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『バイオハザード8(VILLAGE)』レビュー。黄金期バイオハザードの進化を追体験する、次期バイオハザードへの全力助走。

『バイオハザード8』は、FPS・サバイバルアクションゲームとしてとても面白い。
そして、『バイオハザード7』の直接の続編としていくつかの点でとても興味深いゲームでした。

『バイオハザード1』から『バイオハザード4』への進化を追体験する

『バイオハザード7』は、原点回帰を謳い、ホラーとしてのバイオハザードを現代の技術で蘇らせました。
そして今作、『バイオハザード8』では、アクション・探索に重点を置いた『バイオハザード4』の楽しさが復活しています。

『7』の直接の続編である『8』は、『1』から『4』への進化をなぞるように、いくつかのシステムを変化させました。

インベントリは、各マスにアイテムを1つ(ないしは2マスで1つ)置くシステムから、有限なスペースに大小様々な大きさのアイテムをテトリスのように詰め込んでいく、『4』ゆずりのアタッシュケース型に。
キーアイテムや後述する換金アイテムは、インベントリではなくキーアイテム(換金アイテム)専用の一覧に収納され、管理が不要になりました。

マップ表示機能は、未取得アイテムがある部屋は赤く塗られており、その部屋に存在する全てのアイテムを取得すると青く変化します。
また、そこで得られた換金アイテムを商人に売って、武器や弾薬・薬を購入したり、武器の強化を行うことが出来るようになりました。

さらに、敵を倒した際には必ず、弾丸や薬の生産に必要なクラフトアイテムや換金アイテム、通貨そのものをドロップします。

これらは、『4』以降のバイオハザードに実装された要素で、『7』では(おそらく、あえて)存在していませんでした。
あまりにもゲーム的な要素は、恐怖感をそいでしまうからでしょう。
そういった『4』由来のシステムを、『7』の上に被せて作られた『8』は、(『7』から続けて遊ぶと特に、)『1』から『4』へと進化した当時の体験を、現代の技術でしかも短時間で味わうことが出来るのです。

今作は、ただ今作単体でゲームとして面白いだけでなく、『7』と合わせてバイオハザードの進化・変遷をもう一度辿っていくことが出来るという点も大きな魅力でした。

アーケードライクなプレイ感

『4』はステージ制を採用し、クリア時にはプレイ内容を評価するリザルトが表示されるなど、非常にアーケードゲーム的でした。
『8』では、そのアーケードゲーム的な楽しさを、意図的に強調して作成されています。

例えば先程書いたように、(今回の敵はライカン他ですが、便宜的に)ゾンビを倒すことでドロップアイテムが得られます。
また、商人からハンドガンの弾を一発150リラ(通貨)、ショットガンの弾・スナイパーライフルの弾を1000リラで購入することが出来ます。

このドロップと購入のシステムがあることによって、ゾンビを撃つ時は、常に収支を考えていました。
ゾンビからのドロップはたいてい750リラ相当のアイテムや通貨そのものかクラフトアイテムです。
750リラを基準としたら、ゾンビ一匹をハンドガン5発で倒せれば採算がとれて、7発以上使うなら、ショットガンの一撃や遠距離からライフルで倒したほうが儲かります。

そして、出来るだけゾンビを少ない弾で倒すためには、武器の強化で弾の装填速度や装弾数、手ぶれ補正より優先して威力を上げるほうがいい。
装填速度や装弾数・手ぶれは、戦闘時の位置取りや距離、エイミングなどのプレイヤーのスキルによって補うことが出来ます。
しかし、一撃の威力だけは、ゲーム中で通貨を払ってしか強化することが出来ません。
もちろん、この強化方法では制御の難しい銃を使うことになるので、ゾンビが複数同時に襲ってきたり、角を曲がって突然現れたりの不足の事態に慌ててしまって、結局さらに多くの物資を使ってしまうこともあるのですが・・・。

そうやってゾンビを立ちはだかる驚異と言うよりは、アイテムを吐き出す的として見ながら倒していくのは、アーケードゲームライクなプレイ感覚で、ゾンビが怖いというホラー要素をスポイルしていました。

そもそもゾンビを倒したら、アイテムが光の柱をまとって、いかにもゲーム的にドロップするので、これは狙って「ゲームである」とプレイヤーに認識させるデザインをしたのだと思います。
その証拠に、『8』でもっとも恐怖を煽るマップでは、一切の倒せる敵を出さない演出が施されていました。

もうすこし、ゾンビを驚異として描いてほしいとは思いましたが、この『4』ゆずりの「ゲーム」であることをプレイヤーに強く認識させるデザインは、あえてのことでしょう。
そして、そういうゲームだと認識して遊べば、それはそれでとても面白いのです。

丁寧な難易度調整・レベルデザイン

『4』は、やはり昔のゲームで、難易度は現在のゲームに比べれば遥かに高かった記憶があります。

『8』では、その難易度を、プレイヤーに簡単すぎると感じさせないように、プレイ中に自分で遊びやすいように自然と難易度をコントロール出来るように作られていました。

箱庭的な”村”や”城”などを丁寧に探索すると、多くの物資(弾丸・薬・換金アイテム・食料)が手に入ります。
弾丸や薬は言わずもがな、換金アイテムが多く手に入れば、アタッシュケースの拡張や武器の強化、足りない弾丸や薬の補充も余裕を持って行えます。

