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ごりまる母さんメラピークへ④(全10話)


さようなら、ジョン

昨晩の話し合いの後、ジョンが「もう僕には必要ないから...」と頭痛薬などの薬品類やナッツ類などの非常食を皆に分けてくれました。
そして、ジョンが購入し携行していたGARMIN の inReach (携帯電話の電波が届かない場所からでも衛星通信によってテキストメッセージのやり取りやGPS機能が使えるというもの)はジョンに代わってロブが引き継ぐことになりました。

救助ヘリの誘導をするパサン
ジョンを乗せ離陸直前のヘリコプター

8年前。
私自身がジョンと同じように、初めてのネパールトレッキング2日目で怪我をし、同じようにヘリコプターで搬送された日の情景を重ね合わせていました。
ヘリコプターに乗った瞬間の心情やヘリコプターから見た通り過ぎてゆく山々の風景が走馬灯のように私の心に映し出されていきました。
ジョンの心境はどうであったのか...それは彼自身にしかわからないことですが、ヘリコプターが離陸した瞬間、涙がとめどなく溢れてきました。

Day 5 : Najing Dingma - Cholem

[歩行距離] 6. 92km
[歩行時間] 7時間18分
[Cholem 標高]3.160m
[獲得標高] 1.050m

ジョンなしでも私たちはメラピークへ向かって、歩を進めなければなりません。
気持ちの切り替えが難しかったのは、皆同じだったと思います。
しばらくは誰一人として口は開かず、それぞれ1人ずつ様々な思いを抱きながら、ただもくもくと歩き続けました。

これまでの道のり
Kharikholaから歩き始め、Pangom- Sibujeを通過し
Najing Dingma(この地図には地名が無掲載となっていました)そしてCholemへ

とりたてほやほやのキャベツと人参に癒されて

お昼ごはん休憩
すぐ横の畑から収穫された新鮮な野菜を使って
チャーハンを作ってくれました
なんと贅沢で幸せなことか…感謝です

昼食を作ってもらっている間、少し辺りの散策に出かけてみました。
のどかな風景の中に身を置いてみて1番感じたことは、時間の流れがものすごくゆったりとしている事でした。
ゆったり時間が過ぎていく環境が、心のゆとりを生みだしてくれ、いつも以上に人に対しても優しさと思いやりを持って接することができるということに気づかされました。

この手作り感がなんとも素晴らしい
山の風景と一体化している標識
とうもろこしの実を天日干し中
これは君たち、食べたらいかんやつちゃう?
叱られそうな予感…

何回通っても慣れない怖い吊り橋

吊り橋の上でAndyと
心なしか怖さのためへっぴり腰の私

ネパールでのトレッキング経験がある方は、このような吊り橋を何度か渡ったことがあるのではないでしょうか?
見たからに頑丈なつくりの鉄橋です。
大丈夫だと思っていても、「どっかネジが緩んでたり、錆びておったりしたら...」と小心者の私は最悪の出来事を想像し始めます。
橋の上ではなるべく止まらず、下は見ないように目はただただ前方を見て歩くことを心がけてはいるものの、チラッとでも下を覗くと足元の鉄橋の隙間からは遥か下にある大きな岩が。
その大岩に物凄い勢いで上流から流れてくる川の水がバーッんとぶつかり、ザッバーンとものすごい音で水しぶきをあげているのが見えます。
もうそうなると橋を一刻も早く渡り終えたい!という一心で早歩きになり、そうする事で橋が揺れ出し、また焦る…の悪循環に陥ってしまいます。
「遊園地かなんかのアトラクションの1つや思って渡ろ」
「小さい頃、祖谷のかずら橋、最後まで渡れたしな」と無理矢理自分に言い聞かせるとほんの少しだけ、気休め程度ですが怖さが薄れていくのを感じました。

Day 6 : Cholem - Khola Kharka

[歩行距離] 6.39km
[歩行時間] 7時間37分
[Khola Kharka 標高]3.600m
[獲得標高] 998m

周りの景色を愛でる余裕もなく
長い登りが続きます
羊の多さで有名なウェールズから来た私でも
この羊たちの群れは圧巻でした
子羊が前足を石畳の間と間に挟んでしまって…
なぜかKenを見ていると、俳優の田村正和さんを思い浮かべてしまう
どこかしら彼の持っている雰囲気が似ているような…
Panch Pokhari 
標高4330mにあるヒンズー教の聖湖
ヒンズー教徒の巡礼地の1つであり、特別な空間であることが肌で感じられます
CholemからKhola Kharkaへの道のりにPanch Pokhari湖があります
今晩お世話になるロッジ
見渡す限り家はこの1軒しかなく、すべてがお伽話に出てくるようなロケーションでした
ロッジに無事到着
ホッとする瞬間
外壁に乾燥のためにキッチリと並ぶヤクのフン
ストーブや料理に使う貴重な火の燃料となります
日も沈み、冷え込んできたところで竹籠に入っている
ヤクの乾燥糞を使ってストーブに火を熾します

まとめ

いろんな事が起こりながらも、皆で臨機応変に対応しながら気持ちを前向きに持ち続けていました。
これから進んでいく中で、またしても私たちの前に対処しなければならない事が立ちはだかります。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。