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「SOFA」スコアのつけ方

 春になると新入職員シーズンですね。ICUにも新人ナースがやってきます。そんなICUですが、患者さん入室日と入室翌日と退室日にやる事があります。先輩ナースはもうお気づきですか。そうですSOFAスコアをつける事です。
 先輩ナースの皆さん、新人ナースに自信を持ってSOFAスコアのつけ方説明できますでしょうか?ここではSOFAスコアのつけ方の基本と注意点について全部解説していきます。
 SOFAスコアとはSequential Organ Failure Assessmentの略で、6つの臓器システム(呼吸、凝固、肝、循環、中枢神経、腎)についてそれぞれ0〜4点で点数をつけてその合計になります。年齢16歳以上で使用可能で、最小は0点で、最大は24点です(こんな高い点数はまずありませんが)。もともとは1996年に敗血症(sepsis)の重症度をつけるためにVincent先生という有名な先生が中心となり開発した重症度スコアです(SOFAの「S」は、最初はSequentialではなくて、Sepsisの略だったというのはICU豆知識です)。今でも最新の敗血症基準でこのSOFAスコアは使われています。
 あとちなみに小児用(15歳以下)の場合は、「pSOFA」というものがあり、項目が異なりますので注意してください。

SOFAの元論文:1996年だから、今から28年前 !!

SOFAスコア

SOFAスコア:6項目の臓器を評価します

 6つの臓器システム(呼吸、凝固、肝、循環、中枢神経、腎臓)でそれぞれ点数をつけて合計します。例えば肺炎でICU入室、呼吸不全あり(P/F=150で挿管されて人工呼吸器あり)、ノルアドレナリン(0.15γ)を使用されている、腎機能がちょっと悪くてCre 1.34mg/dlという患者さんを想定します。上の図を見て下さい。呼吸が3点、循環が4点、腎臓が1点で他が0点だったとすると、その患者さんのSOFAスコアは合計8点となります。
 まずはざっくりとこの表をながめて、覚えていきます。次からは各臓器のスコア、注意点についてそれぞれ見ていきます。

各臓器のスコア注意点

呼吸 (Respiration)

  PaO2/FiO2比 (P/F 比)を見ます。PaO2は動脈血液ガス検査でわかる動脈中の酸素分圧ですね。FiO2は投与されている酸素濃度です。だいたい正常のPaO2は100 Torrぐらいで、FiO2は空気の酸素濃度で0.21 (21%)ですので、私たち(健常人)の今のP/F比は 100/0.21 ≒ 500ぐらいです(正常値、覚えておきましょう)。P/Fが400を下回ってきたら、スコアが上がってきます。PaO2を使用しますので、動脈血の血ガス検査を行わないとスコア欠損となってしまいます。
 注意点として、人工呼吸器をつけていない患者さんは(P/Fがどんなに悪かろうと)最大スコアは2点になります。呼吸スコアが3点以上になるためには人工呼吸器が必要となります。よって人工呼吸器なしの患者さんではP/Fによって呼吸スコアは0〜2点となり、人工呼吸器ありの患者さんでは呼吸スコアは0〜4点になります。人工呼吸器の定義について原文には「with respiratory support」としか書いてないのですが、当時はネーザルハイフローとかなかったですし、一般的には気管挿管ありの人工呼吸(IPPV)を想定しています。

凝固 (Coagulation)

 これは純粋に血算検査による血小板数で決まります。10の4乗(× 10,000)がつきますので、凝固スコア0点の15以上というのは15万以上、4点は血小板数2万未満です。血小板数の0の桁数にだけ気をつければそんなに難しくありません。

肝 (Liver)

 これもそんなに難しくありません。生化学検査による総ビリルビン値(T-Bil)の値によってスコアが決まります。
 集中治療系のテストではよくSOFAスコアを暗記することが求められるのですが、肝臓の数値あたりは出題に狙われやすいですね。

循環 (Cardiovascular)

 循環スコア1点は平均動脈圧(MAP)が70mmHg未満です。収縮期血圧(sBP)ではなくて平均血圧なので気をつけましょう。平均動脈圧=1/3×(収縮期血圧-拡張期血圧)+拡張期血圧でしたね。ICUのいいモニターでは血圧の()括弧内に出ている数値が平均血圧です。すなわち120/70(86)と書いてあれば86mmHgが平均血圧ということ。
 スコア2点以上は各種カテコラミン使用です。ドブタミン(DOB)は使っていれば量に関わらず、2点になります。あとはノルアドレナリン> 0.1γ で「4点」も覚えておきましょう。ちなみにノルアドレナリン5A+生食45mlの組成(よく使われている組成)では体重50kgでだいたい1ml/hr投与あたり0.03γになります。この組成で5ml/hrで患者さんに投与されていれば0.03×5=0.15γ投与されていることになり循環スコアは4点となります。

中枢神経 (Central Nervous system)

