無神論者の恋

モーセの十の戒めに「他人の妻を欲するべからず」とある。

「横取りするべからず」なら分かるが、欲するのもいけないのか。

ならば何故、私と彼女は出逢ってしまったのか。

出逢った時にはすでに彼女には家庭があった。守るべきものがあった。

この世に神とやらが居るとして、皆に戒めを守らせたいのであれば、そもそも出逢わせないようにすれば良い。神なのだからそれぐらい出来るだろう。

私は彼女と出逢わなければ、こんなにも苦しい思いはしなかった。

神が禁止するというマスターベーションだってしなかった。

神が不自然とすると言う同性愛にだって至らなかった。

私は彼女を一目見て恋に落ちた。考える時間など無かった。

神とやらが居るのなら、矛と盾はどうなるんだろう。

私は引きちぎったロザリオの珠を蹴散らす。