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イントレランスとは不寛容という意味

映画が好きで
週に何本かはDVDを見ている、
という子と話す機会があって、
「見る映画は何を基準に選んでいるの?」
と聞いたら「なんとなく」という答えで、
「例えば気に入った監督とか、
俳優とかを基準にして、
その人の別の作品を見たりとかしないの?」
と聞くと、
「監督?監督って何する人?」と聞かれた。


たしか以前にも同じ質問をされた覚えがある。
監督の仕事って言葉で説明するのは難しい。
でもそういう質問をしてくる人には
あれこれ説明したところで伝わらないので、
「うまく言えないけど、
監督って大事な役割なんだよ」
とあいまいに答えている。


フランソワ・トリュフォーの
バックステージものの傑作
「アメリカの夜」の中に、
「映画監督とはあらゆる質問に答えるのが仕事だ」
というセリフがある。
美術さんから、照明さんから、
カメラマンから、役者から、制作進行から、
「このシーンでは
どちらのタイプの拳銃を使いますか?」とか、
「ここではもう少し俳優の顔に
光を当てたほうがいいだろうか?」とか、
「このカットはイントレを組んで
高いアングルで撮ったほうがいいんじゃないか?」とか、
「このセリフ、もう少し間をあけるべきだろうか?」とか、
「このシーンで使う車は何色がいいですか?」
と、それぞれの立場から色々な質問を受けて、
その全てにとりあえず
何かの答えや指示を出さなければならない、
それが監督の仕事だ。


ちなみにイントレというのは
カメラを高い位置にすえるための
撮影用のやぐらのことで、
D・W・グリフィスの
「イントレランス」で
バビロニアのシーンを
俯瞰で撮影したことから使われるようになった
撮影用語である。

この「イントレ」について、CM制作会社に勤めてすぐの頃、特技スタッフの方から、「これがイントレポート、ちなみにフランス語」という非公式講義を受けたことがある。イントレポートというのはイントレ撮影をする時にカメラを乗せる台のことである。その時僕は「イントレってイントレランスから来ているんだから英語じゃないのかな?」と思っていたのだが、その言葉は呑み込んでいた。つくづく言わなくてよかったと思っている。

写真がその「イントレランス」のバビロニアのシーン

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