伝統を今に、そして未来に

こんにちは。

2020年4月より
武蔵野美術大学 大学院 造形構想研究科 造形構想専攻クリエイティブリーダシップコースに通っています。

私の学科では「クリエイティブリーダーシップ持論」という授業があり、
毎週クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師をお招きし、お話を伺います。

あくまで講義のレポートではありますが、デザイン思考などを学び、実践している方々との繋がりや、情報の共有が少しでもできれば嬉しいなと思います。

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第12回【講義日】2020年8月03日(月)

secca inc. (株式会社 雪花) 代表取締役の上町達也(うえまち たつや)さんです。

上町達也:金沢美術工芸大学卒業。カメラメーカーのデザイン部を経て、「secca inc.(株式会社雪花)」を設立。
引用:ローカルベンチャー最前線:secca inc. 上町達也さん・柳井友一さん(前編)

secca

seccaは、昔から多くの工芸が育まれてきた石川県金沢市で、プロダクトデザイナーの上町達也さんと柳井友一さんが率いるクリエイター集団です。彼らが手がけているのは、最先端のデジタル技術と工芸のアナログ技術を掛け合わせた、オリジナルプロダクト。“工芸のまち”金沢から発信を続けていらっしゃいます。

HPに掲載されているseccaさんのストーリーが非常に魅力が詰まっていました。

A story of secca
そう、たとえば。河原に落ちている石ころを、
愛する人から手渡されたら、
それは他の石ころよりも大切なものになる。
子どもが自分のために描いてくれた絵は、
どんな有名なアーティストの絵よりも、
心を動かすものになる。
わたしたちは思う。
「もの」の価値は、手にした人が心を動かされた
瞬間に生まれる、と。
伝統工芸から最新のテクノロジーまで、
様々な技能を持つ「職人」。
考え抜かれた美しさを創り出す「アーティスト」。
過去の歴史から学び、未来へと求められるカタチに、
アップデートする「デザイナー」。
食と工芸の街、金沢を拠点に、
さまざまな視点からそれぞれの長所を活かし、
ものづくりをするクリエイター集団。雪花
引用:seccaホームページ

外の様々なジャンルのクリエイターとの掛け合わせによって。新しいものを想像する。プロフェッショナルと、「一緒に」制作を行い本当に価値あるものを打ち出していく「secca、と、」という考え方を述べられていました。

プロダクトからHP、そしてものづくりへの姿勢。どれもこれもが美しい。
「洗練されている」という言葉がぴったりだと感じました。


最高の食体験を

上町さんは、金沢美術工芸大学製品デザイン学科を卒業。学生時代を金沢で過ごし、就職を機に上京。カメラメーカーのインハウスデザイナーとして活躍されてきましたが、働いていく中で、ものづくりの本質が抜け落ちた、売るためだけのデザインに違和感を感じ、「消費サイクルの早い今の時代に、もっと長く愛されるモノやコトを生み出したい」と金沢へ戻られました。
器を通じて素晴らしい食体験をデザインしたいと構想されたそう。

そのために、食材を知るべく農業を実際に農家の元で学んだそう。それだけに留まらず、なんと料理人の元へ弟子入りし、難易度の高い独自のハヤシライス店を開店まで。素材や製法にもかなりこだわったそうです。
「素材や料理の事が分からない人にいい器、いい食体験なんてデザインできる訳が無いと思ったんです。」と述べられていました。いかに本気で臨まれているかが伺えます。もう、、かっこいいです。

その本気度はseccaのデザインに如実に現れています。
食器と料理は建築と大地の関係と似てると仰っていました。建物を建てるときは、その土地に合った建物を建てる。その様に料理を盛り付けるとき、器を大地の起伏と捉えて、シェフが器のどの場所を選んでどう盛り付けるのか。というコラボレーションが一つのテーマにしているそう。
波打つテクスチャーや、なんとも言えない丸みを帯びた美しいフォルムの器達は食材を生かす最高の舞台となります。そして盛り付けられた瞬間に作品は完成します。料理と器と共鳴し合う事で最高の作品が完成していました。
料理によって毎回違う表情を見せてくれる姿に、思わずうっとりしてしまいました。

伝統と先端技術

上町さんは伝統と先端技術をかけあわせ、器だけではなくホテルのエントランスのオブジェ、陶器や楽器に至るまで幅広く様々な領域で伝統と先端技術をかけあわせ、幅広くデザインを行っています。
その中の「白山喜雨(はくさんきう)」についてご紹介いただきました。金沢のホテル、アゴーラ・金沢にあるオブジェです。
ホテルコンセプトの「茶庭」から、茶を支える水の源泉である白山に着目されたそうです。石川、福井、岐阜の3 県にわたり高くそびえる白山は古くから霊山信仰の聖地として仰がれてきました。金沢の人からは生活に不可欠な“ 命の水” を供給してくれる神々の座であるともいえます。白山に降り注ぐ春の雨の恵みと、潤い輝く山肌を表現しているそうです。
また、驚くのが制作のフローです。
白山の地形データから高低差の情報を抽出し
3 1 3 6 個の金彩を施した花坂陶石にて形状を再現しているそう。まさに先端技術を駆使された作品であり、ここにも上町さんの本気度が伺えます。



まとめ

上町さんの何事にも本気で向き合う姿勢が非常に印象的でした。
デザインの表層を拾うのではなく、その隋まで理解した上でデザインに取り掛かる。だからこそ、ここまで洗練されたデザインが出来上がるのだと実感しました。上町さんのプロダクトは、尖ったニーズを満たし、濃い要求に濃厚に関わっていくインパクトのある物作りは根強いファンを産むだろうと感じました。
薄っぺらく広い量産で、ニーズを平均化した一つのプロダクトを全世界の人があまねく使っている状況ではなく、この様にある意味分担していくことがこれからは価値のあるデザインではないかと感じました。洗練されたものを生むためには、相反して泥臭い執念の様なものから生まれるのだと、非常に大きな学びとなりました。

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