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"4" 意識の評価 「GCSとJCS」つづき


GCSとJCSについて 今回はJCS

 前回の項でGCSの特徴について概説しましたが、今回はJCSです。GCSはEやVやMに分かれていてちょっと複雑でした。それに比べてJCSはややシンプルです。
 1桁 開眼あり(覚醒している)
 2桁 呼びかけや刺激で開眼あり(覚醒する)
 3桁 刺激でも開眼しない(覚醒しない)

大雑把に言うとこんな感じです。
 なのでざっくりと「意識1桁です」といえば「あ〜、覚醒はしているんだな」とか、「意識3桁です!!」と言えば「えっ、昏睡状態か?やばいかも」なんてふうに一言で状況を伝えることができます。
 なので私は当直中などに脳外科の先生にPHSで患者さんの状況を伝えるときは、GCSよりJCSで伝えることが多いです。
 ×「先生、レベルがE2V3M5から、E1V2M4に落ちました」って真夜中にパッとPHSの電話口で言われてもすぐに判断できないですよね。「えっつ?なになに?もう一回言って!」ってなっちゃいます。。
 ◯「58歳男性、レベル2から100に低下、瞳孔も5/2でアニソコ出てます」
って言えば、もう脳外科の先生は「緊急手術だー!」ってなります。
 (私は脳外科の先生には年齢性別、JCS、瞳孔、抗凝固薬の有無は必ず伝えます
 GCSは詳細がわかるのですが、電話口などではすぐに伝わりづらいのです。救急隊とのやりとりや電話口などではJCS便利です。

Japan Coma Scale(JCS)

JCSです。 レベルクリアのことをよく「JCS 0」とも表現します。

JCSの特徴

 1桁、2桁、3桁でそれぞれ3つに分かれています。数字が大きくなるほど重症なのはわかりますね。そういう感じでJCSは直感的に判断できます。
 またJCS 0(ゼロ)というと、意識清明クリアになり、また「なんとなくちょっとぼーっとしているな」っているJCS1というのがあります(これはGCSにはないいスコアで、GCSで表現しようとしてもE4V5M6で異常なしになってしまいます)。このJCS1も決して無視できず、外傷患者ではJCS1でも約10%程度に頭部CTで異常があったなんて報告もあります(Ono K, et al. Neurol Med Chir. 2007 Jul;47(7):291-7; discussion 297-8.PMID: 17652914)。

JCS 1>2>3

 GCSを学んだ時に「見当識」というものを勉強しましたね。見当識とは時、場所、ヒトを認識する能力(ヒトは他人を認識する能力)で、自分以外の周りの環境を認識する能力でした。だから自分の名前とか生年月日は、見当識障害があっても言うことはできます。自分に関する情報は最後の最後まで残るんです
 通常、意識障害はだんだん順番に自分の周りから障害されてきます。すなわち周りがなんとなくぼやけている(=JCS1)→ 自分の周りのことが分からなくなる(=見当識障害 JCS2)→自分のことも分からなくなる(= JCS3)というようにどんどん周りから障害されてくる様子がJCS 1→2→3と数字で表現されていきます。

JCSとGCSを一致させよう!

 看護記録などを見ているとJCSとGCSの両方書いてあることがあって、これは素晴らしいのですが、このスコアが一致していないことがあります。そうするとあれ結局どっちが正しいの?ってなってしまいますので、記録上はJCSとGCSは必ず一致させる必要があります

JCSとGCSの一致表です(めちゃ重要!!)(並木ら. 日臨救医誌JJSEM 2007;10:20-5)

 この表はJCSとGCSのスコアを対比させた一覧表です。素晴らしい図表です(ぜひ元論文ご参照ください)。
 例えばさっきの例のように見当識が保たれているJCS 1はV5、見当識が障害されたJCS 2はV4というのは分かりますね。
 呼びかけで開眼するJCS 10はE3、痛み刺激で開眼するJCS 30はE2なんていうのも覚えておくポイントです。
 あと、とっても間違いが多いのでここはもう暗記しちゃって欲しいのですが、JCS 100 = E1V1M5(痛み刺激の場所に手が届く)です。それでGCS的に結構多いE1V1M4(手足を動かすが、刺激部位に手は届かない)= JCS 200になるので、これは覚えておいてください。

Today's note

・電話口でのやりとりはGCSよりJCSの方がベター

・「なんとなくぼーっとしている」JCS1も無視できない

・見当識(= 自分以外の周りの環境情報)が障害されるとJCS2、自分のことも分からなくなってしまったらJCS3

・E1V1M5 = JCS 100、E1V1M4 = JCS200 これは覚える

(参考文献)

↑ 本文の詳細はこちらにも書いてありますのでぜひお手にとってみてください。たくさんのナースより「分かりやすかったです、ありがとうございます」メッセージ届いています。

また当noteに関するご質問や勉強会へのお誘いもいつでもお待ちしております。ICUナースの「こんな質問来ていた」シリーズもいつかやりたいですね。

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