突き詰めれば僕自身だって小さな17粒の素粒子



今日の為にこれまでずっと忙しく忙しくして来た

曲を書いて衣装を作って振り付けを考えて
それが終わったらジムでトレーニングをして
仕事して仕事して

なのにみーちゃんが消えてしまった鈍痛は消えなくて
ふっと全身から急に全部の力が抜ける瞬間が何度もあった


毎日みーちゃんに話しかけては、返事の無い骨壷を撫でて抱きしめて泣いて寝ている

以前みたいな振る舞い方だけは思い出して、周りを心配させないようにしてきたけど
その振る舞いは周りに私を『治った』または『苦しみが軽減した』と錯覚させている

私は今、足があるのに歩けない
本当は歩きたくもない
一歩踏み出すたびに酷い痛みが走って、振り返るとみーちゃんが寝てる
みーちゃんはもう二度と歩かない

時間が周りが私の腕を引っ張って前に前に進んでいく
もう2ヶ月も前の道にみーちゃんを取り残してしまっていて
伸びた髪は切った
ずっと追加の無い携帯の写真フォルダは未だ見れない
すぐにみーちゃんが出て来ちゃうから


このノートを今日見てる人なんて居ないと思うから言うけど
今日のライブで、六道の中から『人間道』の歌を歌う予定
まだどこにも出してない曲


人間道に落ちた子の曲
その子は未だ学生で、染色体異常で少しだけ疾患がある
そのせいでクラスでひとりぼっち
おうちでもひとりぼっち

人生の運命をDNAで決められた子

でも悲観したりしてない
『何故僕はひとりなんだろう、何故みんなと違うんだろう』
純粋な疑問符としてそう考えている


曲の中で『真理』と喋る

《形あるもののみを愛するな 人は皆朽ちるのだ》
突き詰めれば僕自身だって小さな17粒の素粒子
《そう さすらば全ては色即是空の如し
諸法無我の真理に至る》
でもA・T・G・Cの配列の中
お手手を合わせる僕が居る


ずいぶん昔に書いた歌詞だけど
今の私の頭の中はずっとこんな感じで
真理を理解する為に、ひたすら真理を論破しようとしてる


曲の中の人間道は、
何故自分は孤独なのか
自分が周りと違うのは何故か
と探っていて
真理は
『そもそも人、物質、自然、空気、あらゆる全てに違いなんて無い、全ては色即是空』
と言っている


物質は全て分解すると素粒子になる
だから全てのものに違いなんて無い
設計に使われる材料は人も物も全て同じなんだから(色即是空)

でもATGCの塩基配列が異なるから自分というアイデンティティがあるじゃないか(空即是色)

そもそもそのアイデンティティというもの自体が悟りから遠くて
それがあるから自分と他人が違う、自分が下、他人が上なんて概念が生まれる
異なるという事自体、実態が無い(諸法無我)

人間道は、
『自分がひとりぼっちであるという実態』を感じているから
真理の言葉に悩んで悩んで頭を痛くしてる


私この曲歌ってると不思議と涙が出てくる
悲しいわけじゃないのに、悲しい曲でもないのに
自然と涙が出てくる

多分、曲の中で真理と対話しているからだと思う

人間道として歌っている後ろの私自身が、人間道を通して真理に耳を傾けているから
ああ、みーちゃんを愛すれば愛するほど悟りから遠くて、苦しみばかりなんだなって




そんな事を考えながら準備をして、これから会場に向かいます
全部の曲が、もう二度と歌えないって
そんな風に思うようにしながら大事に歌います

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