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「逃げ水は街の血潮」感想文

ひょんな事から影響を受けた人がプッシュしていた、気鋭の若手、奥野紗世子さん。二作目の「復讐する相手がいない」を先に読んだのだけど、彼女の作品が掲載されている文芸誌を全て取り寄せた。

すっごく良かった。めちゃくちゃ良かった。

「ドールチェあーんどガッバーナーのー」とか言われても何も想起出来ない私だけど、割と年代の近い(五歳下)の同性の方が書いたものだからか、細かい描写に凄く共感して、純文学なのに声出して笑ってしまった。いや笑われたくないかも知れないけれど。

一番笑ったのが「AV仕込みの手マン a.k.a. 火起こし」という表現。

分かりすぎる。居る、そういう死ぬほど下手な男。

入浴剤の描写で店名が分かったり。私も貰った事あるやつだ、みたいな。タクシーに乗ってる時の気分も、まさに言いたい事を言ってくれた感じで頷いてしまった。

読むものに共感したい訳じゃないけれど、共感できたらそれはそれで楽しい。女だから根底の部分で共感したいのかも知れないけれど。

突然主人公が灯油を盗むあたりは賛否分かれそうだけど私は好き。だって物事って突然の方がドラマチックだから。

女が女を連れて逃げる、いやでも逃げてるって感じじゃない、そういうところも好き。汽笛で起きるとか素敵。

ラスト一行まで女性らしくて可愛いところもある。

こんな事しか感想書けないけど、本当に良かったので、薦めさせて下さい。文學界2019年5月号。

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