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デジタルに包まれていくオフライン

2020年4月より
武蔵野美術大学 大学院 造形構想研究科 造形構想専攻クリエイティブリーダシップコースに通っています。

私の学科では「クリエイティブリーダーシップ持論」という授業があり、
毎週クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師をお招きし、お話を伺います。

あくまで講義のレポートではありますが、デザイン思考などを学び、実践している方々との繋がりや、情報の共有が少しでもできれば嬉しいなと思います。

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第13回【講義日】2020年8月10日(月)

今回は株式会社ビービットの東アジア営業責任者・エクスペリエンスデザイナー
藤井保文(ふじい やすふみ)さんにお話を伺いました。

藤井 保文:1984年生まれ。東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 修士課程修了。2011年ビービットにコンサルタントとして入社。2014年に台北支社、2017年から上海支社に勤務し、現在は現地の日系クライアントに対し、UX志向のデジタルトランスフォーメーションを支援する「エクスペリエンス・デザイン・コンサルティング」を行っている。2018年9月からはニューズピックスにおいて、中国ビジネスに関するプロピッカーを務める。2019年3月に「アフターデジタル-オフラインのない時代に生き残る」を出版し、世耕元経済産業大臣をはじめ各界著名人からの推薦を頂いている。現在6万4000部を超えるヒットとなっていることから続編を発売。また、政府の有識者会議参画、FIN/SUM、G1経営者会議など「アフターデジタル」におけるアドバイザリや講演活動も多数行っている
引用:日経TREND

あのベストセラー「アフターデジタル」の著者で今大注目されている方です。
「概念をきれいに整理する事が上手いね。」と言われる事が多いそう。もともと音楽の教養があり、レーベルからCDを出されている藤井さん。非常に分かりやすく、且つ聞いていて今後のデジタル社会を想像しワクワクするようなお話の仕方をしてくださりました。

藤井さんは、2014年に台湾、2017年に上海へ赴任。そこで現金使用率が3%以下という、キャッシュレス化の進んだ中国の先進的な状況を実際に経験されてきました。そのご経験からこれから訪れる
「リアルとデジタルが棲み分けられている時代」 から、「デジタル世界の中にリアルがある時代」 の社会への変化についてご説明くださりました。


デジタルリアル融合時代

今までのサービスはリアルに軸足を置き、いつも来店する人が便利な機能としてアプリなどを使用していました。しかし、今後は常にネットにタッチポイントがあり、デジタルメインとなります。リアルな接点が貴重でレアな場と変化し、これまで以上にリアルの重要度が上がるとのこと。

また、属性分類データから行動データが貴重な時代へ変化していくとのこと。筋トレしてる時にビジネス書を勧められても困りますよね。と藤井さん。確かに、その通りです…。行動データがあれば最適なタイミング・コンテンツ・コミュニケーションが図れ、最適なエクスペリエンスの提供が可能とのこと。
この価値のある行動データを収集するためには、多くの人に長く使用してもらうサービスを作る事が重要であると述べられていました。
一過性のトレンドに飛びつきその場、売れるものを作っても意味がないという事ですね。本質的に良く、人々が心地よく使い続けられるものを作る事が行動データを収集する事に繋がる。
データ収集のメリットに加え、本質的に良いアプリが溢れる世界って良い循環で素敵だなと感じました。

アフターデジタル時代のアーキテクチャ設計

テックとUXは社会アーキテクチャを作る最強能力とのこと。アーキテクチャとはローレンス・レッシングによる「行動変容をもたらす4つの力」の一つです。詳細は以下ご参照ください。

「行動変容をもたらす4つの力」:アメリカの憲法学者 ローレンス・レッシグによれば「法律」、「規範」、「市場」そして「アーキテクチャ」の 4 つの面から規制の規制が考えられるという。この場合の「アーキテクチャ」による規制と は「車にアルコール検知器を付け、呼気にアルコールが含まれていればエンジンがかから ない仕組みにしておく」というものである。これならばほぼ確実に飲酒運転をなくすこと ができると思われる。
引用:アーキテクチャ(あるいは環境管理型権力)によるファシリテーションの検討


デジタルとリアルが融合する社会ではアーキテクチャのリアルを含めて実現が可能になってくるとのこと。
いくつかの中国での例をご紹介くださりました。

【アリババによる信用スコア】
誰もが知る、世界最大の流通総額を持つオンラインモバイルコマースカンパニーのアリババ。アリババの信用スコアというのは、信用証明ができない人々(中国では銀行口座を持っていない人が沢山いるそう。)の行動履歴が溜まり、点数が上がることで「アリババ経済圏において優遇される」システムを構築。この行動履歴を見れば分かるこの人がどんな人で、どんな行動をしているかが分かるので信用証明となり行動の幅が広がるそう。

【DiDi】
配車プラットフォームとして、タクシーに「乗りたい」と「乗せたい」をマッチングアプリ。ドライバーの評価制度、遠回り横暴な運転は監視を組み込まれています。元々中国のタクシードライバーのマナーの悪さは問題だったそうなのですが、これを実施すると、運転手は給料を上げようとし、みるみるサービスの質が向上したそう。

このように、デジタルとリアルが融合することにより、正しい行動を正当に評価していくシステムのおかげで出来る範囲がぐんと広がり、企業や想いのある人々がアーキテクチャを分担できるようになったとのこと。
今までこれらは国が担っていましたが、企業がそこに入っていけるようになったということです。政治家にならずとも、人々の行動を変える事ができる。これは非常に大きな変化だと言えます。
この変化は良い点だけではなく、悪用する人も現れるということを念頭に置き、使用する側のリテラシーも非常に重要だという事が同時に言えます。

まとめ

藤井さんのお話を聞き、デジタルとリアルが融合する社会ではアーキテクチャのリアルを含めて実現が可能になってくる。という点が非常に衝撃でした。
私もデジタルを活用している事で、徐々に行動が変化している事に気付化されました。また、デジタルの活用はただ便利になるだけではなく、今までの人間の生活を変える可能性を大きく持つことから、より分担制の社会とユニークな世界になる事にワクワクしました。それと同時に、正しく理解し、選んでいく事の重要性も感じ、非常に大きな学びとなりました。

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