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映画すみっコぐらし2は「許容」と「将来の夢」の物語だ

まだ一回しか観に行っていない人の感想です。
間違っているところがあったらごめんなさい。
(公開二日目で一回しかも何もないが……)



まず前提として、すみっコぐらしといえば、劇場版1の飛び出す絵本とひみつのコで大ヒットして一躍有名になりましたが、今回の2は1とは全く別の話なのでそこは安心して観に行ってほしいです。

・すみっコぐらしとは
すみっこに住む小さな子たちのシリーズです。
彼らは小さくて可愛いですが、コンプレックスの塊で、様々な理由ですみっこへと流れついてきた生き物です。
彼らにとって部屋の真ん中は居心地が悪い。すみっこで縮こまっているぐらいがちょうどいい。
そんなネガティブな気持ちに寄り添うというのがコンセプトのキャラクターグッズシリーズとなっています。

・映画すみっコぐらし2あらすじ
5年に一度の不思議な満月の夜、まほうつかいがやってきてみんなの願いを叶えてくれるらしい。
半信半疑でまほうつかいを待っていたすみっコたちの前に現れたのは五人のかわいいまほうつかい。
でも、末っ子のまほうつかいはうまく魔法が使えないみたいで――?

・冷静な感想
かわいい。とにかくかわいい。
ただし、前作のようなものを期待していくと拍子抜けかもしれません。
前作が大人も子供も楽しめる作品なのに対し、今回のものは明確に子供向けです。
なぜってこれは、「将来の夢」のお話だからです。
子供にとっての「将来の夢」とは、多くが大それていて叶わないものです。
そんな夢を追い求める子供たちに対する大人のあり方を見せてくれるという点では大人向けかもしれませんが……やっぱり主軸は子供向けでしょう。
一言で言ってしまえば、これは「許容」の物語です。
「失敗してもいいんだよ」
「夢を抱くことは素敵なことだよ」
と……こう言ってしまうと陳腐なのですが、そこをキャラクター解釈と絡めて伝えてくるのがすみっコぐらし。
すみっこに住むキャラクター、すみっコたちにはそれぞれ将来のゆめがあります。
みんなすみっこに流れ着いてしまったけれど、ただいじけているだけではなく、みんな「こうなったらいいな」というビジョンを持っているのです。
今回の映画の主役はまほうつかいの末っ子「ふぁいぶ」ですが、もう一人の主役は「とかげ」でしょう。
とかげというキャラは、実はきょうりゅうの生き残りでそれがバレると捕まってしまうので見るからにきょうりゅうのおかあさんと離れて暮らしているというすみっコです。
自分がきょうりゅうなのは友達のみんなにも内緒。嘘つきな自分に耐えられなくて泣いてしまう。いつかおかあさんと一緒に暮らしたい。
それが「とかげ」というキャラクターの根幹にあるものです。
対する主役の「ふぁいぶ」ですが、まほうつかいの落ちこぼれで、でも拗ねることなく勤勉に兄たちの魔法を真似ている。そんなキャラクターです。
以下、展開の具体的なネタバレがあります。





まず前提です。
結局ふぁいぶは魔法を上手く使えません。
奇跡的なことを起こすのは兄たちで、ふぁいぶは一切すみっコたちに魔法で報いることができません。
え!? こういうのって魔法が最後に使えるものじゃないの!?
私自身映画館でそう思いましたし、ただ泣ける映画にするのならそうするべきだったのだと思います。
だけどそれをしなかった理由。それはきっとこれが「将来の夢」の話であり、「許容」の話だからでしょう。

冒頭。
月夜にやってきたまほうつかいたちは魔法のパーティを開きます。
だけどふぁいぶは失敗ばかり。
兄たちはふぁいぶの挑戦を見守り、失敗するのを見てはお手本を見せてくれます。
でも見方によってはこれは残酷なやり方です。
自分が失敗しているのをカバーされて、虚しくなるのも仕方ありませんから。
現にふぁいぶは邪魔にならないようにすみっこに行ってしまい、他の兄弟やまほうつかいたちに誘われたすみっコたちは楽しく遊んでしまいます。
それでもふぁいぶは腐りません。必死で兄たちの魔法を観察し、学び取ろうとします。
やがて夜が明け、まほうつかいたちは元いた世界へと帰っていきます。
しかしその時に彼らは末っ子と間違えてたぴおかを連れ帰ってしまうのです。
置き去りにされたふぁいぶ。次に彼らの世界と道が繋がるのは五年後。
すみっコたちはそんなふぁいぶを保護してあげることにしました。

