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私と悪魔

『吾輩は猫である』の初版本の表紙を見たことがあるかい?オーブリー・ビアズリーを彷彿とさせるタッチのそれは悪魔のようにも見えるんだ。槍を手にしたその猫の周りにはね、人形がごろごろ落ちているんだけどね、否、人形ではなく人間なのかも知れないね?僕は面白くなって、飼い猫にも同じように人形を沢山買い与えてみたよ。
でも飼い猫は見向きもしないんだ。
だからその人形に木天蓼を擦り込んでやったのさ。そうしたらあいつ目の色を変えて喰らいついたんだ。ほら見てごらんよ、鏡を持ってこようか?

私は鏡を覗き込む。眼球を失い虚空のような暗いひとつの穴のせいで、もはや顔を成していない。これは何だ?

「顔でないなら、何というのだ?」男は私に問う。この奇妙な人形に名前はまだない。

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