2022年おすすめ新譜アルバムVol. 34： Future「I NEVER LIKED YOU」
新譜アルバム紹介Vol. 34です。
今回紹介するのは、アトランタのラッパーのFutureがリリースした「I NEVER LIKED YOU」です。
Futureはアトランタ出身のラッパーです。
2000年代後半に登場。2010年にはミックステープ「1000」を発表し、その後もGucci Maneとの2010年のタッグ作「Free Bricks」やソロ作「Dirty Sprite」など多くの作品を発表します。2012年には1stアルバム「Pluto」をリリース。以降も2014年の「Honest」や「Monster」、2015年のZaytovenとのタッグ作「Beast Mode」などをリリースしています。精力的に活動し、常に大きな存在感を放っています。
低い声質でオートチューンを巧みに使い、メロディアスなフロウから鬼気迫るフロウまで聴かせる現行アトランタの代表格のようなアーティストです。奇声も要所で使い、ワイルドな中にユーモラスな魅力もあります。サウンド的には主にトラップ系のビートを好んで使います。
今作はトラップを軸にしつつも、スペイシーなものやブルージーなものなど適度な幅を持たせた快作に仕上がっています。Futureのラップ力の高さはもちろんですが、メインプロデューサーのATL Jacobの手腕にも唸らされます。現行アトランタ好きの方は是非。
1. 712PM
いきなりAura Qualic「DATA 2.0」ネタの初音ミクの声から始まって驚かされます。
スペイシーなシンセやダーティな808、ストリングスが効いたダークなトラップです。初音ミクを使ってもそれに引っ張られないワイルドさ。
DY KrazyとSouthside、Slowburnzの制作。
メンフィス的な沈み込むようなピアノを使ったトラップビートに乗り、じっくりとラップを聴かせていく好曲です。自身の声ネタをループするようなフックも印象的。
3. KEEP IT BURNIN Feat. Kanye West
ちょっとトレッドっぽい未来感のある曲。
スペイシーなシンセとボコボコした低音が目立つビートで、Kanye Westと共に奇声を交えてラップしていく良曲です。Futureのヴァースでの小節の最後に急に高い声を出すフロウが印象的。
4. FOR A NUT Feat. Gunna & Young Thug
無機質なシンセを使ったハードなトラップ。
全編でループされる口笛が強烈で、客演の二人も持っているどこかユーモラスな味が強く出ています。しかし全体のトーンはシリアス。
6. GOLD STACKS
冷たいシンセを用いたダークなトラップ。
ビートはやや地味ですがラップのキレが凄まじく、詰め込み気味の鬼気迫るフロウが圧巻です。ラップにおける今作のハイライトの一つ。
7. WAIT FOR U Feat. Drake & Tems
今作のベストトラック。
Temsのライブからサンプリングしたフォーキーなギターと優しい歌声に、808ではなくオーガニックなドラムを合わせた曲です。Drakeと共に聴かせる穏やかでメロディアスなラップが見事に馴染んでいます。
Jayla Darden「Idea 686」ネタのメロディアス路線。
メロウなウワモノに攻撃的すぎない808が絡む、R&B風味のソフトな曲です。Futureは歌うようなラップを誠実に乗せています。
例の高音シンセをループしたGなトラップ。
ドラムや低音の鳴りはアトランタ的ですが、この緊張感は現行ミシガンっぽい味もあります。EST Geeの冷徹なラップもばっちり。
Kodak Blackのヒット曲「Super Gremlin」を思わせる哀愁路線。
チップマンク・ソウルを使ったトラップ系の曲で、高めの声質で泣きそうに歌うKodak Blackのフックが素晴らしいです。Kaash Paigeもブリッジで登場。
YoungBoy Never Broke Againタイプの哀愁トラップ。
ブルージーなギターや切ないピアノ、歌声のサンプリングが効いたエモーショナルな曲です。Futureの声を揺らすようなラップの表現力に唸らされます。
メンフィスものっぽいダークなトラップ。
冷たいピアノのループや手数の多い808、ボコボコした低音が緊張感を醸し出した佳曲です。Drakeもしなやかなラップで好演。
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