それから、リスタートのためのチェックポイントが非常に細かく設定されていて、ボス戦で弾丸を使いすぎたとか、ダメージを受けすぎたと思えばリスタートして、戦闘で得られた知識で有利に立ち回って、物資や体力を温存することも出来ます。

それを見越したように、物語の本筋とは関係のない場所に、資材や強力な武器が隠されていますし、村のいろいろなところにいる動物や魚から食材を手に入れることで、主人公・イーサンの体力や移動速度などを恒久的にアップデートすることも可能です。

それらは決して押し付けられることがないので、自分のペースで柔軟に難易度をコントロール出来るのです。
ただし、ゾンビが無限湧きするような箇所はなくて、戦闘の緊張感を著しく損なうほどの物資を集めることは出来なくなっているところが、とても好感が持てました。

総じて、遊びやすさと楽しさ、緊張感のバランスが丁寧に取られていて、最後までサバイバルアクションを楽しめます。

魅力的なボスたち

そして、こういった『4』ゆずりの「ゲーム」的なバイオハザードのシステムを構築した上で、さらに『8』に独特の魅力が盛り込まれています。

発売前のトレイラーでも大いに話題になった、魅力的なボスたち。

ボスたちは、登場シーンから道中での遭遇、そして戦闘まで、見ているだけでかっこいいと思わせるキャラクターでした。

美しいグラフィックで書かれる巨大なボスは、フィギュアとして手元に置いておきたいと思うほどの造形で、戦闘しているだけでとても楽しい。

もちろん激しい攻撃をしては来ますが、体躯が巨大で弾丸が当てやすく、そこまで探索を丁寧にして、雑魚で物資を節約していれば、思う存分ボスに弾丸を叩き込む事ができるので、道中恐る恐る進んできたのとは一転、アグレッシブな戦闘が出来て気持ちがいい。

ボス戦のフィールドのギミックも豊富で、バイオハザードシリーズでここまでボス戦が楽しいと思えたゲームは『8』がはじめてでした。

『バイオハザード4』を懐かしむ必要はなくなった

『8』をプレイするまでは、本音を言えば、リメイクされた『4』をプレイしたいと思っていました。
それが叶わないので、仕方なくわざわざ『7』をプレイして準備して『8』を『4』に少し劣る代替品のつもりでプレイを始めました。

しかし、ここまで書いたように、『8』は『4』的な要素をすべて取り込んだ上で、新たな物語、キャラクターたち、ボスとの戦闘を最新の技術で遊ぶことが出来ます。

途中から『4』をもう一度遊びたいと思うことはなくなっていました。

そして、なぜカプコンはわざわざ『1』から『4』への進化を追体験させたのか。

『5』や『6』、失敗したマルチプレイタイトルなどで、もうバイオハザードは駄目かなと多くのプレイヤーに思わせたシリーズを、『7』でリブートし、『8』でもっとも成功した『4』の高みまで引き戻しました。

あえて今一度その道程を辿ったのは、このあとにもう一度、バイオハザードを進化させ続けるという覚悟だったんじゃないかと思います。

これだけの出来の『8』のあとの恐らく作成されるだろう『9』。ハードルは上がりに上がりましたが、それを飛び越えた進化を遂げた、サバイバルアクションの金字塔たるシリーズの最新作の登場が楽しみでなりません。

最後に、国産のゲームがPCで当たり前のように遊べるようになったこと

これまでずっと、PCゲームの世界は、日本のメーカーから重要視されていませんでした。

PCゲームが一時期斜陽になったとき、Valveが奮闘してSteamを立ち上げ、少しずつPCゲームが復権してきたなかで、しかし日本のゲームはほとんどリリースされず、リリースされても日本からは購入出来なかったり、日本語だけが抜かれているような状況が続いていました。

コンソール機でゲームを遊ぶことが当たり前だった日本でPCゲームが遊ばれなかった状況で、日本のメーカーがPCゲームにコストを掛けることは難しかったかもしれません。

けれど、PCゲーマーも、かつてはコンソール機で日本のゲームを遊び、より深くゲームに嵌っていって、PCでゲームを遊ぶに至った人が多くいたことは間違いありません。

そんななか、PCに対して冷たかった日本のメーカーに、あまりいい気持ちを持っていなかったプレイヤーも多かった。

けれど、最近その状況はようやく、ほんとうにようやく改善されてきました。
いまさら恨み言を言うつもりはありません。

ただ、こうやってあのバイオハザードというコンソールのゲームの代表の一つがPCで当たり前に遊べる時代が来たんだ、と今更ながらに思ったのです。
PCでコンソール機のゲームが移植されると聞いても、「どうせ日本語が入ってないんだろう」とか「日本からは購入できないようになっているんだろう」とか、最初から諦めていたあの頃からは考えられない幸せ。

こうやって当たり前に、『9』をPCでも出るだろうと期待できる今はとても幸福な時代です。

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