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50歳のノート「小さな思いやりの物語」

暇さえあれば漫画アプリのLINEマンガ、ピッコマをあさるのが日課である。
ランキング上位から人気作品を見て行くのだが、ランキングの入れ替わりが激しい。
心温まる名作があっという間にランク外に消えていく。
おすすめに出て来ない限りランク外の作品から名作を見つけることは難しい。

読むたびに泣いたり笑ったり、明るい気持ちをくれる作品が好みである。
LINE漫画で見つけた名作の一つが
野良天使保護区域」(LUCID 作)
である。

3人の天使が地上に落とされ猫の姿になってしまうところから物語は始まる。
天使の力を失い無力な猫になった彼らは主人公の女子高生、真佑(まゆ)に出会い保護される。
両親を喪い一人で屋根部屋でつましく暮らす真佑と3人の猫天使たちのお話である。

猫の姿では何もできなくて困り果てる天使たちの姿が可愛らしくコミカルである。
猫になった天使たちは、真佑が大切なお金で自分たちのご飯を用意してくれたり何か買ってくれるたびに驚き喜ぶ。
猫天使たちも真佑の役に立とうと小さな猫の体で掃除をしたりプレゼントを一生懸命手作りしたりする。

可愛い世界の日常物語と思いきや実はそうではないのが面白いところ。
真佑が陰湿ないじめのターゲットになっていたり、真佑を狙う悪魔が登場して、真佑を希望と優しさの世界から、人を憎み怒りに満ちた世界に落とそうと揺さぶりをかける。
真佑は人を憎むか許すかの選択に何度もさらされる。

物語が影を帯びて深くなるにつれ、星のアイテムが印象になる。

猫たちが公園でいじめられているかもしれないと猫たちを助けようと真佑が石をとっさに掴む。
無事だったと知らせた猫天使ガブリエルがその石をクリスマスツリーのてっぺんを飾る星のような形に変化させる。
淡く光る星をガブリエルは真佑に手渡す。
「誰かを大切に思う気持ちは必ずそなたにも帰ってくるのだ。
これからはこの星がそなたを守ってくれるだろう」

ガブリエルにもらった星を真佑は部屋の本棚の上に大切に飾っている。
星は狭い部屋に身を寄せ合って眠る真佑と猫天使たちを淡く照らしている。


そこでは「善き生き方」を押し付けたりポジティブ思考を押し売りしていたりしない。
自分を無力に思えても、それでも一生懸命になったり相手に感謝したり。
そんな小さなことが積み重なってじわりときいてくる。自分もそうありたいと思わせる。

真佑と猫天使たちの小さな思いやりが満ちた物語である。



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