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はみ出す魅力 人の力

こんにちは。

2020年4月より
武蔵野美術大学 大学院 造形構想研究科 造形構想専攻クリエイティブリーダシップコースに通っています。

私の学科では「クリエイティブリーダーシップ持論」という授業があり、
毎週クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師をお招きし、お話を伺います。

あくまで講義のレポートではありますが、デザイン思考などを学び、実践している方々との繋がりや、情報の共有が少しでもできれば嬉しいなと思います。

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第8回【講義日】2020年7月6日(月)


今回は上野のアメ横で呑める魚屋「魚草」の代表
大橋磨州(おおはし ましゅう)さんに
お話を伺いました。

東大文化人類学研究所で民俗芸能を学ばれていましたが、
アメ横に魅了され中退。
アメ横の魚屋で数年働いた後、ご自身のお店の「魚草」を開店。
経歴を聞いただけでドッキリしてしまうような方でした。

アメ横の路上解放区、呑める魚屋・魚草です。
卸問屋様、生産者様のご協力のもと、
当店が扱う厳選食材を惜しみなくお届けします。
さあご自宅を「魚草」に。
引用:魚草ホームページより

なんと食べログでは3.57...!
お酒好きの私は、すぐにでも訪れたくなってしまいました…!


「飲める魚屋」

今までにない「飲める魚屋」という新しいジャンルを築きあげた大橋さん。
アメ横の商売は全てがハッタリでできていて、魚は捌けない人がほとんど。わざわざ捌いたり刺身などにせず、とにかく山盛りにして一皿千円で売る。
捌く技術はそもそも必要じゃない。
周りの仲間が気づいたら退職していることも日常茶飯事。
皆が仕事中ポカリスエットのペットボトルに焼酎を入れて飲んでいるような、行き場を失って流れ着いた人々でできた街だったそうです。

 上野自体も寛永寺のお膝元で開けた街であり、当時はここから先は江戸ではないという場所で、江戸の辺境と呼ばれていました。
吉原も近く、いわゆる 怪しげな街 のポジションだったかと思います。

そんな街で魚草を営まれる大橋さん。
なぜ、こんなにも上野に惚れ込んだのか、そしてこれからのビジョンは。それらを講演のまとめを通してお伝えできれば嬉しいです。



惹かれるもの

まずそもそも、東大大学院に通っていて、アメ横に惹かれて中退してお店を経営されているってどういうことなんだろう…。率直にそう思いました。
ただ、今回の公演を聞いて、大橋さんが惹かれるものは一貫しているんだということを非常に感じました。

元々演劇をやられていて、その繋がりで民俗芸能にはまったそう。
民俗芸能の中でも、秋田県西馬内盆踊り を見たときに魅了されたそうです。大学の演劇では50人も埋められないのに、6000人しかいない街に15万人押し寄せてた様子を見て、これはなんだ!と思ったそう。
頭巾を取れば無名の人たちが無名のまま観客を惹きつけるなんて!と心打たれ、そこから民俗芸能の虜になり、大学院で専門的に学ぶ道を選ばれたそうです。
顔が見えないからこそ身体の動き、纏うものに目が行きますし、ミステリアスで、妖艶で美しい。
ファッションの分野で働いている私としてはとても興味深いものでした。
https://www.youtube.com/watch?v=JiAyD3IFQRM


アメ横へ

 その後学んでいると、学ぶだけではなく、フィールドに出たくなったそう。
その後、大学院を中退。正直で、勢いがあって素晴らしい人生です。

 大学院中退後、上野の魚屋にとりあえず行ったそう。
その日に雇ってくれ、店先で怒鳴って来いと言われた大橋さんは、ベテランぶって思いっきりやると、次々に人が押し寄せ、秋田で見た祭りのような光景がここにあったと思った感動したそうです
 普通の祭はコミュニティがある上で成り立つにも関わらず、アメ横では初日に最前線に立てた。知識があろうがなかろうがフリをしてそれだけでその場に立てる。
他の人もそうで、分からず「うまいから、安いから持ってけ」と叫んでいるその仕組みに衝撃を受けたそうです。
無名の人たちが無名のまま観客を惹きつける 秋田県西馬内盆踊りと同じ感動が、上野アメ横にも存在したというわけです。


遊び場の様なお魚屋さん

 その後大橋さんは築地でご自身のお店を出店されます。
アメ横は元々築地のゴミ箱とまで言われてしまうように、倒産しそうな魚屋から名の無い魚を買っていた場所でした。大橋さんはそういう形でしか産地と向き合ってこなかったこの問題に向き合い、生産者の力になれるような形で携わりたいという思いのもと動き出します。

「呑める魚屋」をコンセプトに、牡蠣を一個単位で販売し気軽な値段での提供や、アーティストを巻き込んで、お店のためにBGMや装飾などを作ってもらったり、ゲリラコンサートを行うなど、魚屋の枠では治りきらない様なことにトライしながら試行錯誤を重ねておられました。
特に魚草のメニューの1部が非常に興味深い物でした。
刺盛り3点+酒・・・1,000円
生かき2P +酒・・・1,000円
音楽+酒・・・1,000円
音楽のメニューを選ぶとある部屋に案内され、そこでアーティストが作ってくださった曲を聴きながらお酒が飲めるそうです。まるでテーマパークの様なお店づくりですよね。
 お魚やお酒を味わうだけではなく、人と人との繋がりを感じるユーモアあふれた暖かい店づくりは、店に来る意味が創出され、大橋さんの素敵なお人柄が現れていると感じました。


はみ出す魅力 人の力

大橋さんのお話を伺う中で、人が織りなす価値の重要性を感じました。
人は人の中でしか生きられません。そして人の居場所というのは一朝一夕にできる物ではなく、深い歴史や文化の上に成り立ちます。
テクノロジーの発達とコロナウイルスにより、オンライン化が進む一方ですが
だからこそ、人と人の繋がりの重要性がより増してきていると感じます。
だからこそ、「なぜやらなければならないのか」「なぜここに来るのか」を今までの深い歴史と文化を踏まえながら、リデザインを続け、どう価値を積み上げられるかを考えていくことが重要だと学びました。


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