no.5「ラララ」

自分に微笑みかける言葉
誰かを利用してでも使う
自分を形作っているんだ
誰かに傷を付けることで

ニヤつくあの大人の気色
正義を背に脅しかける
自分を確かめているんだ
誰かを捻じ曲げることで

白い眼を睨んで
吹き上げている
地下鉄の風に震えていた

首尾良く間抜けが撒き散らした
非難の理由を拾い詰り
不毛な優越感の中で
逆上せた心は溺れている

踏まれたものを取り上げて
明かりに駆けて行く人は
定めた立脚地に向かい
威勢良く足音を立てる

灰色の壁にもたれかかり
人波の飛沫
避けて立っていた

自分を脅かさないように
細工をして配置していく
都合の悪い物語は
塞いでしまう言葉がある

自分の正しさの構造
好個の出来事や人物に
託けて詳細に話す
ベラベラ、クラクラ、ラララ…ラララ……

黒ずんだ空が街に沈み
街灯を頼りに
彷徨っていた

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