インド学術世界でいま何が起こっているのか?

2022年10月、インド政府の科学技術庁は他省庁と協力し、インド北部にある都市のある大学で、4日間にわたる会議「Akash For Life」を開催すると発表した。「アカシュ」(Akash、空)とは、ヒンディー語では「空」あるいは「精神(spirit)」を意味し、ヒンドゥー教に基づく5つの普遍的な要素(pancha bhoota, パンチャ ブータ、五大要素)のひとつを指すものである。主催者によれば、今回の学術会議は、インドの伝統的なヒンドゥー教の形而上学的な概念を21世紀のインドの学問に導入し、そうすることで「現代科学の進歩とともに古代科学の知恵を国の若者に理解してもらう」狙いがある。

このイベントが発表されると、インドの学界や研究者から激しい反発があった。India March for Science という科学を普及させるNPO団体が声明を発表し、「私たちはパンチャブータという概念を全面的に否定します。空、大地、水は元素ではない。このような考え方は、大昔に科学の分野から取り消されています。」と述べた。

上記の事例は、疑似科学の支持者たちが、近年、インドの学会で繰り広げている打撃の一例にすぎない。インドの学者は、こうした陰謀論や虚偽が横行する学会の現状を懸念している。なぜなら、このような言説はこの数年においてますます加速し、次世代の科学者を育てる教育機関にも広がってきたからである。

専門家は、インドにおけるこうした疑似科学の台頭を、ナレンドラ・モディ首相の指導で2014年に当選し政権を握った右派政党バラティヤ・ジャナタ党(BJP)と関係していると指摘している。それは、この数年においてバラティヤ・ジャナタ党の指導者らは「牛の尿で癌の治療ができる」「古代インド人がインターネットを発明した」など度々不科学的な主張をしてきたことから明らかである。

このような主張はしばしば、インドの伝統的な知識が現代科学よりも優れていると誇示し、その証拠としてヒンドゥー教の経典・文献が取り上げられた。問題は、こうした主張は、近年、学術界にまで飛び火してきたのである。

例えば、2019年に当時アーンドラ大学(Andhra University)の学長は、ヒンドゥー教の叙事詩である『マハーバーラタ』に登場するカウラヴァ族(Kauravas)は「幹細胞と試験管技術」によって生まれたと述べたとして有名である。この間、インド工科大学マンディ校(IIT, Mandi)の学長が、聖なるお経を使って悪魔払いをしたと主張し、その体験について新聞記者に尋ねられたところ「もちろん、幽霊は存在します。Ghosts exist, yes.」とさえ答えた。

実は、こうした非科学的な言説は、今の政権を支持する少ないでありながら大学や研究機関の研究者にも信奉され、少しずつ学校や大学のシラバスなどにも導入されつつある。

2020年、インド工科大学・インドール校(IIT, Indore)は、サンスクリット語の古代文献をもとにした数学、科学の知識を学ぶ授業を開講した。2023年2月に、インドのエリート大学の一つであるインド工科大学・カーンプル校(IIT, Kanpur)は、インド系アメリカ人であるラジブ・マルホトラをゲストとして招いて講義を開いた。マルホトラは、数年前にギリシャ文明の存在そのものを否定し、ヒンズー教の神シヴァに関連づけられる宗教概念「第三の目」(third eye)が、医学診断を代用できると主張した人物である。

その一方で、インド国内の高等教育を管理するための法定機関である大学助成委員会(UGC)は、国内のすべての大学に対し、ヒンドゥー教で神聖視される牛に関する研究を指す「gau vigyan」(牛の科学)に関する全国レベルの試験を受験するよう「奨励」するよう求めた。この試験のシラバスには、牛の屠殺によって地震が起こることや、牛の副産物によってあらゆる病気を治すことができるなどが書かれていたとして世界中から注目された。 

インドの高等教育・研究機関は、研究費など様々な面で国に頼らなければならない。一部の例外を除くと、ほとんどすべての教育・研究機関が、政府からの資金援助に依存し、そのため政府の介入に対して脆弱な立場に置かれている。政府のこうした非科学的な介入、あるいはヒンドゥー・ナショナリズムの台頭に対し、反対する学生や学者もいるものの、研究費や昇進などのために口をつぐむ学者の数が圧倒的に多い。

2023年4月に、インド政府の高等教育管理当局は、ダーウィンの生物進化論を高校の教科書から外すことと発表したことが、インドのみならず世界中でニュースとなった。この判断に対して、世界中から1,800人以上の科学者・教育者が非難する書簡に署名し、「教育の茶番だ(travesty of education)」と述べた。

今、インドの学者たちは、このような似非科学的な風潮が国際的な学界におけるインドの評判に与える影響を心配している。

(追記:この記事は下記の参考文献を参照にし、自動翻訳ツールを利用して日本語訳しつつ大幅に書き換えたものである。詳細は引用先をご参照ください。)
参考文献: https://undark.org/2023/07/26/amid-indian-nationalism-pseudoscience-seeps-into-academia/


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