2022年おすすめ新譜アルバムVol. 87: JID「The Forever Story」
新譜アルバム紹介Vol. 87です。
今回紹介するのは、アトランタのラッパーのJIDがリリースした「The Forever Story」です。
JIDはアトランタ出身のラッパーで、Spillage Villageのメンバーとしても活動しています。
2010年頃に登場。2010年にはミックステープ「Cakewalk」を発表し、その後も2011年の「Cakewalk 2」や2012年の「Route of All Evil」など作品のリリースを重ねていきます。並行してSpillage Villageでも活動しつつ、2015年にはEP「DiCaprio」をリリース。2017年にはDreamvilleに加入し、1stアルバム「The Never Story」をリリースします。以降も2018年のソロ作「DiCaprio 2」のリリース、DreamvilleやSpillage Villageでのアルバムへの参加など精力的に活動しています。
初期は高めの声質でフリーキーにラップするLil Wayneフォロワーでしたが、徐々にAnderson .Paakを思わせるシャープなフロウを獲得。近年は高速ラップやスムースな歌も身に付けています。サウンド的にはブーンバップとトラップを横断するような方向性で、Dugeon Familyのようなドロッとしたファンクネスや捻りを加えたようなものも好んで聴かせます。
今作はソウルフルなトラップやクールなネオソウルっぽいものなどを揃えたサウンドで、そのスキルフルなラップが堪能できる傑作に仕上がっています。Big Boiソロ作のような捻りとメインストリーム感のバランスなので、古くからのアトランタヒップホップ好きの方も是非。
3. Dance Now Feat. Kenny Mason
「バンバンバン~」という声ネタが印象的なトラップ。
声色を使い分けたスキルフルなラップも含め、随所でBig Boiっぽさのある曲です。Kenny Masonはフックでクールな歌を披露。
タイトなブーンバップ路線。
ギターやシリアスなピアノを使ったビートは、東海岸というよりやはりDungeon Family周辺のような質感です。フックでの抑えたラップが絶妙。
5. Can't Punk Me Feat. EARTHGANG
KAYTRANADAとJD Beckの共作。
太く艶のあるベースとJD Beckの人力トラップ的な手数のドラムで聴かせる、少なめな音数がラップを際立たせた曲です。EARTHGANGのラップもフリーキーで強力。
6. Surround Sound Feat. 21 Savage & Baby Tate
ソウルフルなネタ使いが光るトラップ。
歌声を切り取って心地良くループしたビートで、21 Savageとのスキルフルな絡みが堪能できます。Baby TateによるBow Wow「Like You」風のメロディアスなブリッジもキャッチー。
7. Kody Blu 31
プロデュースとアディショナルヴォーカルにBenji.が参加。
骨太でガツンと来るブーンバップ流儀のドラムやストリングスが効いたビートに、キレと歌心のあるラップやPファンクっぽくうねる歌が乗る良曲です。Dungeon Family好きの方にはたまらないと思います。
9. Sistanem
Musiq Soulchild「Mary Go Round」ネタのクールな曲。
細かく揺れるエレピやタイトなドラムを使った、スムースなブーンバップです。質感が変化する後半の展開も印象的。フックではJames Blakeも歌っています。
13. Money
Khrysisプロデュース。
ソウルフルなネタをフリーキーにチョップしたブーンバップ路線の曲です。細かく千切れたようなビートに涼しい顔で乗る、JIDのスキルフルなラップに痺れます。
14. Better Days Feat. Johntá Austin
Benji.も関わったスペイシーでソウルフルな曲。
重厚なシンセやタイトなドラムを使いつつ、生演奏っぽい存在感のあるベースが絶妙なビートはBenji.らしい仕上がりです。ブリッジを歌うJohntá Austinの美声にも悶絶必至。
15. Lauder Too Feat. Eryn Allen Kane & Ravyn Lenae
今作のベストトラック。
James Blake、monte booker、Groove、Thundercatと豪華な面々がプロデュースに関わっていますが、その全員の色がしっかりと感じられます。Thundercatの細かいベースとJIDのラップの絡みが最高にスリリング。
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