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研究責任者の責務について

著者:江花有亮
査読者:武井陽子
2023年5月23日Ver1.0

ここ数年、臨床研究法の施行や医学系指針とゲノム指針の統合など、医学系研究・臨床研究を実施する環境は、社会情勢に合わせ日々変化しています。その中で大きな変換点の一つが、医学系研究・臨床研究における主体性が研究責任者へ渡されているということが挙げられます。機関の長にはもちろん監督および体制整備の責務はありますが、研究の実施や倫理審査の依頼などの中核的な行為に関しては研究責任者に大きな裁量が認められています。このことにより、研究者は高い自由度をもって研究に取り組める反面、法令・指針への適合性についても注意義務が生じます。

その最たる例として、現行の臨床研究法および倫理指針のもと実施する多機関共同研究は原則として一括審査を受けることとなっています。審査依頼の主体はこれまでは「研究機関の長」でしたので、倫理申請をしたのちは実施許可まで半自動的に進みました。ところが研究実施のみならず審査依頼の主体が「研究責任者」に替わったことで、研究計画の取りまとめだけでなく、倫理審査依頼、機関の長の許可申請など、それぞれの経過の中で必要な行為が生じています。また、一括審査になる、ということは他の機関の運用にも適合するように研究計画を策定する必要があり、これまで以上に配慮が必要となります。

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その他にも研究責任者には法令・指針および自身が作成した研究計画書から逸脱することなく、公正な研究を実施するためには法令・指針を知悉している必要があります。一方で冒頭でも述べたように、臨床研究法も倫理指針も数年おきに見直され、改正が加えられています。

 研究を実施するということは、通常の診療行為を超えた医療行為を実施や、診療・業務目的ではなく個人情報を閲覧・収集することになります。診療であれば手厚いサポートの中で実施できても、研究では同様の人的資源・システムが使えるとは限りません。研究者は変化に合わせて、正しい情報・知識をアップデートすることが求められています。
 


 

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