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【#174】そうだなあ、そうかも知れんな

依頼者ファースト

 北海道なのに暑さが続いた8月、11月に開かれる三浦綾子読書会関係の案内を作成しました。1つは「NTT-DoCoMoの音声ガイダンスをはじめ、電話の時報、エレベター、エスカレーターなど、日常生活のほとんどの場面で、その声を聞くことができます」という中村啓子さんから依頼された、朗読発表会のもの。

 上品で清楚な啓子さん、そして『われ弱ければ』の一節から、イメージを膨らませてシンプルに作成しました。いつも複数案を提示していて、今回は5案を作成しました。と言ってもイメージ画像を変えるだけなので、それほど大きな手間ではありません。そして依頼者に複数候補の中から選んでもらいます。

▲ 「朗読発表会」A案

 上記のA案は、バランス、色合い、イメージ画像と、私と妻の一押しでした。しかしいつものことなのですが、私が良いと思った第1候補は、ほぼ選ばれません。私の場合、どれが自分の第1候補なのかはお伝えしていません。もちろん第1候補が選ばれて欲しいのですが、「誰のための案内か」を考えているので、依頼者に決めていただくことで良いと思っています。

 そして今回も私の第1候補のA案は選ばれず、私の中での第2候補が選ばれました。それが下記のものです。

▲ 採用された「朗読発表会」B案(2023年11月9日)

 啓子さんも5案ある中で、「A」か「B」で悩まれたそうです。「Aもとてもインパクトがあり、また美しくて捨てがたいのですが、開いている方が、朗読にもつながると思いまして」とのこと。なるほど、なるほどとうなずいた次第です。

かえって励まされて

 下記は本日の午後に開かれる「リーダー・世話役研修会」の案内です。こちらは2案を作成しましたが、作っている最中で「1案でいいや!」と思ったのでした。啓子さんの時は5案も作ったのに、この研修会はなぜ1案なのかと自分なりに考えてみますと、私自身が研修会の主催者なので、依頼者でもあるということでした。

▲ 第2回「リーダー・世話役研修会」(2023年11月23日)

人の話聞いていてやることって、いいことなんだよね。みんな、大変な暮らしばしてるんだわ。わだしもかえって励まされてねえ。こっちの苦労話することもあった。

三浦綾子『母』第二章「小樽の空」

 小樽でこんまいパン屋を営む多喜二の母セキさんが、故里を離れている人夫たちや水産学校の生徒さんたちの話を聞いていました。客が切れる時には、小林家の子どもたちが一斉に口を開いて学校での出来事を母セキさんに話しだします。お互いに語ったり、笑ったりの賑やかさで、店に来た客にも気づかず、「うん、うん」と夢中になって話を聞いていると、客が呼んでも出て行かないので、たまりかねて客が餅やパンを失敬することもあったそうです。「母さん、パン盗られた」「母さん、餅も盗られた」という子どもたちに、「盗んだじゃないべ。なんぼか腹空かしてたんだべ」とセキさんが言うと、「そうだなあ、そうかも知れんな。大声で喋ってて悪かったなあ」と、みんな素直に反省したことが、『母』第二章「小樽の空」に紹介されています。

 全国各地の読書会で、綾子さんの本を読む方々の話を聞く全国の読書会のリーダーや世話役たちが、第2回「リーダー・世話役研修会」でお互いに語ったり笑ったりしながら、読書会を運営していく上でのこと、また苦労話なども話し合います。

 オンラインではありますが高く澄んだ秋空の下、「盗んだじゃないべ。なんぼか腹空かしてたんだべ」というあったかい優しさをご一緒に味わい、かえって励まされる研修会になればと願っています。

今日も主の恵みと慈しみが、追いかけてくる1日でありますように。

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