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キャリア研修が企業で実施されない理由

会社の研修にはどのようなものがあるのでしょうか?新人研修やリーダー研修やマネジメント研修(研修名は会社によって異なります)といったものが多いのではないでしょうか。

ではキャリア研修は?

キャリア開発研修でもキャリアデザイン研修でも名前はなんでもいいです。キャリアに関して研修をしている会社はどのくらいあるのでしょうか?少し調べてみました。厚生労働省が毎年実施している調査の一つに教育訓練費用を支出した企業の割合を調べるものがあります(教育訓練費用とはOFF-JTで行う集合研修などを指す)。昨年2022年6月に発表された割合は50.5%。およそ2社に1社が集合研修をしていないということになります。そもそも研修自体を行っている会社自体が全体の半分。ではその中でキャリアの研修を実施している割合はどのくらいでしょうか?

ということで色々ググってるとこんな記事がありました。

近年、キャリア開発研修への注目度が高まってきています。どれくらい実施されているのかを聞いたところ、「実施している」は34.7%。「現在は実施していないが今後実施する予定である」(10.9%)と「現在は実施していないが今後の実施を検討している」(32.8%)を合わせると43.7%で、現在は実施していなくても導入に前向きな企業が多いことがわかります。

『日本の人事部 人事白書 2021』

およそ3割を超える会社(しか)がキャリア研修を行っているようです。まだまだ浸透していないのが現実です…

キャリア研修が行われていない理由

ではなぜ会社は実施しないのでしょうか。それはシンプルに研修をやる意味がない(と思っている)からです。この意味がないということは具体的にどういうことでしょうか。これには以下の2点が考えられそうです。

①研修の結果、やりたいことが見つかって退職されるのが怖い
②研修の費用対効果が見合わない(そもそも効果が見えない)

まず①に関して、これは「ただでさえ人手不足なのに、お金をかけて研修した結果辞められてしまっては元も子もないじゃないか」と考えているケースです。実際問題こういった事態が起きる可能性はあります。ぼんやり働いていた人が研修をきっかけに現状の自分に疑問を持ち、自己分析やらキャリアの棚卸しをしてみた結果、他にやりたいことが見つかった。そして転職をする。実際にあってもおかしくない話です。

次に②に関して、これは会社が「研修するなら最終的に売上や契約数やらの結果で還元して欲しい。でもキャリアを考えたところで会社にどんなメリットが返ってくるのか?」と考えているケースです。研修の目的は一言で言えば会社の成長のためですね。でもキャリアを考えさせることは会社の成長には繋がらないのではないかと感じているのです。

キャリア研修は従業員と会社にとってwin-win

一見すると目的や効果が見えにくいキャリア研修ですが、本当にそうでしょうか。会社は「リーダーシップ研修」や「マネジメント研修」をしていればいいのでしょうか?

まずはキャリア研修の意味を考えたいと思います。それは「キャリアが多様化している今の時代に、自分がどんな人生を歩んでいきたいかを自分自身で認識する。そのために今の会社でどういったキャリアを歩みたいのかを明確にする」です。そしてさらに研修には次の2つのメリットがあります。

①従業員のエンゲージメント(会社に対しての思い入れや愛社精神)が高くなる
②研修をきっかけにより良い組織づくり(社内制度など)が構築できる

まず、キャリア研修は行うこと自体に意味があります。実施することで従業員が「うちの会社ってちゃんと私たちの将来のことを考えてくれてるんだ」と感じるということです。

研修の結果として退職する人はいるかもしれません。ただ、退職者は「キャリアが多様化している時代に私は今のままでいいのか?毎日毎日とりあえず働いている現状でいいのか?」とモヤモヤしているために転職を考え始めます。しかし研修をすることでやりたいことが明確になり(他職種の可能性もありますが)、さらに会社側が個人(従業員)に寄り添うことで仕事へのモチベーションや会社へのエンゲージメントが高くなる。これがメリットの1つ目です。

次にメリットの2つ目です。これは会社が従業員の考え(キャリア形成やキャリアプラン)を把握し、その考えを実現できるような組織作りが可能になるということです。会社としてより良い組織作りを目指すのは当然です。ただ、会社の上層部だけの話し合いで決められた新しい制度や取り組みが、現場で働く人達からは支持されないこともあります。従業員に提出させる会社への意見書からでは良い組織作りはできません。誰も本音を書かないし、提出すらしない人もいるかもしれません。

ただ人は自分のことになると本気で考えます。キャリアも同じです。そして会社はその人達のキャリアを自社で歩んでもらうにはどうすればいいのかを制度や組織作りに反映させられます。結果として個人も組織もwin-winになります。これもキャリア研修をするメリットです。

キャリア研修がさらに多くの会社で導入されるには多くの課題があります。講師はどこから呼ぶのか、質の高い研修は本当にできるのか。ただこれは順番を変えることで解決できます。研修を多くの会社が実施することで専門家が増え、知識やノウハウが集まりどんどん質の高い研修ができるようになります。これから少しでも多くの会社がキャリア研修に前向きになりますように!

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