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【#29】 思わず拝みたくなるような(義母との同居3)

 昨年(2021年)の11月半ば過ぎより、函館に住まわれていた妻の母(現在89歳)を北見にお迎えし、同居生活を始めて無事に1年が経ちました。そしてお義母さんにとっては、北見で2回目の冬を迎えることになります。函館も北見も同じ北海道なのですが、冷え込み方がまるで異なります。北海道のハワイと言われる函館の方にとって流氷が流れてくるオホーツク地域は、名前からしてまるでロシアのような極寒の地に思われるようです。

 北見に移り住んだ当初、毎日、何度も何度も函館にいるお義母さんの姉(現在91歳)から電話がかかってきました。お義母さんは「北見に来たの。そう、北見。『まさ子』のところでお世話になっているの」と言われます。「まさ子」というのは、私の妻の名前ではありません。どうも娘(私の妻)を姪っ子のまさ子さんと勘違いしてしまうようです。

▲ 1つの部屋をお義母さんに使ってもらうため、FFのストーブを置きました。

 お義母さんの姉は「いつ北見に行ったの?そっちは寒いでしょう。でもあんたは若いから」と言われます。お義母さんは「若いって2歳しか変わんないだから」と答えられます。午前中そんな会話を交わしていたかと思うと、午後になって再びお義母さんの姉から電話が鳴り、「あんた、どこにいるの?」と問われ、「だから、北見だって。北見に来たの。『まさ子』のところでお世話になっているの」と、同じ会話を繰り返され、電話の話し声が聞こえてくる私たちはずっこけそうになりました。

 北海道南西部に浮かぶ奥尻島出身のお義母さんとお姉さん(TOPの画像は、奥尻島から沈む夕日です)。就職のために函館に移り住み、お互いに結婚し子どもを育て、それぞれご主人を先に送られています。1993年の北海道南西沖地震の時、島の中で一番津波の被害の激しかった青苗地区で育ったために、ニュースで流れる死亡者や行方不明者の名前のほとんどを知っておられ、言葉にならない思いをされたとのこと。お義母さんは米寿を迎える歳まで函館に住み、北見に引越しする前の月まで、週に2回、姉妹で一緒にデイケアに通われていました。 

 もしかしたらもう会えないかもしれないということを本能的に感じ取っている老姉妹たちの、辻褄の合わない、言ったり来たりの会話が続いています。それでも心はしっかりと通じ合い、お互いの声を聞きながら励まし合っていることがよく分かります。

▲ 上は聖書の言葉の日めくりカレンダー。
毎日、日付と曜日を確認し、御言葉を1つ読んでいます。

 朝、目が覚めるとお義母さんは自分がどこに居るのか、分からなくなるようです。歳を重ねての移住なので当然です。そこで北見にいることを自らに言い聞かせるために、「ここは北見です」と紙に書いて、自分の部屋のあっちの壁、こっちの壁にお札のように貼っています(それを見た妻が、はっきりと見えるように大きな字でプリントアウトしました)。その様子に牧師のはずの私なのですが、思わず何かに拝みたくなるような思いになったものでした。

今日も主の恵みと慈しみが追いかけてくる1日でありますように。


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