DJ Shadow「Action Adventure」全曲解説
ベイのプロデューサー、DJ Shadowについての記事をRolling Stone JapanのWeb版に寄稿しました。
DJ Shadowは1996年にリリースした1stアルバム「Endtroducing.....」でのサンプリングベースのトリップホップ系のサウンドで高い評価を集めていますが、その後の活動もかなり興味深い試みの多いアーティストです。Rolling Stone Japanの記事では新作アルバム「Action Adventure」のリリースを機に、そのキャリアを一から振り返ってこれまでの挑戦的な取り組みを総括しながら「ベイのシーンの一員」としての姿を描くようなものになっています。
「Action Adventrue」はそんなDJ Shadowのこれまでの歩みで、不評だった要素を好評だった要素と組み合わせて、近年の活動で培ってきた技術でまとめ上げたような印象のある作品でした。そこで今回は「Action Adventure」を全曲解説します。Rolling Stone Japanの記事とあわせて是非。
The Weekndが歌いそうなダークでアッパーな曲。
ハイフィで頻出する単語「Sraper」がタイトルに入っているところにもニヤリとさせられます。初期作品のノリを現代のスタイルで作ったような印象。
2. All My
細かいチョップが冴えたジューク。
早回しした声ネタと小刻みな808を使いつつ、初期に通じる不穏なムードもある曲です。スペイシーなシンセの使い方も見事。
ドラムパターンがTraxamillionっぽい曲。
全体的には冷たいシンセに包まれたモノトーンの曲ですが、ドラムや極太のベースなどにベイらしい響きがあります。明らかにハイフィを通過した曲です。
ゴワゴワとしたシンセを鳴らす不穏な曲。
ここでのホラー映画サウンドトラックのような音像は、2006年作「The Outsider」収録の「Seein' Thangs」あたりとも通じるものがあります。エレクトロニカ的でもありますがしっかりとヒップホップ。
音を大胆に切り替える楽しい曲。
声ネタを細かくチョップした「All My」的なノリのものや、重厚なシンセを用いたトラップ系のものが自然に接続されます。細かい仕掛けの入れ方も巧み。
ドラムンベースっぽいドラムを使った曲。
硬質なシンセをミニマルに用いたウワモノは、やはりハイフィを通過したニュアンスがあります。極太低音シンセも強烈。
インスト中心の今作で唯一の歌モノ曲。
ブリブリのベースが目立つビートは、Too $hortの初期作品から続くベイ流儀の味わいです。歌声のサンプリングは比較的ストレートな使い方。
8. Free For All
ギターをかき鳴らしたアッパーな曲。
ダーティな低音の響きや手数の多い808に、南部ヒップホップとベイの関係の深さが感じられます。鳥の声のサンプリングも妙に印象的。
9. The Prophecy
落ち着いたシンセで聴かせるどこか不穏な曲。
初期作品にも通じるムードがありますが、細かい刻みも入る808はやはり現代のものです。音の抜き差しも絶妙。
10. Friend Or Foe
8Ball & MJGがE-40とMac Mall、Big Mikeをフィーチャーした名曲と同タイトルの曲。
うねるようなベースや例の高音シンセなど、DJ Shadow流にGを消化したような要素のある曲です。それでいてミニマルなシンセで自身のマナーに引き寄せています。
11. Fleeting Youth (An Audible Life)
美しいピアノが主導する優しい曲。
ドラムはかなり控えめで、シンセなどの味付けもあまり派手には入れない繊細な曲です。しかしシンプルではなく一癖ある作り。
12. Reflecting Pool
酔っぱらっているようなドラムを用いた曲。
この曲も柔らかなシンセが効いた不穏すぎない路線です。ブリブリのベースを思いっきり加工したような低音が不思議な感触を出しています。
13. Forever Changed
もの悲しい雰囲気の曲。
インディロック好きの方も気に入りそうな、美しいループが沁みる哀愁曲です。808の使い方には現行ヒップホップが香ります。
14. She's Evolving
ふうわりとしたシンセを使ったクールな曲。
ハードなドラムや歌声のサンプリングを合わせた作りで、古くからのファンの方も楽しめると思います。時折入る割れたようなスネアの処理も印象的。
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