 ここはGCSをつければいいので、そんな難しくないじゃんって思われがちですけど、注意点があります(GCSの付け方は下記に案内している自著の「2年目からのICU看護」をご参照ください)。
 例えば、大きな手術が行われ気管挿管下で鎮静剤も投与されたままICUに入室した患者さんです(よく挿管帰室と呼ばれるもの)。鎮静剤も投与されて反応はなく、挿管されていて声も出せないので、記録にはよくE1VtM1と記載します。これだとGCSがE1V1M1の3になるので、中枢神経のSOFAでは最大の4点になってしまいます。でもこの患者さんはあくまでも麻酔がかかっているだけで、意識障害があるわけではありません
 そこでSOFAをつける際のGCSは、「鎮静剤などが投与されていない場合、気管挿管されていない場合を想定して」付ける決まりとなっています。一般的に予定手術の患者さんは、脳外科手術などを除いて、手術室入室時にはレベルクリアですから、ICU入室時のGCSはE4V5M6になります。SOFAでは0点になりますの気をつけましょう。

 ・SOFAのGCSは鎮静剤、気管挿管や失語症の影響、それから浮腫で開眼できない場合もその影響がないと仮定した状態を評価する
 ・予定手術後の患者さんのほとんどはE4V5M6となる(入室前の状態が参考になる)
 ・薬物中毒などの意識障害は、そのまま正味の意識障害ありとしてGCSつける

腎臓 (Renal)

 基本的にクレアチニンの検査値によって決まります。3点以上は尿量も追加されっます。この場合は、クレアチニン値または尿量ですので、どちらかが引っかかっていればその点数になります(andではなくてor)。
 維持透析中の患者さんの場合は、腎不全なしの状態を想定することはできないので、そのままの点数を付けるため4点となることが多いです。

いつスコアを付けるのか?

 入室してから24時間以内の各スコアのバイタル(データ)の最悪値を採用してつけるやり方が最も一般的です。またこのスコアは連日付けることで、その増減により、患者さんが良くなっているのか、悪くなっているのかを判断することも可能です。
 ICUのDPC(医療費に関わるもの)では入室当日、入室翌日、退室日の3つのスコアを付けて、提出することを求められています。入室当日と言っても、ICUでは夜の23時に入室などザラにありますよね。したがって厳密にその日のうちというのではなく、その入室時点から24時間以内につけるものを採用して提出するのでOKとされています。無理に入室当日だけにこだわっても、取れるデータも少ないし、何より深夜はただでさえ忙しくて、厳しいですよね。。

SOFAスコアと重症度

 このSOFAスコアでは患者さんの重症度がわかります。でも重症度って何でしょうかね。ICUに長く在室していれば重症と言えるかもしれません。他にも死亡率というのも一つの重症度でしょう。
 このグラフは感染が疑われてICUに入室となった患者さんのSOFAスコアと死亡率を示した観察研究です(JAMA. 2017 Jan 17;317(3):290-300.  PMID: 28114553.)。概ねSOFA 4点で死亡率10%、SOFA 12点で死亡率が50%となっています。ただしこれはあくまでも統計学的な話で、死亡率は他にもいろいろな要因によって影響されますので、これがまるっとそのまま予測死亡率として当てはまるわけではないので注意しましょう。

感染が疑われてICUに入室となった患者さんのSOFAスコアと死亡率
(JAMA. 2017 Jan 17;317(3):290-300.より引用)

Today's note

・SOFAスコアは6つの臓器システム(呼吸、凝固、肝、循環、中枢神経、腎臓)でそれぞれ点数をつけて合計します
・SOFAのGCSは鎮静剤、気管挿管や失語症の影響がないと仮定した状態を評価します
・予定手術後の患者さんのほとんどはE4V5M6となります
・入室してから24時間以内の各スコアのバイタル(データ)の最悪値を採用してつけるやり方が最も一般的です

↑ GCSのつけ方に自信のない方、詳しくはこちらの自著「2年目からのICU看護」を参照ください

(参考文献)

Vincent JL, Moreno R, Takala J, Willatts S, De Mendonça A, Bruining H, Reinhart CK, Suter PM, Thijs LG. The SOFA (Sepsis-related Organ Failure Assessment) score to describe organ dysfunction/failure. On behalf of the Working Group on Sepsis-Related Problems of the European Society of Intensive Care Medicine. Intensive Care Med. 1996 Jul;22(7):707-10. PMID: 8844239.
↑ SOFAスコアの元論文です。ここまで読んじゃえばあなたもSOFAマスター(オタク!?)といえます。

Raith EP, Udy AA, Bailey M, McGloughlin S, MacIsaac C, Bellomo R, Pilcher DV; Australian and New Zealand Intensive Care Society (ANZICS) Centre for Outcomes and Resource Evaluation (CORE). Prognostic Accuracy of the SOFA Score, SIRS Criteria, and qSOFA Score for In-Hospital Mortality Among Adults With Suspected Infection Admitted to the Intensive Care Unit. JAMA. 2017 Jan 17;317(3):290-300.  PMID: 28114553.
↑ 重症度のグラフで提示したJAMAの論文です。非常に多く引用されています。

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