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2022年おすすめ新譜アルバムVol. 106: Metro Boomin「HEROES & VILLAINS」

新譜アルバム紹介Vol. 106です。

今回紹介するのは、アトランタのプロデューサーのMetro Boominがリリースした「HEROES & VILLAINS」です。

Metro Boominはセントルイス生まれでアトランタを拠点に活動するプロデューサーです。

これまでの活動については以前書いたこちらを。この後は2017年にNAVとの「Perfect Timing」、21 SavageとOffsetとの「Without Warning」、Big Seanとの「Double or Nothing」と三枚の作品をリリース。さらに2018年にはソロアルバム「Not All Heroes Wear Capes」、2020年には21 Savageと再びタッグを組んだアルバム「Savage Mode II」をリリースしています。

基本的にはトラップをベースとしたプロデューサーで、複雑なドラムパターンやダークなムードを得意としています。ソウルフルなサンプリングも巧みで、近年は生演奏も積極的に導入。DJ Paul & Juicy Jの作風をアトランタ流に洗練したような音楽性です。

今作は得意のダークな路線やソウルフルなものなど、充実したビートの数々に狙いの絞った客演を迎えた良作です。ビートスイッチや短いインタールード的なものが入っていることも多く(ある意味Pete Rock的な作り)、そのビートの魅力が曲数以上に堪能できます。また、A$AP RockyやMorgan Freemanのナレーションが時折挿入され、アルバムとしての流れが丁寧に作られています。曲単位よりもアルバムとして聴くことをおすすめします。


2. Superhero (Heroes & Villains) with Future & Chris Brown

ほぼFutureのソロ曲で、Chris Brownはインタールード的な登場です。

Futureが抑えめなラップで、ストリングスのループが印象的なシリアスなビートを際立たせた良曲です。沈み込むようなピアノを使ったビートにスイッチしてChris Brownが歌う展開も見事。


3. Too Many Nights with Future Feat. Don Toliver

こちらはDon Toliver主導の曲です。

Kid Cudi「Day 'N' Nite」的なミニマルなシンセが光るビートで、Don Toliverのメロディアスなフロウが映えた佳曲です。重厚な低音シンセの使い方にちょっとMr. Leeっぽさもあります。


5. Umbrella with 21 Savage & Young Nudy

ソウルフルなネタをループしたイントロの後、すぐにダークなビートにスイッチする曲。

スイッチ後のビートはかなり「Savage Mode」系のビートです。緊張感のあるピアノに二人のラップが抜群の相性を発揮した好曲。


6. Trance with Travis Scott & Young Thug

近年のMetro Boomin関連作によく関わっている、Peter Lee Johnsonもクレジットされた曲。

Peter Lee Johnsonは丁寧なストリングス使いを得意とするプロデューサー兼ミュージシャンです。この曲ではMetro Boominのダークなカラーの中に、それがしっかりと感じられます。ジャージークラブっぽいドラムパターンを一部使っていることにも驚かされます。


7. Around Me Feat. Don Toliver

ダークなオルタナティヴR&B系の曲。

The Weeknd作品にも通じるような重厚なシンセが効いたビートで、Don Toliverのフガフガした歌を聴かせる良曲です。両者の持ち味が見事に噛み合っています。


8. Metro Spider with Young Thug

Three 6 Mafiaを思わせるダークなトラップ。

Young Thugのフリーキーなフロウ巧者としての側面が強く出た佳曲です。フックではMetro Boominの代表曲の一つ、Drake & Future「Jumpman」でのフロウを使用。


9. I Can’t Save You (Interlude) with Future Feat. Don Toliver

「Metro Spider」からビートスイッチするように突入する曲。

ダークな質感のままYoung Jeezy系の派手なトラップに挑んだようなビートです。アウトロでの21 Savageの声ネタループも印象的。


10. Creepin' with The Weeknd & 21 Savage

Mario Winans「I Don't Wanna Know」ネタ。

フックで原曲を引用しているほか、Mario Winans本人(とTravis Scott)もバックヴォーカルで参加しています。ダークで未来感のあるR&B路線の好曲。


12. Walk Em Down (Don't Kill Civilians) with 21 Savage Feat. Mustafa

ビートスイッチして客演も入れ替わる二部構成の曲。

前半はThree 6 Mafia的なダークなトラップで、21 Savageの冷徹なラップを聴かせる曲です。後半は沁みるピアノにMustafaが美声を添えた繊細なR&B。


14. Feel The Fiyaaaah with A$AP Rocky Feat. Takeoff

ソウルフルなネタをループしてトラップのドラムを合わせたような曲。

全体的にはソウルネタの時のThree 6 Mafiaのようなトラップ路線ですが、ドラムがなかなか入らずその間はブーンバップのようにも聴けます。クレジットされているThundercatによるものと思しき、時折入るベースも強烈な存在感。

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