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いちばんすきなはな

子供の頃花に囲まれて育った

「いちばんすきなはなはなんや?」
ばーちゃんがわたしによくきいてきた。

「すいせん。すいせんがすきや。白と黄色の小さいはなのやつ。においがすきや」

「いちばんすきなはなはなんや?」

「あじさい。あじさいがすきや。うすいみずいろの。おっきいでんでん虫がいつもおるからすきや」

「いちばんすきなはなはなんや?」

「ぼたん。ぼたんがすきや。
おばあちゃんの育てるぼたんはどこの家のぼたんよりもでっかくて、花びらが多くてすきや」

「いちばんすきなはなはなんや?」

「ひまわり。ひまわりがすきや。背がおっきくて首が曲がってて、こっち向いてくれとるみたいですきや」

わたしにはいちばんすきなはながいっぱいあった。

ばーちゃんと離れて暮らすようになって
わたしに「すきなはなは?」ときくひとがいなくなった。

わたしは自分がすきなはなはなにかと考えることもなくなってしまっていた。


くりえ。


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