ここからは大方の大人なら予想がつく展開です。
ふぁいぶはすみっコと仲良くなり、やがてすみっコたちのために魔法を使ってあげようとします。
そんな時に話に上がったのは、彼らの「将来の夢」。まほうつかいであるがゆえに「夢」が何なのかわからないふぁいぶは、それでも彼らの「夢」を叶えようと魔法を使います。
結果はやっぱり失敗。
がっかりするすみっコたちを見て、「夢」が何なのかわからないふぁいぶは勘違いをしてしまいます。

「そうか! ゆめってくるしいものなんだ!」
「そんなわるいものぼくがまほうでけしてあげるね!」

台詞はありませんでしたがこういうことだったのだと思います。
台詞がない分、正直ホラーでした。
というか予告編で「まほうがうまくつかえないふぁいぶが起こすとびっきりの奇跡とは!?」って言ってたの大嘘じゃんとなりました。
悪夢だよこんなの!怖い!

夢を失ったすみっコたち。
きっと幸せになっただろうなと思っていたふぁいぶは、変わってしまったすみっコたちの姿に愕然とします。
恥ずかしがり屋な子は傲慢に、勤勉な子は怠惰に、ほんの少しポジティブに生きていた子はネガティブに。
それを見た彼らの小さな友達は、変わり果てた彼らの姿に困惑して、涙をこぼす子もいました。

「こんなことをしたいわけじゃなかったのに」

ボロボロ泣くふぁいぶを唯一難を逃れたとかげは責めませんでしたが、無条件に許すこともしませんでした。
ここで「いいよ。大丈夫だよ」「君は悪くないよ」と声をかけるのは簡単だったでしょう。
ですがとかげと残された小さな子たちはただ「一緒にみんなを元に戻そう?」とだけふぁいぶに告げたのです。
許すことは楽です。失敗したほうも叱る側もすぐに楽になれます。
だけどきっとそれだけではダメなのです。
これは「許容」の物語。優しいだけの物語ではありません。
きっととかげのこのあり方が、ふぁいぶの兄に足りていないものだったのでしょう。
ふぁいぶは泣きながら頷き、みんなを元に戻すために頑張り始めました。

そしてみんなが無事に元に戻り、ふぁいぶはふと気づきます。

(そういえばとかげさんのゆめだけ聞いてないや……)

とかげの「夢」はおかあさんと一緒に暮らすこと。
だけどそれは誰にも秘密。
ふぁいぶにだって秘密です。
そんなとかげの寝室で、ふぁいぶはとかげのおかあさんの写真を見つけます。
とかげは苦し紛れに言い訳しました。

「そのひとの大ファンなの!」

ふぁいぶは納得して、とかげをおかあさんに会わせてあげたいと思い始めます。
そんな時、ふぁいぶの兄たちがふぁいぶを迎えにやってきました。
ふぁいぶは兄たちに事情を説明して、とかげをおかあさんに会わせてあげることにしました。
そして魔法によってとかげの親子は再会します。
だけどそれはほんのひと時のこと。
結局とかげはおかあさんとは暮らせず、おかあさんは湖に帰ってしまいます。

ふぁいぶはほんの少しの間しか会わせてあげられなかったことを申し訳なく思いました。
だけど、とかげはお礼を言います。

「叶わなくてもゆめだから」

届かなくても願い続けることこそが「夢」なのだととかげは語るのです。
ふぁいぶはとかげに帽子の星を託し、「もっとまほうが使えるようになる!」と宣言してまほうつかいの世界に帰っていきました。

おしまい。

……正直消化不良です。
それは物語から明確な答えが示されていないからでしょう。
叶わなくても夢だから。
どうして?
なんでとかげはそれでいいの?
どうしてふぁいぶは勇気づけられたの?
その疑問こそがこの映画を子供向けと言った理由です。
思うにこの映画は、家族で話し合うきっかけのための映画なのでしょう。
無謀で大それた「将来の夢」。
この映画はそれとどう向き合うか、その失敗をどう「許容」していくか、家族で一緒になって真面目に考えるきっかけなのです。
映画すみっコぐらし2はキャラクターものとしてしっかり成立させながら、それを示した良作なのだと思います。

・それはともかく
すみっコぐらしファンは全員見てくれ。
入場特典の絵本が本編補完として完璧だから、絶対に一週目に行ってくれ。
1を観た人も頼むから行ってくれ。
冒頭でキャラ紹介されるから初見でも楽しめるぞ!

すみっコぐらしはいいぞ!!!!!!
「映画すみっコぐらし2 青い月夜のまほうのコ」をよろしくお願いします!!!!!!



あと、とかげのおかあさんが空を見上げたシーンはおかあさんも同じ「夢」をまほうつかいに願ったという暗示だと思うのですが有識者の皆さまはどう思います?

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