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価値ある意味をデザインする

こんにちは。

2020年4月より
武蔵野美術大学 大学院 造形構想研究科 造形構想専攻クリエイティブリーダシップコースに通っています。

私の学科では「クリエイティブリーダーシップ持論」という授業があり、
毎週クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師をお招きし、お話を伺います。

あくまで講義のレポートではありますが、デザイン思考などを学び、実践している方々との繋がりや、情報の共有が少しでもできれば嬉しいなと思います。

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第7回【講義日】2020年6月29日(月)


今回は株式会社インフォバーン 取締役 京都支社長の
井登友一(いのぼり ゆういち)さんに
お話を伺いました。

日本でのUXリサーチの先駆者であり、ここ数年はミラノ工科大学のロベルト・ベルガンティ教授の提唱する意味のイノベーションを研究する研究会を主催されています。


株式会社インフォバーンでは、デザインリサーチの分野で実践をされており、
デザインによって企業のイノベーションを支援などをされています。

井登 友一(いのぼり ゆういち)
株式会社インフォバーン 取締役 京都支社長/IDL部門 部門長
日本プロジェクトマネジメント協会認定 プロジェクトマネジメントスペシャリスト 人間中心設計推進機構 評議委員 認定人間中心設計スペシャリスト
2000年代
初頭にデザインリサーチの専門部署立ち上げに参画し、プロジェクト現場にて定性的なユーザーインサイトを起点とした「ユーザー中心発想」によるコミュニケーションデザインと、Webサイトの企画・プロデュース・ 設計に従事。
大手住宅メーカー、ウェディングプロデュース企業、大手製薬企業など、数多くの企業のマーケティングコミュニケーションを支援。
2011年
株式会社インフォバーン入社。京都支社の立ち上げを担当し責任者を務める。
同年 執行役員京都支社長に就任。
2014年
7月 取締役執行役員に就任。現在に至る。

また、今年度から京都大学 経営管理大学院 博士課程に通われているというエネルギッシュさ。
研究テーマは「イノベーション創出におけるエステティックの研究
批判精神(こだわり)がもたらす意味的価値の理解」とのことでした。こちらのお話も是非沢山お聞きしたいです…!


連続的な価値を作るデザイン → 撹乱的な価値を生み出し未来を作るデザイン

今までの「連続的な価値を作るデザイン(今あるものを進化させる)」から「撹乱的な価値を生み出し未来を作るデザイン(今無いものを作り出す)」事が重要になっていると示されていました。

それは大体のモノやサービスは、さほど酷くなくなった事が大きな原因です。
少しの違いに2倍の値段を払うかという、ラグジュアリーの価値が問われています。

そんな中で生き残る重要な鍵として、経験に価値を見出す事と示してくださりました。


経験経済

経験経済
「世の中は贅沢になってきているから、意味のある経験を与えてくれる製品、ブランドしか生き残らない」B.J パインⅡ・J・H・ギルモア

最近はモノ消費からコト消費へとシフトしていると良く言われます。
どういうことかを、段階別に表すと以下の通りだそう。

コモディティ(コストによる差別化)→製品(機能による差別化)→サービス(感情による差別化)→経験(意味による差別化)→ 変身

モノそのものに価値を見出すのではなく、自分自身を上級にしてくれるモノにお金を払う様に変化しています。インスタグラムなども顕著な例です。

良質な経験とは、快適で心地よく便利に、ユーザーのやりたかった様にデザインしてあげることだけではなく、状況や立場と文脈の変化までも考えることが必要だと示されていました。

そこで「不便益」(不便でよかったこと)について、お寿司の名店「すきやばし次郎」での経験を例にご説明くださりました。

井登さんが初めて寿司屋の「すきばやし次郎」に初めて行った時のお話です。
ランチでも26,000円ほどする名店です。なかなかお高い値段を払っているにも関わらず、ほぐれるからすぐ食べろと言われるし、大将は無愛想で怖く、終始緊張していたそう。お店を出た瞬間ホッと開放感で溢れたと同時に作法が分からないことに緊張し、挑んでいくことで自分の成長を感じ、「次いつ行けるか」と考えてしまったそう。

一般的に見ると良いサービスとはいえませんが、極端に言うと「客を脅す」様なサービスが、自分を変身させてくれる価値のあるサービスとして成立していると言えます。

不便益
「便利の押し付けが人から生活する事や成長することを奪ってはいけない」
ー不便益システム研究所ー


 このお話を聞いて、アパレルブランドのsupuremeの存在を思い出しました。
supuremeは世界的な人気メンズアパレルブランドです。ジャスティン・ビーバーなど多くのハリウッドスターが愛用しています。新作発売日には店の前に大行列ができ、ネットでは定価の何倍もの値段で取引されるほどです。
寿司屋の例と同じく、無愛想な接客で有名です。今時アパレル店員は常に笑顔、お客様第一!という方針が多い中、・常連さんしかちゃんと接客してくれない・笑顔でいらっしゃいませと言ってくれない などかなり強気の接客を耳にします(全て本当かは分かりませんが…)。
ですが、そんな中ちゃんと接客をしてくれた時の特別感は堪らなく嬉しいそう。この全てを迎合しない接客が、supremeに相応しい人への「変身」の欲求を満たしてくれるものとして作用しているのだと理解しました。

これらのことから人が欲する良質な体験とは苦労さえもデザインされているもの ということが言えます。



これからのデザインに求められること

以上のことからこれからの製品サービスには
・問題解決する → 新たな問いを提供する 
ことが重要だと示されていました。

また、デザインは贈り物であり、愛することへの意味の提案であるということも述べられていました。 

Design is Amore(デザインとは愛である)
Rベルガンディ

デザインの中にも母性愛的なデザイン父性愛的なデザインがあるそうです。
これからは父性愛的なデザインが必要だそう。
父性愛的なデザインとは、父が息子に与える愛の様なもので「あなたは聞き入れてくれないかもしれない、うざいかもしれない、でも30年後のあなたにとって絶対いい確信がある。こうなって欲しいという道はこれなんだ。」と、顧客に対して責任を持って新しいデザインを提案する事とのこと。


まとめ

今回井登さんのお話を聞いて、世の中が求める製品の価値が経験へシフトしていることを分かりやすく整理していただき、改めてデザインへのニーズの変化を実感しました。
また、不便益がサービスの価値へ繫るという点は非常に学びとなりしました。
自分自身、部活動で必死に練習して習得した技や、沢山勉強して合格したこと、限定品をわざわざ遠くまで買いに行った時など、簡単に手に入るものより、努力して得た物の方が、確かに強い印象が残っています。
デザインをする上でこれから特に重要な点は、どう意味付けるか、それをどう伝えるかが重要だと感じました。その人にとって価値のあるストーリーを描き提案していくことと、早い段階でのプロトタイピングを実施を繰り返すことが重要だと感じました。


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