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そのちょうちょ

そのちょうちょは
ひらひらと とんでいる

どこにいくでもなく
どこからきたでもなく

ただ ひらひらと とんでいる

ちょうちょは もうずっと
ながいこと とびつづけてきた

ずっと ずっと
ひらひら ひらひら

ちょうちょによっては
うみをわたるほど
とびつづけるのもいるらしい

そのちょうちょは
まかふしぎ なぞにみちている

きょりだけでなく じかんも
ゆうにとびこえるらしい

ひらひら ひらひら

たしかにとんでいる
とびつづけている

そのちょうは よくみると
たいへんうつくしい

どこにもない うつくしいもよう
ただそれは よくみたらだ

よくみないひともおおい
そのそんざいすら
きづきもしないひともおおい

そのちょうちょを
たやすくつかまえる
ことができるひともいる

なにをどうがんばっても
いっしょう つかまえられない
そんなひともおおいという

あるひ あるおとこが
そのちょうちょを つかまえた

なんとなく めにとまって
なんとなく つかまえて

そのおとこはなにもきにしない
いつものように
なんとなく はらがへったから

ただ めのまえの
そのちょうちょを たべた

じゃまなはね あたまは
ちぎって やらかいとこだけ

なにもきにしなくたべた

むしられたはね
みるひとによっては
えもいわれぬ うつくしい はね
にどと とりもどせない はね

むぞうさに
ただ はらがへっただけの
そのおとこの くうふくを 
すこしみたしただけ

えもいわれぬはねは
ただのざんがいとなり
あたまはすてられた

ちょうちょの
たべられるぶぶんなんて
たかがしれている

そのおとこのはらをみたすなら

いったいなんびきの
ちょうちょが いるのだろう

いったいなんびき たべたら
みたされるのだろう

そのちょうちょは
ひとのこころがわかるらしい

そのちょうちょが
そのおとこにたべられた

にどともどらない

だがけっかだけみれば

そのおとこにたべられる
それをえらんだのも また
そのちょうちょ なんだろう

そのちょうちょが
なにをおもって

そのちょうちょが
なぜたべられたのか

だれにも わからない
わかるのは しっているのは
そのちょうちょだけ

そのおとこは
またつぎのちょうちょをさがす

おのれのはらをみたすため



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