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罰則付き特措法等改正、弁護士団体が抗議


2月3日、特措法、感染症法の改正法案が成立し、13日から施行されている。

先立つ2月1日、これらの法律に罰則が付されることへ、自由法曹団など法律家6団体が反対声明という形で抗議をしていた。声明の趣旨などを自由法曹団大阪支部・事務局長、弁護士の岩佐賢次さんに聞いた。(取材日2月12日)
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ーー2月1日に自由法曹団を含む弁護士6団体が、特措法等の罰則規定に反対を表明する声明を出しました。この声明で特に強調していた点を教えてください。

まず、私どもは、特にハンセン病や後天免疫不全症候群等の患者への偏見や差別があったことを重く受けとめ、これを教訓として今後に生かすことにこだわってきました。感染症法の理念の根幹に「患者の人権」を尊重するということがあり、入院等の措置は「感染症の発症を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない」と規定されています。入院や積極的疫学調査の拒否に罰則を科すことは、それがたとえ行政罰であっても、この感染症法の理念に反するものです。

また、入院先から逃げた患者が一定数いて、そのことで感染が拡大したという根拠は認められません。件数としては少ないのではないでしょうか。法律を制定するためには、「立法事実」という合理性の根拠となる社会的事実が必要ですが、今回、これがない。

さらに、罰則を科すことで検査の受け控えを招いたり、積極的疫学調査で本当のことを言わなくなったりするなど、感染状況の把握がかえって難しくななり逆効果になる恐れがあります。

関連してお伝えしますが、この声明より前の1月20日に、自由法曹団が単独で同趣旨の声明を出していましたし、日本医学連合会や保険医協会なども早くから罰則付き改正に反対の声を上げていました。これらの医療関係者や法律の専門家の声を無視することは許されません。


ーー反対の声にもかかわらず法案が成立しました。今後の動きについてはいかがでしょう?

例外がないわけではありませんが、人権を侵害するような悪法がつくられても、残念ながらそれだけでは具体的な争訟性に乏しく、今の裁判制度上は憲法違反であることを争うのが難しいというのが現状です。

行政罰を実際に受けた人が、処分を不服だとして具体的な事件を起こせば、その処分の取り消しを求める訴訟の過程で、その法律が憲法違反だと主張することができます。

法改正されましたが、政府は改正法をどこまで適用していくのか、今後の道筋をまだ考えられていない部分があると見ています。広く国民に向けて「違反すれば行政罰ですよ」というアナウンス効果を狙うことが主眼なのかもしれません。しばらくは今後の動きを注視したいと思います。


ーー自由法曹団の特色について教えてください。

基本的人権・平和・民主主義を擁護することを目的として活動している任意加入の法律家団体です。今回のような声明を出したりするのに、弁護士会などの強制加入団体よりはスピーディーに動ける面があるかもしれません。

一般の人は、弁護士というと、裁判ばかりしているイメージを持っているかもしれません。しかし、我々は、法律問題は広く政治や社会の問題と深く結びついていると考えていて、法律自体が悪法であれば、司法だけで改善するのには限界があるという問題意識を共有し、事件活動にとどまらず立法や行政に働きかける活動を行っています。どうしても個々の弁護士では事件性がないと動きづらいところをカバーできればと考えています。

具体的には、人権を抑圧するような悪法の制定を許さないために、国民に法案の問題点を広めたり、市民運動を行っている団体と一緒に街頭でリーフレットを配ったり、また、署名活動や請願など立法・行政への意見具申を行っています。







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