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クランベリーのエオルゼア観光日記38ーレジェンドたちー

ザ・ストーン・ローゼズというバンドがあった。

わたしが学生時代に熱狂的に聴いていたバンド。

当時のイギリスのマッド・チェスターと言われたムーブメントを牽引した伝説的なバンドだけれど、音楽を語れるほどに深い造詣はないので、彼らの偉大さはぜひ、一聴して知ってほしい。

バンドの中心はイアン・ブラウンとジョン・スクワイアで、彼らは幼馴染だった。

ファーストアルバムの成功の後、セカンドアルバムまでの長い沈黙の中で彼らは仲違いし、ジョンの脱退後にバンドは崩壊していった。

そして2011年。

ザ・ストーン・ローゼズの再結成のニュースが飛び込んできた。

元バンドのベース、マニの母親の葬儀でイアンとジョンが15年ぶりに会話を交わして、絶縁状態だった二人が再会し、再結成の話になったのだと聞いている。

わたしはこの話がとても好きで。

久しぶりにあった時、彼らは何を話したんだろう。

幼馴染で一緒にバンドを組むほど仲が良かった二人が、伝説的なアルバムを作る。

爆発的な成功と長期のセカンドアルバム作成、ドラッグの問題もあったと聞くし、15年、口を利かない程に仲違いした二人。

その二人が久しぶりに出会う。

もう当時よりずっと大人になっていて、気まずく顔を合わせたあと「やあ、元気だったかい」、とでも言ったんだろうか。

いきなり当時に戻ったりはもう出来ないだろうし、少しずつ、言葉を交わしていったかもしれない。

「ああ、元気だったよ。だいたいお互いにメディアに出てるから知ってるだろ」

「そうだな、目に入れるのも嫌だったけど」

「それは俺も同じだよ、でも・・・あのファースト・アルバムは良かった」

「おまえのファーストはひどかったな」

「相変わらず口が減らないな」

なんて。

勝手な妄想だけど、そうやってバンドを組む前のように憎まれ口を叩いたかもしれない。

そして、やがて、やっぱりこいつといるのは楽しいな、と思うんだろうか。

もう一度あのマジックを起こしてみようと思ったんだろうか。

ザ・ストーン・ローゼズは再結成し、アルバムを作成中とアナウンスされながらも、結局その約束は果たされることはなくて、2度めの解散を迎えた。

きっといろいろなことがあったんだろう。

そしてその色々は、かつてのようにメディアでお互いを蔑み合うようなものじゃなくて、大人として受け入れざるを得ないお互いの変化だったり環境の変化だったのかもしれない。

沈黙を貫く彼らの間に何があったのか、私達は知ることは出来ない。

ファイナルファンタジーのレジェンドたち

ファイナルファンタジーを生み出したのは誰もが知るとおり、坂口博信さんだった。

日本を代表するビッグタイトルに成長したファイナルファンタジー。

ファイナルファンタジーXの発売までスクウェアに在籍していた氏は、スクウェアの赤字転落の責任を取って辞任したと聞いている。

それから、わたしの大好きなクリエイター、松野 泰己さん。

タクティクスオウガの後、スクウェアに入社して、ファイナルファンタジータクティクス、ベイグラントストーリーという、広く世間に受けはしないかもしれないけれど、ゲーマーから圧倒的な支持を受けた作品を作成している。

そして、ファイナルファンタジーXIIのプロデューサーに就任したが、開発の途中で病気療養のために降板し、その後スクウェア・エニックスを退職している。

二人のレジェンド。

彼らの作るゲームが大好きだっただけに、当時のスクウェア・エニックスから少しずつレジェンドたちが欠けていくのは悲しかった。

SNSやインターネットが発達していなかったし、そもそも社内の内情が外に出てくるはずもなくて、友人たちとはきっとスクウェアと上手くいかなくて去っていったんだろう、なんてうわさ話をしていた。

ファイナルファンタジーXIVで

その坂口さんが、今、FF14をプレイしている。

そしてまだ見ていないけれど、今年のTGSで吉田Pと対談している。

松野さんは、紅蓮でアライアンスレイド「RETURN TO IVALICE」のシナリオを努めていた。

わたしが年をとったからなのか。

一度袂を分かった二人が、FF14を、引いてはプロデューサーの吉田氏を媒介に、今一度ファイナルファンタジーに関わっている姿はとてもうれしい。

袂を分かったと言っても、今こうして二人がFFに関わっているなら、それは決定的な決裂じゃなかったんだろう。

ほんとうにただ、責任をとって辞任したのかもしれないし、病気療養以外の理由はなかったのかもしれない。

結局内情は計り知れない。

ただ、最近、こういった話をよく聞くな、と思う。

そういった出来事が増えたわけじゃなく、昔からそういうことは繰り返されていて、わたしが興味をもって見聞きする事柄の中に、そういったことが起こるような時間が経過しただけかもしれない。

完結する物語たち

そういえば、初めて読んだ小説は田中芳樹の創竜伝だった。

銀河英雄伝説やアルスラーン戦記の作者だと言ったほうが通りがいいかもしれない。

長らく完結しなかった創竜伝が、最近やっと完結した。

最後に刊行された巻から、10年以上が経っていたと思う。

アルスラーン戦記も15年を経て完結した。

あだちみつるの漫画「タッチ」は今再び、同じ学校を舞台にミックスという新作として連載されている。

これまでのあだちみつるの作品の要素を全て詰め込んだような物語が展開されている。

中学生の頃、タワーレコードで見つけて、鬱屈とした学校生活を救ってくれたHIPHOPユニットのTHA BLUE HARBは、かつてのビーフの相手、ユー・ザ・ロックのアルバムを自身のレーベルから発売した。

なんだか、わたしの好きだった人たちが、自分の人生の大切なものに決着をつけようとしているように思える。

そこに、当時熱狂したようなギラギラとしたものはないかもしれない。

もちろん、本人たちはそんなことはない、今も思いっきりギラギラしていると言うだろうけれど。

ただ、それだけの月日が流れただけなのかもしれない。

でもわたしは、これらの話が大好きで、すこしうるっときてしまう。

若い頃だったら、そんな懐古主義は鼻で笑っていただろうけど。

わたしの人生ではきっと、これから出会うものより、かつて出会ったもののほうが多くなっていくんだろう。

そんな中で、大切だったものたちとどう出会い直していくんだろう。

ただ懐かしむだけでなく、かけがえのなかった人や、なのに上手く行かなくて別れてしまった人、望みに届かなかった夢、そんな「過ぎ去った」と思っていたものをもう一度見直してみるのも悪くない、と年月を重ねたからこそ思う。


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いや、あんまりFF関係ない話だったけど。


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