少なくとも私は、ピルのおかげで自分らしく生きることができている。
先日、かかりつけの婦人科にて。
「急なんですけど、今日採血させてもらってええですかね?」
「国の指示で血栓ができやすいかどうか調べないかんのですよ。結果によっては薬やめてもらわなあかんからね。」
いつもの薬をサクッともらって帰るつもりだったので、突然の採血が何のことかさっぱりわからない。よくよく聞いてみると、こういうことだった。
・ある特定のピルを服用している人が血栓症で亡くなる事例が起きた
・私が服用しているピルは亡くなった方達が飲んでいたピルではないが、成分がほぼ同じなので検査はしなくてはならない
・血液検査の結果、血栓のリスクが高い人だと見なされた場合、ピルの処方ができなくなる可能性がある
もうねーーーー
めちゃめちゃ腹が立ってしまって。国に。
こんな私が、人生の中で初めて国に憤ったわ。こういう気持ちって政治に関心のある人だけかと思ってた。自分自身びっくり。
◇◇◇
検査の結果『あなたの血液は血栓ができやすくなっています』と診断された場合、もうピルを処方してもらうことができない。それはわかる。薬を扱うにあたって、飲んでも良い人、いけない人はいる。で?ピルを禁止されて、どうなるの?
やめなきゃいけなくなったとして、その先どんな選択肢があるの?
月経困難症の人は、毎月また地獄の痛みに耐えるしかないの?
子どもを望まない人は、コンドームでの避妊に逆戻り?
日本、他の選択肢普及してなさすぎじゃない?
制限するなら、それに変わる新しい解決策が必要なのに。
ピルが危険というならば
『毒にも薬にも』という表現は良く言ったもの。だけど、それはピルに限ったことじゃない。きっと他の薬だって、予防接種だって、毒にも薬にもなり得る。まずは効果と副作用をよく知る。その上で、自分の体に入れるかどうか決める。これって何でも同じじゃないのかな?
「ピルにはこんなリスクがあるよ、でも反対にこんなメリットもあるよ」「ピル以外の選択肢なら、これとこれとこれがあるよ」
と、自分で情報や選択肢を吟味できる環境の中で、どういう方法を選び取るのか決めることができればいいのに。
◇◇◇
「生理痛いちいちで休むとか甘え」
PMSや生理休暇への理解の低さ。
「仕事もいいけど子どもは早いほうが良いよ~」
女性のライフプランニングとキャリアの両立の難しさ。
こんな問題がまだまだ当たり前にあるからこそ、ピルの力を借りて生きている女性はきっと沢山いる。私もその一人だ。
私とピル
私は毎月、低用量ピルを処方してもらっている。
最初は『月経困難症』の改善のためだった。
生理のたびに「立っていられないので仕事休ませてもらってもいですか」なんて言えなかったし、誰にも見られないように仕事場の物陰でうずくまるのももう嫌だと思ったから。
副作用で気持ち悪くなる人もいるよと耳にしたことがあり、最初はめちゃくちゃ不安だった。
しかし、結果私にはピルが合ったらしい。
毎月あれほど私を苦しめた生理痛はきれいさっぱり消え去った。出血量の減少。生理期間の短縮。精神的にも安定したし、控えめに言って最高だった。
また、当時仕事が生きがいだった私にとっては、予期しない妊娠の可能性を下げられることも大きなメリットだった。すでに結婚はしていたけど、子どもはもう少し先でと考えていたし、夫も同じ気持ちだったので、私は一層仕事にのめりこんでいく。
(自分で言うのもだけど)異例の速さで役職がつき、やればやるほど評価された。しんどくもあったけど、燃えていた。
◇◇◇
時は流れ、車を買って、家も買った。
昨年の異動を機に、仕事のペースを少し落としてみた。
すると最近、家事の楽しさや家を守ることの魅力が見えてきた。
「私達のタイミングって、そろそろなのかも?」
「今年中にいっかいピルやめてみる…?」
なんて、最近はちょっと思いはじめている。
もちろん、ピルをやめたとしても子供を授かれるかどうかはわからない。
だけど、そこは納得した上での『今』なんだから、大丈夫。後悔する覚悟もできている。
◇◇◇
「しっかり働いて、お金を貯めて、二人で楽しく暮らす中でお互いに子どもが欲しいと思うタイミングがきたら」
私達は夫婦ふたりで人生をちゃんと選択したという誇りがある。
一般的にピルが良いとも悪いとも断言するつもりはない。
だけど、実際にピルを使ったことのない偉いおっちゃん達の意見だけで、この薬は悪いだの、女はこうあるべきだの、勝手に決められてしまうのは悔しい。
実際に使う側の私たちが議論して、自分で決めることができる世の中になってほしいな。
私にできることは、自分の経験や考えをこうやって文字にすることぐらいだけど、こんな一個人の意見でも誰かの一つの選択肢になればいい。
少なくとも私は、人生を選ぶ手助けをしてくれたピルという薬に結構感謝してるよ。
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