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[MMA]偉大なる小さな巨人

きっと想像していたような結果になるのだろうと思い、試合どころかそのイベント自体を見過ごしていた。

そんな中ある動画のサムネイルが目に留まった。そこには輝かしいベルトを肩に掛けるDJの姿があった。

ADRIANO MORAES VS DEMETRIOUS JOHNSON 2

[ONEフライ級タイトルマッチ]両雄の激突再び

今回行われたDJvsモラエスのリマッチ自体は数ヶ月前に発表されていた。

その時点で私はDJが圧倒的不利であり勝つための要素を持っていないという考えから、同じ結果に終わるという予想を立て、その理由を合わせて記事にした。

しかしサムネイルで微笑む小さな巨人は私の間違いを勇敢さをもって示していた。

モラエスはDJのキャリアの中でもトップクラスに相性の悪い選手だと思う。試合を見終えた後でもその印象はやはり変わらない。

だからこそ、その中でどうやってDJが勝利を掴んだのか、掴むことが出来たのか試合を見る前は全く想像もつかなかった。

しかも判定ではないKOでの勝利を。

証明を続ける偉大なファイター「デメトリアス・ジョンソン」

そこには世界を獲るに足るだけのタフネスさがあったように思えた。

気持ち的にも身体的にも。

しかし、試合序盤ではやはり打撃で触れることが出来ず蹴り足を取られテイクダウンを許すと起き上がることが出来ないままラウンドを終えた。

その上良いタイミングのタックルをカウンターで入れてダブルレッグをガッツリ取った場面でもボディをロックされてしまいテイクダウンを奪うことは出来なかった。

サイズ差からくる相性の悪さとグラウンド展開での不利要素は依然として明確だった。

ただ今回のDJはグラウンドで下になっても焦ることなく落ち着いてディフェンスをしながらヒジを打って応戦し、スタンドに戻っても落ち着きを維持していた。

そして後半に掛けても崩れない脅威的なスタミナが強力な武器となった。

DJは前に出続けた。

モラエスはフライの中ではサイズが大きく、それが一つのアドバンテージとなってはいるが、やはりそれなりのスタミナ消耗を伴う。

それに加えて組み側でDJの鋭い膝がボディに何度か入っていたので、それも後半に掛けての消耗に拍車をかけたと思う。

そうして一進一退の攻防を交わし、判定になればややモラエス有利かと思われるような状況で迎えた第4ラウンド、DJはテイクダウンを防ぎながら打撃を当ててペースを掴むと、ラウンドの後半で大振りになったモラエスの左をかわして右を捻じ込みグラつきながら退がるモラエスに因縁の膝を打ち込んで見事な勝利を掴んだ。

驚きだった。

圧倒的不利だと思っていた難敵から華々しい勝利をもぎ取ったという事実に。

そして何よりも36歳になりながらもDJは大きな負けの向こうに成長を築いていたのだ。

ベルト獲得のその先

ただもし再戦となった場合、今回の結果を鑑みて考えてもやはり変わらずDJが不利になのではないかと思う。

しかし何回やっても恐らく不利となるだろう相手から文句無い勝利を奪い取るというのは一回でも出来たら物凄いことなのではないだろうか。

DJはそれをリベンジの機会にやってのけた。さらにその幅は定かではないが、まだ強くなる可能性を示した上でONEのチャンピオンベルトを手にしている。

時代に沿って進化を続けるMMAという競技に合わせて成長を続けるタフなファイター達を相手に今尚一線で戦うDJはどこまで戦っていけるのか。

技術が発展した今、DJが若かかったかつての時代よりもそれは一層難しくなっているのではないかと思う。

担がれた黄金のベルト


そもそも私はモラエスに効かせるだけの打撃を届かせることがDJには出来ないだろうと思っていたし、後半戦であってもそんな場面を作れるような試合展開を生み出すことが出来るとも思っていなかった。

しかしDJは自分から一番近い距離にある相手の前足を削りながら少しずつ触れられる距離を作っていった。

組み技スキルと打撃のリーチに優れるモラエスを前にテイクダウンを何度も取られながらも最後まで勇敢に王者の牙城を叩き続け、その栄冠を手繰り寄せた。

そしてDJは試合後のマイクで驕ることなく冷静にしかし喜びを輝かせながら勝利に対する感想とそこに至るまでのハードな鍛錬について語った。

それからチャトリCEOから贈られるファイトボーナスの使い道について問われると、DJは税金を払い子供の養育費の為に貯金すると言ってから、それでももし余ったら妻と食事に行ってコーラでも買うと言って晴れやかな顔で微笑んだ。

聡明で愛情深い小さな巨人には担がれた黄金のベルトがよく似合っていた。





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