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「捨てる」から「直す」へ。割れたお皿も破れた靴下も蘇らせる「繕い」のススメ

洋服に穴があいたり、お気に入りの食器が壊れたりしたとき、「新しいものを買えばいいから、もう捨ててしまおう」とすぐにゴミ箱に入れてしまったことはありませんか?

モノがあふれ、便利さを追求できるようになった現代社会。壊れたものは簡単に捨て、新しいものに買い替える消費スタイルが当たり前になっています。

しかし、「大量生産・大量消費・大量廃棄」の負の連鎖が続くなか、ゴミ問題が地球環境に与える影響は計り知れません。

そこで今回は、私たちの生活のなかに簡単に取り入れられるサステナブルな習慣の1つとして、世界で愛される伝統的な「繕い」の方法について、ご紹介します。


エコでクリエイティブ!壊れたものを蘇らせる伝統的な修繕技法

世界には、壊れたものを直すための伝統的な技術がたくさんあります。まずは古くから親しまれてきた技法を見ていきましょう。

イギリス発、ほつれた衣類を救う魔法「ダーニング」

「ダーニング」は、靴下や衣類の穴を補修する技術。専用の針と糸を使い、破れたり、生地が薄くなったりした部分を織り込むように補修します。

素材の特性を理解すれば、目立たないように繕えるのがこの技術のポイントですが、写真のように生地とは違う色の糸を使うことで、カラフルに装飾することもできます。

専用の道具が必要ではありますが、お手頃なものだと1000円程度でキットを購入することも可能。誰でも気軽に始められるため、繕いの入門にはピッタリです。

「ダーニングマッシュル-ム」と呼ばれる、キノコ型のダーニングの道具

チクチクと針で補修していく様子は、一見地味な作業ですが、時間をかけて丁寧に直した衣類には、自然と愛着が湧くはずです。

傷を美に変える、日本の伝統技法「金継ぎ」

金継ぎは、割れたり欠けたりした陶器を、金や銀で接合する日本の伝統技法です。傷を隠すのではなく、あえて輝かせることで、物が刻んできた歴史を尊重し、新しい美を生み出します。

自分で挑戦するには、少しコツと時間がいる技術ですが、お気に入りの器に思いを馳せながら、丁寧に継ぎ合わせる作業はまるで、瞑想のよう。

最近では、自宅で手軽に金継ぎを楽しめるキットや、本格的な金継ぎを習えるワークショップなど、さまざまな体験方法があります。自分にあった方法で、割れた食器を美しく蘇らせてみてはいかがでしょうか。

古布に新しい価値を生み出す「刺し子」

刺し子は、江戸時代に庶民の間で衣類を補修・補強するために生まれた日本の手芸技法です。

木綿や麻の布地に、白や藍色の刺し子糸で幾何学模様などを刺繍することで、古布を再利用し、実用性と美しさを兼ね備えた作品を生み出せるのが魅力。

古い布を補修するだけでなく、刺繍でデザインを組み込み、新たな価値を生み出すことができます。

布の切れ端から生まれるクリエイティビティ「パッチワーク&リメイク」

パッチワークは、布の切れ端を繋ぎ合わせて新しい布地や小物を作る、アメリカで生まれた技法です。

もともとは、古い衣服などの布地を再利用し、実用的なアイテムを作るために始まった技法と言われていますが、現在はインテリア雑貨からバッグ、洋服まで、さまざまなアイテムに用いられ、世界中で親しまれています。

小さな布片を縫い合わせることで、思い思いのデザインを生み出せるため、ただリメイクするだけでなく趣味の1つとしても楽しめます。

その他にも、日常に隠れた「繕い」の数々

そんな衣類や布などを中心に受け継がれている「繕い」の文化ですが、実は私たちの生活のなかにある習慣にも、立派な繕いが隠れています。

・革製品のリペア
・切れ味が悪くなった包丁を手入れする「包丁研ぎ」
・靴の傷や汚れをきれいにする「靴磨き」
・雨戸や障子などの張替え
・自転車や自動車の整備や塗装

日ごろから行っている繕いに目を向けることで、これまで試してこなかった繕いへのハードルも下がるかもしれません。

買う前にチェックしよう!直しやすいものの共通点

「壊れたものを修理したいけれど、そもそも修理できるものではなかった」ということもあります。長く愛用するためには、購入時から修理のしやすさを意識することも大切です。直しやすいものの共通点はこちら。

・シンプルな構造やデザイン

衣類や食器など、ジャンルは問わず、シンプルな構造やデザインのものは、専門家に頼らなくても自分で修理できるものが多い傾向にあります。

・丈夫で伝統的な素材

衣類であれば革やデニム、食器であれば陶器や磁器など、伝統的で丈夫な素材で作られたものは一般的に修理しやすくなります。

そもそも壊れにくい素材でもあるので、大事に使い、壊れたら修理に出すことを習慣にすると、より長く使っていけるはずです。

・パーツが交換可能

ファスナーやボタンなど、交換可能なパーツを使用したものは、部分的な修理が簡単です。特に衣類はボタンを付け替えるだけでも、そのモノの持つ魅力が増すことも。

・非電子制御や電子制御の少ない機械式

時計などでよく見られる電子制御のない「機械式」の道具は、電子制御のものに比べて修理がしやすい傾向にあります。日ごろの小さなメンテナンスも、長く使っていくためのポイントです。

その他にも、購入後に修繕やメンテナンスを行ってくれるブランドやサービスもたくさんあります。直すことを前提とした買い物を心がけることも、サステナブルな生活への第一歩です。

繕うことで生まれる「新たな価値」と「思い入れ」

これまで「繕う」ことに目を向けてこなかったという方も、この機会に身の回りの壊れた生活用品を見直して修理をしてみると、新たな発見があるかもしれません。

筆者自身、今までは破れた靴下や衣類をそのまま捨ててしまっていましたが、この記事をきっかけに家族と一緒に、穴のあいた靴下を直す「ダーニング」に挑戦してみました。

手先が不器用という理由で避けてきた裁縫でしたが、試行錯誤しながらやってみると、下手ながらも少しずつ穴が塞がっていく様子がなんとも愛おしい。

針を進めながら家族との会話も盛り上がり、和気あいあいと話しているうちに、あっという間に完成していることに気が付きます。

「繕う」とは、ただ修理するだけではなく、その時間すらも楽しむことができ、モノに新たな価値と思い入れを与えることができる。そんな尊い時間の過ごし方です。

みなさんにも、ぜひ繕いの時間を作ってみてほしいと思いますが、手間とコストがかかるのも事実。すべてのモノを修理するのも、難しいかもしれません。

大切なのは、モノを簡単に捨てない意識を持つこと。修繕可能かどうか、一度立ち止まって考える習慣をつけてみると、モノや消費への向き合い方が変わっていくはずです。

また、1人で悩まず、繕いの知識や技術を共有し合うこともオススメです。SNSでシェアしたり、ワークショップを開いたりと、アイデア次第で「繕いの輪」は広がります。

壊れたモノに新しい命を吹き込む喜びを、ぜひ味わってみてください。

(取材・執筆・撮影=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17))

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