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【#213】漬け物考

香りと共に

 紋別の教会に行くと、いつもお弁当愛餐会(お昼ご飯)をご一緒します。その時には、何人かの方々がいろいろと差し入れをしてくれます。Tさんは料理が得意で、中でもご自身で漬けられる漬け物は皆さんの楽しみとなっています。

 ただ、私はそれほど漬け物が好きということではありません。決して嫌いではないのですが、昔のCMのように「あー、しば漬け食べたい」と思うようなことはありません。そして何よりも、食事以外の時の匂いが好きではありません。冷蔵庫を開けた時の匂いなど・・・。

 とってもありがたいことなのですが、Tさんは毎回のように漬け物を妻とお義母さんのために持ち帰らせてくださいます。私もTさんの漬け物を味わい深く、美味しくいただいているのですが、帰りの車の中が漬け物の匂いで充満することになります。それでも妻やお義母さんが喜ぶことや、Tさんの思いをしっかりと受けとめて、約1時間45分、漬け物の香りと共に帰路についています。

▲ Tさんの漬け物(2024年2月18日)

クセ強め

 今回、漬け物の香りのする車の中で、いろいろと考えておりました。発酵食品には匂いがつきものですが、納豆と同じようにいつの間にか慣れて、むしろ好んで食べられるようになります。人間関係で、いわゆる「クセ強め」と思われる方々に対しては、一歩引いてしまうこともないわけではありません。しかし時と場合によっては、そのクセ強めがかえって香ばしく感じ、多くの方々にとって良い味を醸し出すこともあるのではと気づいたのです。(私がクセ強めになっていることもあるかもしれません・・・)

 そう思うと、私にとってはクセ強め、キャラクターが濃いと思われる方々がおられた時、「この方は漬け物のような味わい深いお方なのだ」と理解すれば良いのだと思い至ったのです。漬け物の香りただよう車内で、何か大きな発見をしたかのような気持ちになっておりました。

漬け物と幸せ

 そう言えば、以前に読んだエッセイに「漬物は幸せのバロメーター」という記述があったのを思い出しました。

 漬物が家庭の幸福感と深く関わっていることを感じたのは、離婚寸前の頃だった。・・・・
 浅漬けならきまぐれでできるが、糠漬けはちがう。作ったら最後、途中でやめることができない。日々の手入れを怠れば、たちまちカビがわいて修復困難となる。心の平穏があってこそ継続できる、結婚生活を象徴するような漬物なのである。
・・・・
 これだけ多様で豊かな漬物を作るには、頭の中にすべての作業が1年の暦として組みこまれていなければならない。漬物の野菜には適切な時期があり、個々の旬は四季のわずかしかない。洗ったり、干したり、切ったりと、漬けこむ準備もまた一仕事である。年々歳々滞りなくおこなうには、食卓を共にかこむ家族が前提にあるからだろう。ほめられる相手がいるからこそ、苦労が喜びと誇りにとって変わるのだ。

植松黎「漬物は幸せのバロメーター」
(『散歩とカツ丼』'10年版ベストエッセイ集、文春文庫)より

 なるほどね〜。糠漬けを漬けていたのに漬けなくなった夫婦はちょっと危ない・・・のかもしれませんね。面白いですね。Tさんの糠漬けは、夫婦円満の証拠なのですね!

 さあ、明日は主日礼拝です。2月もあっという間に過ぎ去って行きそうです。心を静めて、聖霊による深呼吸をし、キリストの香りを放つものとならせていただきたいのです。

今日も主の恵みと慈しみが、追いかけてくる1日でありますように。

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