ハウステンボスの思い出

その1

13年ほど前、ハウステンボスのPR番組を担当していた。
ハウステンボスが民事再生法の申請をするちょっと前のことだ。
まだ第3セクターのような経営母体で、
電通にいいように食い物にされていた頃のハウステンボスである。

まあ経営のことや経済ヤクザのことはどうでもいいのだが、
ハウステンボスで根強く囁かれている噂に、
ホテルヨーロッパは「出る」というのがあった。

夜中、ホテルヨーロッパの廊下に、
正体不明の物がフワフワと歩いている、
というような話である。

この話はハウステンボス内では禁句で、
広報の人に軽く聞いてみたら、
場が凍り付いてしまったことがある。

実はハウステンボスが建てられた土地というのは、
長崎の原爆で死んだ身元不明の遺体が
集められて埋められた場所だ、
という話だったのだが、真偽のほどは知らない。

ただ、2週間に一度は
ハウステンボスに行っていたのだが、
何回行っても心が落ち着かない、
寂量感に満ちた場所であった。

その2

ハウステンボスといえば、その名が冠されている、
ハウステンボスという建物があるのだが、
ここにフランス式の庭園があって、
庭園は建物に囲まれた、中庭のようなスタイルになっている。

ここの庭でもよく撮影をしたのだが、建物で囲まれているため、
いわゆる「音が回る」という現象が起き、建物の壁に反射して、
誰もいない方向から、声や足音が聞こえてくることがよくあった。
そういう場所だと知っていても、
度々不思議な感覚に襲われていたものである。

この仕事のロケによく来る音声スタッフさんに、
ものすごく霊感が強い人がいた。
帰りのロケバスの中で背筋が凍るような話をよくしてくれたものである。
しかも夜中に。やめてくれ。

この人と一緒にこの中庭でロケしている時、
やはりあらぬ方向から足音が聞こえてきたのだが、
その人がとっさに、戦場で兵士がするように、
身構えて伏せるような姿勢をとったので、
「ああ、普段から見えたり聞こえたりする人は、
こんな風に敏感に対応するんだなあ」と、
感心して、あらためて自分の霊感のなさを痛感したのだが、
今にして思えば、彼が聞いていた音の中には、
「本物」も混じっていたのかもしれないな、
という気もしてくるのである。




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