自分の子供を殺すことができるだろうか?

福島第一原発から放射能が出ているのは事実で、
今でも地下水をどうにかしようとしていたり、
非難区域には人が住めなかったりしているのに、
福島で鼻血が出た人がいる、というマンガには、
風評被害だ、といって抗議する。

やっていることに一貫性がないので、
何が本当で何が嘘なのか、
どの情報に触れるべきなのか、そして、
どういう評価をすればいいのかがわからなくて、
ちょっと混乱しています。

ちょっと混乱しています 後篇

「毒を食らわば皿まで」というのは、
「いったん悪に手を染めたからには、最後まで悪に徹しよう」
というような意味なのだが、
「福島第一原発の周辺は危険だから非難してください」
という判断をしたのなら、同じ福島に住んでいる人が、
鼻血を出したり、疲労感を感じている、という話を聞けば、
「それも放射能の影響かもしれませんね」
と考えるのが、自然な流れではないだろうか?

ところがテレビでは、記者が、
非難して仮説住宅に住んでいる人を訪ねて、
「美味しんぼ」を読ませ、
「こんなこと、私は一度も体験していませんよ」
と言わせたりしていた。

東北の復興に尽力しているサンドウィッチマンも、
「美味しんぼ」はとても好きなマンガだったのに・・・
というような発言をしていた。

実際に復興の現場では、
「鼻血が出た」ということが、
そんなに復興の妨げになっているのだろうか?

「ああ、鼻血?出てますよ、もうバンバン出てます。
でもそんなささいなことは、
いちいち気にしちゃいられないんですよ、
他にやらなきゃいけないことがたくさんあるから・・・・」
と、誰かがテレビで言ってくれたら、
僕はその人の言葉を信じたい。

そしてそのインタビューを放送したメディアを信じたい。
「美味しんぼ」の「福島の真実篇」は、
全24回で、最近問題になっているのは、
最後の3回、22.23.24である。

きっかけは22の中で主人公の山岡士郎が、
鼻血を出したことである。
僕は最後の3回しか読んでいないが、
その内容は、福島の現実に心を痛め、
復興を強く願った内容である。

あるひとつの表現、
今回なら鼻血を出している1コマの絵を取り上げ、
全体の文脈を無視してその部分だけを批判するのは、
フェアではないし、そもそも、
何か別の意図があってやっているような気がする。
現実をキチンと見て、キチンと伝えてほしい。

僕は遠く離れた福島で、今何が起きているかは、
テレビや雑誌やネットで、
その一部を伝え聞くことしかできない。

それはチェルノブイリだって、
韓国のフェリー事故だって、
タイの軍事クーデターだって同じことである。

TPPだって集団的自衛権だって、
本当のところはどうなのかわからない。
安倍さんは悪い人なのか、
池上さんはいい人なのか、
それさえもよくわからない。

色々な立場の人の色々な思惑や、
思い込みや利害関係などが錯綜して、
その情報の氾濫にさらされて、
混乱して、困惑しているのだ。

あれから10年経つが、
「美味しんぼ」はうやむやのまま中断。
今でも福島でバタバタ人が死んでいるとは言われていない。
安部さんも亡くなってしまった。
それも不審死。闇は深い。

そもそも東日本大震災が
人工地震だったという説だってあるのだ。





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